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フードファイト・ダンジョン ~最高の食材とまだ見ぬ絶景を求めて最下層を目指します~  作者: 祐祐
第1章:ダンジョンとスキル

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15/24

15話:作物

 10分くらいでミニポニーのレバーとハツを食べ終え、肉は適当な大きさに切って袋に詰めていく。

 レバーとハツ以外の内臓は捨てていくことで、1kgくらいは減ったかな。

 もう1体分なら持って帰れそうだ。



 再びミニポニーを探して歩き出す。

 あまり階段から遠くには行きたくないので、山の方ではなく、山の方を見て右側に進んでいく。

 15分ほど歩いていると前方からミニポニーが走ってくるのが見えた。


 こちらに向かってきてるのか?

 逃げるつもりもないし、不意打ちは出来なさそうだけど正面から倒せば良い。

 正面から倒せる実力が今の自分にあるのか、良いテストケースだ。



 ミニポニーを入れたカバンを置いて、剣を鞘から出して待ち構える。

 構えてから数分間。徐々に近づいてくるミニポニー。

 向こうは最初からこっちを把握していたのだろうか。

 分からないが、少なくとも今はこっちを把握していて、荷物から少し距離を取るように動くとこちらに追従する動きを見せた。


 それならとミニポニーが来るまでその場で動かずに待つ。

 そして、真っ直ぐに剣を上げた状態でギリギリまで引き寄せた所で、右斜め前に進みながら斜めに剣を振り下ろした。

 すれ違いざま、抜き胴の要領で放った一閃はミニポニーの頭部に直撃し、ミニポニーは制御を失い、突進の勢いそのままに地面を削りながら滑り込んでいった。


 後ろを振り返り、ミニポニーの様子を確認するが、一撃で息の根を止めることができたようだ。



 よし、完璧な動きだったな。

 ミニポニーの動きを活かせたし、こちらもノーダメージだし、剣道の経験も活かせた。

 戦闘の振り返りはここまでにして、さっさと解体に移る。

 先ほどと同じようにレバーとハツだけを食べて、他の内臓は捨てて袋に入れていく。

 ミニポニーは内臓除きの1体で7kgらしいから、2体分で大体14kgくらい。

 持ってみると、これ以上だと突然の戦闘になった際に危険が生じると感じたので、2体分を持った状態でダンジョンの入口を目指して戻っていく。


 昼前には入口に到着したので、そのまま協会の受付に持って行く。


「いらっしゃいませ。ご用件をお伺い致します」


「素材の買取をお願いします」


 いつも通り、袋に入れた肉を渡していく。


「ミニポニーの個体2体分で5,400円、税金を引いて4,320円になります。

 魔石はございませんがよろしいでしょうか?」


 そういえば魔石を取らずに心臓を食べていたな。

 まぁ検証だし、今日は午後も魔石も一緒に食べるようにしよう。


「問題ないです」


「かしこまりました。受け取り方法はいかがされますか?」


 あっ、財布はロッカーに入れたままだった。


「じゃあ冒険者カードに入れておいて下さい」



◇◇◇



 ダンジョン協会によるダンジョンの管理が開始されてから、ダンジョンに入るには冒険者資格が必要となった。

 そしてそれを証明するためのものとして冒険者カードが作られた。

 この冒険者カードは個人の証明書以外にも、マイナンバーカードと連携して冒険者の収入金額の管理と武器防具や消耗品などの経費の管理をしてくれて、冒険者の確定申告を楽にしてくれている。

 そして、冒険者カード自体がキャッシュカードの役割を果たしており、冒険者カードを使えば協会にお金を預けておくことができる。

 お金を引き出せる場所は協会関連施設と冒険者向け商店に限られるが、必要な時に銀行口座へ振込もできるため、協会に預けている冒険者は結構多い。



◇◇◇



 協会にミニポニー2体分を売却し終えたら昼食を食べて、休憩をしてから再度ダンジョンに向かう。

 また2体倒して、その2体は家に持って帰って瀬奈に調理してもらおう。


 午前中の戦闘で問題ないことを確認したので、今のうちに瀬奈にメッセージを送っておく。

 今日はミニポニー2体を持って帰るから調理よろしく、っと。


 2回目なので軽く走って第2層に到着して、そのまま走りながらミニポニーを探しに行く。

 問題なく倒せて良かったな。

 Absorbスキルでどのくらい強くなっているのか、レベルにしたらどれくらいなのか全く分からないから、新しい階層で新しいモンスターと戦うのはちょっと不安なんだよな。

