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フードファイト・ダンジョン ~最高の食材とまだ見ぬ絶景を求めて最下層を目指します~  作者: 祐祐
第3章:パーティー

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37話:初パーティー

「おはようっす」


「おはよう。じゃあ行きますか」


 週末の土曜日。いよいよ稲垣さんとの初パーティー戦の日となった。


「祐也さん、この間も思ったっすけど、同い年なんでタメ口がいいっす。

 丁寧な言葉で話されると距離を感じるっすよ」


「いいのか?」


「いいっすよ」


「じゃあそうする。瀬奈に話すのと同じ感じでいいな?」


「オッケーっすよ」


「よし、じゃあ行くか」


 待ち合わせは仙台入口前のダンジョン協会の建物の前で9時としていたが、既に稲垣さんは待っていた。


「俺は時間通りに来たけど、稲垣さん、来るの早かったのか?」


「まぁ北仙台駅が近いっすからね」


「その辺に住んでるのか」


「上杉っすよ」


「街中だな。でも北仙台駅って近いか? 北四番丁駅の近くじゃない?」


「上杉でも附属中の裏の方で仙山線の線路近くっすよ」


「あぁなるほど」


「あと、稲垣さんは嫌っす。瀬奈ちゃんと同じでかおりんでいいっす」


「わかったよ、かおりん」


「それでいいっす」




 他愛もない世間話をしながらダンジョンを進んでいく。


「今日はどこでモンスターと戦うっすか?

 私、第3層で苦戦している所っすけど」


「第6層」


「えっ?」


「第6層に行くぞ」


「ちょっと待って欲しいっす! 第6層じゃ私足手まといっすよ!」


「分かってる。

 第3層だと簡単すぎるし、第4層と第5層は不意打ちの多い階層だから守りにくい。

 第6層なら先日マッドホースを問題なく倒せたし、見晴らしはいいから守りやすい」


「守られるだけっすか……」


「あと、俺が主に戦って動けなくさせるから、そうなったら一発攻撃を当ててくれ。

 棍棒でもいいし、投擲で何か投げてもいい」


「一発って。それじゃあ全然貢献度が上がらないから意味ないんじゃ……」


「まぁやるだけやってみよう。ちなみにこれは瀬奈の発案だ」


「っ……そう言われると断れないっす」


「まぁダメだったらまた考えるよ」




 そのまま下層に進んでいき、第6層に到着した。


「本当に第6層っす……」


「じゃあ行くか。あまり近づきすぎるなよ。

 5mは後ろにいるように、でも10mまでは離れないでくれ」


「了解っす」


 かおりんが真剣な眼差しに変わった。

 流石にいきなり第6層は緊張するよな。

 まぁ大丈夫だろ。



 ベチョッベチョッ

 ベチョッ、ベチョッ


 剣を手に持ち、いつマッドホースが来てもいいように準備をして水田の中へ進んでいく。


「田んぼの中を歩いていくって、こんな足場の悪い所で大丈夫なんすか?」


「大丈夫。俺を避けてかおりんを狙うってことが無ければ」


「し、信じてるっす」



 ベチャチャチャッ!


 音のする方を見ると、奥からマッドホースが走ってきていた。方向的にかおりんではなく、俺の方に来ているな。


「右から来たぞ! 俺の後ろになるように移動しろ」


 マッドホースはこちらを見つけて、更にスピードを上げた。泥水を撒き散らしながら迫ってくる。


 ズンッ!


 正面からマッドホースをしっかりと受け止めた。何度やっても問題ないな。

 今回もマッドホースの押してくる力を少しだけ左側に受け流し、俺はその場で一回転して回転斬りを叩き込んだ。


 ズバァッ!!


 マッドホースの下半身へ重い一撃が食い込んだ。更に深く押し込み、そこから剣を引き抜く。

 大きなダメージを受けたマッドホースは田んぼに倒れ込みながらヘッドスライディングをしていく。


「今のうちに一撃当てろ!」


 その声に反応して、かおりんが目の前に倒れてきたマッドホースに向かって走り出す。

 反撃されないように、俺もマッドホースに近づいていくが、ジタバタしているが立ち上がってくる様子は無い。


「そりゃっ!」


 その間にかおりんが渾身の力で棍棒を振り抜く。


 ガンッ!


 マッドホースの頭部にクリーンヒットした攻撃は、高くていい音を響かせた。

 その音を聞いて、すぐにマッドホースの首を切り落とした。よし、マッドホース相手ならかおりんが一緒でも問題ないな。



「えっ、嘘……」


「ん? かおりん、どうした?」


 マッドホースへの一撃を放った後、そこで固まっていた。

 ホームランを打ってバットを投げる直前、みたいな格好で。


「おーい。聞こえてるか?」


「あ、はい。大丈夫っす」


「何かあったか?」


「レベルアップしたっす」


「お、良かったじゃん、おめでとう」


「いやいや、あんな一撃でそんなに経験値もらえるっすか?

 第6層だからモンスターを倒した時の経験値が多かったっすか?

