14話:第2層
世界各地に出現したダンジョン。
そのダンジョンを入ってすぐにある第1層については、全てのダンジョンで共通であり、スライムとダンジョンネズミが生息する草原となっている。
一方で、第2層からはそれぞれのダンジョンごとに大きく違いが出てくる。
平原だったり山だったり海だったり洞窟だったり。
モンスターも狼や熊、牛、鳥からカニや鮫まで、ダンジョンごとに傾向が違っている。
そして第2層からは作物が自生している。
肉だけでない様々な食材がダンジョンごとに収穫可能であり、この作物もまた世界の食料問題の解決に寄与した。
穀物や野菜、果物とダンジョンごとに作物の系統は異なっており、モンスターよりも不足している作物を狙って様々なダンジョンを練り歩く冒険者もいる。
日本国内にある6つのダンジョンにもそれぞれの場所に則した特徴がある。
北海道ダンジョンは、国内で唯一海があるのが大きな特徴であり、海に魚介、平原に羊のモンスターが生息している。
富士山ダンジョンは緩やかな山麓が広がっており、霊峰富士を表したのか、鶴は千年、亀は万年という言葉の通り、鳥と亀のモンスターが生息している。
飛騨ダンジョンは広大な平原と険しい山地が特徴で、広大な平原には大量の稲が自生している。そしてこの平原と山地には牛と猪という重量級モンスターが生息している。
紀伊ダンジョンは熊野古道を元にしたようなダンジョンであり、飛騨ダンジョン以上に険しい山地と神に仕える動物として描かれることの多い鹿と兎のモンスターが生息している。
九州ダンジョンは高原のような環境と桜島のような活火山が特徴で、豚や山羊のモンスターが生息している。
そしてこの奥羽ダンジョンもその例に漏れず、第2層から地形、風景、生息しているモンスター、自生している作物に特徴が出てくる。
それぞれの冒険者にとって戦いやすい、戦いたい地形やモンスターを選んでダンジョンに挑むのか、ゆかりのある地域のダンジョンに挑むのか。
ダンジョンと共に冒険者もそれぞれの特徴がある。
◇◇◇
ダンジョンネズミの吸収上限に到達した翌日。
昨日は上限に到達した喜びで忘れていたが、上限に到達しても特に身体が軽くなったり力が強くなった感じはしない。
やっぱり2日目に感じたあれがステータス強化のほとんどだったんじゃないかな。
でも内臓にも何か効果があるはずだし、しっかり食べるようにしよう。
さて、今日からは第2層に挑む。
第1層でこれ以上活動をしてもお金しか稼げない。
第2層に進み、新しいモンスターを倒し、その肉を食べることでステータスを向上させないと先はない。
まぁ俺が行かずに、他の人が倒したモンスターの肉を食べればいい気もするけど、先のことを考えるとここでそんな手を打ちたくない。
まだ第2層だからそこまで危険性は高くないし。
ダンジョンに入り、第1層から第2層に降りる階段がある右斜め前の方向に進んでいく。
他の冒険者が何人も進んでいくので後をついていけばいい。
歩き始めて10分も経たずに第2層への階段に到着した。
階段の周りには柵がつけられていて、地下に階段が続いている。
階段は石造りのしっかりしたものであり、所々に光がついている。
なお、石や光を持って帰ろうともしたらしいが、全くびくともしなかったそうだ。
少しの緊張と大きな期待感を胸に階段を降りていく。
途中から緩やかに右にカーブしていき、1分ほどで第2層に到着した。
第2層に到着した俺の目の前に広がるのは草原。
第1層と変わらない雰囲気だが、遠くには第1層よりも大きな森が見えており、更に奥には大きな山がそびえ立っている。
まるで実家から仙台駅方向を見た時に広がる仙台平野と奥羽山脈って感じだ。
第2層からダンジョンごとに異なる環境になるのは知っていたし、奥羽ダンジョンの第2層は平原と山林が大体半分ずつで構成されていると聞いていたが、実際に目にすると圧倒される。
第2層の風景に圧倒されている間に、多くの冒険者が通り過ぎていく。