 ステータスが見れるようになる道具とか開発されないかな……

 鑑定スキル持ちは現れても引っ張りだこで、依頼料がかなり高くなりそうだし。




 1時間ほどで2体のミニポニーを仕留めた。

 どっちも不意打ちではなく、カウンターでの一撃だった。

 第2層は問題ないな。


 さて、帰るか。


 2体分を持って階段に向かうが、午前中に持って帰ってまだ少しだけ余裕がある感じがした。

 それなら時間と量を見ながら作物も持っていくか。



 奥羽ダンジョンも他のダンジョンと同じく第2層からは食料となる作物が自生している。

 ちょうど見えているから採っていこう。


 数分歩いて目的地に到着した。

 そこにあったのは数本の木。


「良かった。何個か実がついてるな」


 木になっていたのは真っ赤で丸々としたりんご。

 ダンジョンの作物は外の作物よりも圧倒的に成長が早いが、それでも他の冒険者が採っていくのでそこまで数は多くない。

 1つずつ確認しながら、底が黄色っぽくなっている熟したものを優先して収穫していく。


 6つほど採って、次の作物に向かう。

 あれも欲しいけどあるかな。


 階段に一直線に向かうのではなく、少し遠回りをしながらあの作物を探しつつ進んでいく。

 30分ほど歩き、もう諦めようかと思っていると黄金色に輝く一体が見えてきた。


 探していた作物だと確信して、そちらに駆けていく。

 そこにあったのは、黄金色に輝き、重そうに頭を垂れた稲穂。

 飛騨ダンジョンほどではないが、奥羽ダンジョンも米が採れるダンジョンとなっている。

 米以外には先ほどのりんごのような果物が多く自生している。


 早速米の収穫に移る。

 荷物を足元に置き、剣と袋だけを持って稲穂に近づく。

 左手で稲穂の束を掴み、剣で根元をなでる。剣でやることではないが、切れ味は抜群だ。

 刈り取った稲穂を即座に袋の奥へと突き入れ、袋の内側に叩きつけていく。

 叩きつける度にパラパラと籾が袋の底へと落ちていった。


 不要となった藁を放り捨て、次の束へ。



「やっぱりモンスターの相手をするより、血抜きとか収穫とかの方が疲れるな」


 そのまま30分ほど経過しただろうか。

 それでも2kgも収穫できていないだろう。

 機械化って偉大だな。


 まぁ家で食べる用だからこれくらいにして帰ろうか。



 再び荷物を背負い、ミニポニー2体分、りんご、米を持って帰宅の途につく。

 りんごと米も採ったからそれも調理よろしく、と瀬奈にメッセージを送っておく。

 今日はどんな料理になるかな。




『大量だね』

『ミニポニーって大きいよね?』

『キッチンで処理するの大変そうだから、庭の洗い場に置いてくれる?』


 帰りの電車に乗り込むと瀬奈からメッセージが来た。

 確かにここまで大きいとキッチンではキツそうだな。

 了解、任せた、とスタンプを送ってスマホを消す。


 今日は2体分の売却で手取りは4,320円の稼ぎ。

 午後の分も売却していれば8,640円だし、魔石も売ればもっと増える。

 交通費がかかってるけど、ようやく稼げるようになってきたな。




「ただいまー。瀬奈ー、洗い場に置いておいたぞー」


「はいはーい」


 家に帰って、約束通り洗い場にミニポニーを置いてから部屋に戻る。



◇◇◇



 解体用のナイフを手に、洗い場に向かった。

 うわ、やっぱり大きい。

 洗い場に横たわっていたミニポニー。ダンジョンネズミの何倍も大きいな。


 よし。やりますか!

