3話:購入とスキル
ダンジョン協会東北支部で冒険者登録をして、次に向かったのはエレベーターを挟んで反対側。
『ダンジョン協会直営店』
ダンジョンで活動していくのに必要となる各種物資を販売している店である。
各支部・支店に併設されており、それ以外にも街中やダンジョンの入口近くに認定店がある。
直営店の品揃えがバランス良く網羅されているのに対して、認定店はそれぞれの店に特徴があったりする。
武器防具に特化していたり、回復薬に特化していたり、野営道具に特化していたり。
初心者向けとしては直営店でまとめられている初心者装備を買うのが一番安牌と言われている。
俺もこの日のためにお年玉やお小遣いを貯めてきた。
初心者装備セット。
軽いポリカーボネートとアルミ板の積層構造による胴体とひざ・ひじをカバーするプロテクター、そして武器である炭素鋼による両刃剣のセットで5万円となっている。
防具はサイズ別にS・M・L・LLとなっていて、事前に試着しに来ているから確認の必要はない。
武器はそれぞれの好みで他のものに代えられるが、剣を使うことを考えて剣道部に入って練習してきたのでこのままでいい。
ダンジョンの中に生息しているモンスターを倒すためには武器が必要だが、武器なら銃火器でいいと思うだろう。
だが、ダンジョンのモンスターには銃火器があまり効かない。
各国で行われた調査で分かったことだが、ダンジョン内では使用者の能力が武器の威力の上限に影響しているらしい。
簡単に言えば同じ拳銃でモンスターを撃っても、レベル1の冒険者が撃った場合とレベル10の冒険者が撃った場合で威力に差が出るのだ。
それに銃弾は消耗品で高い。
それもあって、攻撃だけではなく防御にも使える剣や槍といった武器の方が一般的となっている。
「この初心者装備セットを下さい。防具のサイズはM、武器は両刃剣でお願いします」
「冒険者カードを提示下さい」
このタイミングで買いに来たのはこのためだ。
ダンジョン向けの店での買い物には冒険者カードの提示が必須となっている。
誰がどこで何を買ったのかはダンジョン協会で把握されるようになっていて、異常な数の武器を買ったりしていると協会から調査が入ったりする。
ダンジョン向けの商品がそれだけ危険なものであることの証拠でもある。
「はい、こちらです。あとは5万円っと」
ピッ
「はい、お返しします。1、2、3、4、5万円ちょうどですね。
ありがとうございます。レシートになります」
これでダンジョンに挑む準備は全て整ったな。
しばらくは日帰りだけの予定だから野営道具は要らないし、回復薬も必要になるようなモンスターとは戦わない。
1層にいるモンスターはあれだから大丈夫だろう。
購入した防具を入れた箱を持ち、武器はケースに入れたまま背負う。
ぐふふ。待ってろダンジョン。
「ほら、用事は終わったんだから帰るわよ」
家に着いて、購入した武器防具を部屋に置く。
遂に明日からダンジョンに入れる。
不安が無いわけでは無い。
自分の実力でどこまでやれるのかは分からない。
だが、挑まないという選択肢は無い。
去年の10月10日。
ダンジョンが発生してから丸5年。
そして俺の15歳の誕生日でもあるこの日に、俺にもちゃんとレベルとスキルが与えられた。
今の俺のレベルとスキルはこうなっている。
「ステータス・オープン」
レベル:1
スキル:消化
レベルを上げるにはモンスターを倒すかスキルを使うことが必要だと分かっている。
モンスターを倒していないし、スキルも使っていないのだから、レベルが1なのは当たり前だ。
それらの行動によってレベルが上がると身体能力が上がったり、頭が良くなったり、スキルの威力が上がったりする。
大体レベル100まで上がると、一般人でも世界記録レベルのスピードで走れたり、バーベルを持ち上げられたりすると言われている。
ステータス・オープンと言うとレベルとスキルが表示されるが、ステータスとしてありそうな能力値は表示されていない。
その点からもゲームでよくあるステータス、能力値が実は隠されていて、レベルが上がるごとに能力値が上がっているのではないかと言われている。
実際、スキルの中には使用者の能力値に関する記載のあるものが見つかっており、そこからも能力値が設定されていることは確実だと言われている。
ただ、未だにその能力値自体は見つかっていない。
鑑定のような能力値が見れるスキルが存在するのでは、と言われているが。
そしてスキル。
こちらは必ず最初に1つ与えられている。
どのスキルが与えられるかはランダムなのか、各自のそれまでの生活が関係しているのか、未だに分かっていない。
しかし得られたスキルは本人が説明を見ることができるので、スキル自体の使用には何の問題もない。
多くの人が与えられたスキルは協会の方でまとめて公開されているくらいだ。
俺が与えられた『消化』は『触れているものを溶かす』というスキルだ。
スキルの評価としては微妙と言わざるを得ない。
これが溶解液のように触れたものを溶かす液を出せるだったら遠距離から使える。
でもこの消化は触れているものを溶かすというスキルであり、対象に俺自身が接触している必要がある。
つまり、溶かしている間は離れられないのだ。
これではモンスターから攻撃を受けてしまうし、溶かせると言っても一瞬で全て溶かせるわけではないので、ちびちびしかダメージを与えられない。
非戦闘系スキルよりはいいのだが、戦闘の役に立つシチュエーションがあまりに限定的だ。
それでもレベルを上げていくと新しいスキルを得られるらしいのでそれを目指していけばいい。
必ずというわけでは無いが、25レベルごとにスキルを得られることが多いらしい。
それまでは安全マージンを取りながらレベル上げに取り組んでいけば良い。
そしてそこで倒したモンスターを持って帰ってきて食べるのだ。
最下層に行くのはかなり先になる。
誰も見たことがない階層に行くのですら何年掛かるか分からない。
それでも行くのだ。
絶景と絶品のために。
楽しみすぎてちゃんと寝られるかな。