第2層で主に活動している冒険者は少なく、多くは更に下層を目指して右手にある階段に進んでいった。
さて、それでは始めますか。
今日は第2層の平原にいるモンスターを今の状態で倒せるかを確認する。
もしダメだったらモンスターの肉を購入して強化するしかない。
モンスターを探して先に進むが、まずはスマホがちゃんと使えるかチェックする。
特殊な基地局は第1層以外にも設置されている。
前にネットの記事を見たが、第1層の基地局から飛ばされた電波を第2層に降りる階段の側に置かれた機械で受け取り、それを光回線で第2層の基地局に送って基地局で第2層に電波を飛ばしているそうだ。
そしてこれは結構下の階層まで続いており、この基地局にはモンスターの魔石を使って発電する発電機が付属されて稼働していて、定期的に協会職員が魔石を補充しているそうだ。
こんな所にも魔石が使われているんだな。俺が売ったダンジョンネズミの魔石も使われてるのかな。
草原を歩きながら山の方に向かっていき、20分ほど歩いて、ようやく先の方に動く影を発見した。
まだ結構距離はあるけど用心しすぎるに越したことはないので、音をなるべく立てないように慎重に進んでいく。
10分ほど歩いて、モンスターまで残り20mほどの距離まで辿り着いた。
見つけたモンスターは奥羽ダンジョン第2層草原エリアに生息している馬、通称ミニポニー。
体長45cm、高さ30cmほどの茶色い馬が視線の先で草を食べている。
気づかれずに一撃を当てられたらかなり有利になるはずだが、ミニポニーの聴力と注意力はどうなんだろうか。
ミニポニーは俺から見て左側を向いているので、鞘から剣を抜いて右側にゆっくりと周り込む。
慎重にはいきたいが、食べ終えてどこかに移動されたら困る。
ほぼ真後ろに移動した所で我慢ができなくなった。
残り20mならいける!
音が鳴ることも無視してミニポニーに向けて駆け出す。
ミニポニーは音に気づいて、食べるのをやめてこちらを振り向く。
残り10m。
体当たりをするかのように頭を低くして直線的に接近する。
それに気づいたミニポニーは横に逃げようとするが遅い。
ミニポニーの胴体を狙って、剣を前に突き出した。
ミニポニーは動き出した所だったため、わずかに中心からはズレたがミニポニーに剣が突き刺さった。
剣が刺さったミニポニーは剣の威力に押されて後ろに倒れていく。
結構深く刺さったようで、ミニポニーは既に動きを止めていた。
剣を抜き出し、素早く首を落として、戦闘は終了した。
よし。
周りを見回して、他のモンスターがいないことを確認してから解体作業に移る。
まずは血抜き作業。
ダンジョンネズミと比べてかなりの大きさがあるミニポニーだから腕だけで振り回すのは無理だ。
両後ろ足の足首をガッチリと両手で掴んで、思いっきりジャイアントスイングの形で振り回した。
ミニポニーの重さが遠心力で倍増するが、しっかりと踏ん張り、腹筋背筋で強引に円軌道へと乗せる。
ブシュッ、ブシュッ、と首から出ていく血が真円を描く音が響く中、獲物が軽くなるまで回し続けた。
「はぁー、きっつー」
戦闘よりも血抜きの方が肉体的には疲れた。
ミニポニーは大体8kgくらいあるって聞いたけど、振り回すと倍以上に感じた。
良いトレーニングになるんじゃない?
さて次は内臓の処理に移る。
剣で刺した所から腹を切り開いていく。
身体が大きいから、ダンジョンネズミと比べて内臓の量も多い。
これ全部食べるのはキツイし、時間がかかりそうだな。
内臓のうちどれが吸収上限に影響したのかを知りたいから、ここは食べる部位を選別しよう。
内臓で一番栄養がありそうなのは、やっぱり肝臓、レバーだよな。
次は心臓かな。栄養もそうだけど、内臓で一番重要な臓器だし。
今日はこの2つだけに絞ってみよう。
それでも合わせて300gはあるか。
消化スキルが無かったら大変だったろうな。
肉は持って帰って夕飯で食べるけど、これを2体分食べきるのに何日かかるんだろうか。
まぁ瀬奈にかかれば美味しくしてくれるからいいんだけど。