 自分に気合を入れ、大きな後ろ足の付け根にナイフを当てた。

 ダンジョンネズミよりもずっと厚くて頑丈な皮。体重を乗せるようにして、ゆっくりと、だが正確に刃を滑らせる。身体の構造はそんなにダンジョンネズミと違わないみたい。皮と脂肪の境界線を見極めて、ペリペリと皮を剥いていくと、鮮やかな赤身が露わになってきた。

 これが桜肉って言われる理由なんだー。

 一通り剥がし終えると、次は骨から肉を外す工程だ。私はナイフを骨に沿わせ、慎重に肉を切り離す。次は背骨に沿ってナイフを滑らせ、まずはロースを切り出していく。断面から溢れ出すのは、馬肉特有の甘くて清涼感のある香り。

 その後も各部位に分けていき、切り分けたブロックを一つずつ丁寧に洗い、キッチンへ運べるサイズに整えていった。



 解体した肉をキッチンに運んだら、まずはメインの桜鍋の下準備。

 慎重に刃を入れて、透き通るような薄切りにしていく。皿に円を描くように並べて、次は野菜。

 たっぷりのゴボウをささがきにして水にさらす。このゴボウの香りが馬肉のクセを旨味に変えてくれるんだよね。

 鉄鍋には、特製の甘辛い味噌割下を張っておく。あとはテーブルで火にかけて、お肉をさっとくぐらせるだけ。


 次は鮮度が命のユッケ。

 サシの入った部位を丁寧に細切りにしてボウルへ。醤油、ごま油、砂糖に、隠し味のコチュジャンを少々。

 優しく和えてから器に盛り、中央に窪みを作る。そこに、指でつまめるくらい新鮮な卵黄をポトンと落とした。最後に白いりごまを振れば完成!


 最後は、一番食べ応えのある厚切りステーキ。

 油をひいてフライパンをしっかりと熱する。そこへ塩コショウを振った肉を投入!

 ジューッ! と激しい音と共に、一気に表面を焼き固める。馬肉は脂の融点が低いから、モタモタしてると旨味が逃げちゃう。強火で一気に両面を焼いたら、すぐにまな板へ。

 アルミホイルで包んで、さらにタオルでくるんで肉汁を落ち着かせる。切り分けた時に断面が完璧な桜色になっていたら私の勝ち。


 よし! 下準備もステーキも完璧。



◇◇◇



 部屋で筋トレをして時間を過ごしていると夕飯が出来たようだ。

 ダイニングに向かうと大量の料理がテーブルに並んでいた。


「新鮮だから作ったユッケ、厚めに切った赤身の旨さを味わえるステーキ、定番の桜鍋の3つを作ってみたよ。

 肉は大量にあって追加できるから言ってね」


「いただきます」



 どれも美味しそうだ。

 まずは気になったユッケ。

 一口食べると、細切りにされた肉は適度な弾力を保ちつつも噛むと驚くほど素直に切れた。咀嚼するごとに肉の繊維が解け、甘辛いタレと渾然一体となって溶けていく。そして、舌に絡みつく濃厚なコクのあとに、馬肉の純粋な甘みが爽やかに吹き抜けていく。

 ヤバいな。次はユッケを米に乗せて一緒にかき込む。米の熱で脂がわずかに緩み、香りが立つ。肉の冷涼さと米の熱気、そして卵黄のまろやかさが三位一体となり、いくらでも飽きずに食べられそうだ。


 ユッケを食べた次はステーキに手を伸ばす。

 肉を噛みしめた瞬間、閉じ込められていた肉汁が口いっぱいに溢れ出した。脂っこさはなく、驚くほど軽やか。それでいて鉄分を感じさせる濃厚な赤身の味と瑞々しさが噛むたびに交互に押し寄せてくる。


 最後に桜鍋。

 赤味噌の香りが食欲を誘う中、割り下が染みた薄切り肉を口に運ぶ。噛みしめるたびに馬肉特有の品のいい甘みが味噌のコクと溶け合い、体の芯からじわりと熱が広がっていく。



 ふう。美味しいわ。これが第2層か。もっと下層に進んだらどうなってしまうんだろうか。

 途中でデザートとして出されたりんごを口直しに食べる。

 今日ダンジョンで採ってきたものだと言うが、一口かじると爽やかな甘みが口いっぱいに広がり、重厚だった肉の余韻をキレイに洗い流してくれた。


 さて、肉を食べられるだけ食べよう。まだ300gくらいしか食べてないだろうからな。



 その後何度もおかわりをした結果、1kgちょっとの肉を食べていたと瀬奈から報告された。

 これで1kgか。スキルの効果もあって大食いになったな。

 どうやら1体分の肉は4.5kgくらいらしく、1体分を食べるにしても5日近く必要になる。

 結構時間かかるな。でも、美味しくて強くなれるなんて最高じゃないか。


 明日もいっぱい食べて、強くなってみせるぞ。


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