 レベルアップまでの経験値があと少しだっただけっすか?」


「流石にそれは分からん。じゃあ次のモンスターを探してまた倒せば分かるだろ」


「そうっすね。あ、すみませんっす。マッドホースは私が持って行くっす」


「じゃあ血抜きするか。死体になってるから、運搬スキルの効果あるよな?」


「余裕で持てるっすよ」


「じゃあジャイアントスイングで血抜きしてくれるか?」


「ここまで大きくなるとジャイアントスイングで血抜きするんすね。

 じゃあ離れて下さいっす」


 木があればそこに吊るしたいけど木なんて無いし、重力で血抜きするよりも遠心力で血抜きした方が早いみたいなんだよな。


「離れたからいいぞ」


「いくっすよ! とぉーりゃー!」


 マッドホースの後ろ足を持ったかおりんが勢いよく回りだした。

 ブシュルルルッ

 どんどん血が飛んでくる。俺がやるよりも勢いがあるのは、さすが運搬スキルってことか。


 30秒も回れば血はほとんど飛び散らなくなり、かおりんも回るのを止めた。


「じゃあ内臓を取り出して、袋に入れやすいように切っていくか」


「内臓はお願いするっす。袋に入れるのはこっちでやるっす」


 腹を切り開いて内臓を丁寧に取り出していく。

 その間にかおりんが腹から遠い部位を切り離していき、袋に詰めていく。

 2人でやるからあっという間に作業は終わった。


「じゃあ次を探しに行くか。持つのがきつくなったら上に戻るから言ってくれ」


「まだまだ余裕っすよ」




 その後も第6層でモンスターを倒していく。

 相変わらず足元は悪いが、マッドホースであれば問題ない。


「まだ持てるか?」


「もう1体ならいけるっすよ」


 かおりんは既に4体のマッドホースを持っているのに普通に歩いている。

 4体で120kgくらいあるはずなんだよな。

 バランスよく持っているが、パッと見の荷物とかおりんのアンバランスさがおかしい。田んぼの中だから普通なら足が泥に深く沈み込みそうなのに、俺とあまり変わらない感じだし。やっぱりスキルっておかしいよな。



 ベチャッ!


 突然近くで泥の跳ねる低い音が発生した。

 遠くからではない。いきなり近くで発生したのだ。


 ってことはマッドホースじゃない。遂に出会えたか。


「戦闘態勢! 盾でしっかり守っておけ!」


 直後、突然前方の田んぼが爆発した。

 その後、拳大の泥の塊が数発、豪速球のような速度で前方から飛んでくるのが見えた。

 最小限の動きで頭部への直撃を避ける。

 避けた泥は背後で構えていたかおりんの盾に直撃し、ベチャッ! と嫌な音を立てて周囲に飛び散った。

 あっちだな。泥が飛んできた方向へ一気に駆けていく。



 次々と飛んでくる泥を半身でかわしながら、泥の塊の発射地点へ接近する。

 見えてきた。太い両腕を振り回して足元の泥をこちらに投げつけているモンスター、マッドベア。

 そいつの間合いに入った所で、全力の斜め斬りを叩きつける。


 ガキィィィン!!


 投擲を中断し、防御に回ったマッドベアが下からかち上げた爪と剣が激突する。

 マッドホースなら力でねじ伏せられたが、さすがは熊。水田に深く根を張ったような下半身から繰り出される爪の一振りは、見た目以上の威力があった。



 この足場だとこれ以上押し込むのは難しいと判断して、一度バックステップし、マッドベアの巨体の後方に回るようにサイドへステップする。

 マッドベアはどっしりしている分、方向転換が鈍い。

 背後を取ろうと回り込むが、マッドベアも本能で危機を察し、その太い腕を振り回して死角をカバーしてくる。


 爪が空を切る風圧。その一瞬の隙を見逃さずに、


「小手っ!」


 無理に胴体を狙わず、迎撃してくるその腕を狙う。

 泥の弾幕を放ち、重い一撃を繰り出す源流。そこさえ潰せばいい。鋭い一閃がマッドベアの手首の部位を正確に捉える。

 ガリッ!

 マッドベアの肉を斬り裂き、鮮血が舞う。深さはないので切り落とすには至らないが、それで十分だ。

 マッドベアは防御のためにがむしゃらに腕を振るい続けるが、冷静に何度も手首へ斬撃を重ねていく。次第にマッドベアの腕の動きが鈍り、泥を投げる精度も落ちてきた。



 満足に腕を上げられなくなったマッドベア。

 大きく踏み込み、全身のバネを総動員して、上段から全体重を乗せた一撃を放つ。


 ズバァァッ!!


 マッドベアはズタズタになった腕でガードしようとしたが、全力の一撃は腕を斬り裂き、更に肩口からそのまま心臓付近まで刀身が深く沈み込む。


 ドシャアァァッ!!


 水田に沈む熊。投擲は面倒だけど、マッドホースに続いてマッドベアも倒すのは問題ないな。


「かおりん! こっち来てくれ!」


「倒したっすか!?」


「ああ、まだ生きてる可能性があるから、早く一撃当てて欲しい」


「分かったっす」


 すぐにマッドホースを背負ったままかおりんが走ってきた。

 そして、手にしていた盾をマッドベアに投げつけた。

 投げられた盾はベコンッといい音をたててから泥の中に落ちた。


「一撃当てたっすよ」


「盾を投げるとは思わなかったわ」


「ちょうど持ってたし、棍棒で殴るより早いっすから」


 まぁ合理的だな。すぐにマッドベアの首を切り落として戦闘終了だ。



「えー!? レベルアップしたっす!?」


「良かった良かった。ちゃんと経験値がもらえてるな」


「いやいやいや! この程度の活躍で1日に2レベルも上がるってどういうことっすか!?」


「じゃあマッドベアを持って帰ってから教えようか。うちで夕飯食っていくか?」


「いいんすかね?」


「まぁ作るのは瀬奈だけどな。シャワー浴びてから確認してみるわ」


「じゃあ私も親に聞いてみるっす」


 じゃあこいつもさっさと血抜きして帰るか。


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