13話:進展
1日ゆっくりと休んだ翌日は再び朝からダンジョンにやってきた。
昨日は夕食に骨と尻尾を3体分料理してくれた。
瀬奈が昼間にどう料理するのが美味しいかを色々と試して、骨は細いものは骨せんべいに、太いものは骨髄を活かすために圧力鍋で煮たスープになった。
そして尻尾で作られた肉団子がそのスープに入っていた。
よく考えつくものだな。
そして今朝起きてステータスを確認したが、上限には到達してなかった。
ということで、昨日瀬奈と議論して方向性を決めた通りに、ダンジョンで内臓を焼いて食べようと思う。
それでもダメだったら頭を持って帰り、それを料理してもらう予定だ。
一昨日までと同じく、ダンジョンに入ったら遠くに見えている林に向かう。
第1層にも慣れてきたので、軽く走っていくことで30分ほどで林に到着した。
そこからダンジョンネズミを探して、10分くらいで最初の1体を見つけた。
内臓を食べることを考慮して腹部には当てないように、狙うは頭部一点。以前より鋭くなったように感じる剣筋が頭にあたり、無事に倒すことができた。
さて、ここからが本番。
頭から大量に出血しているが、更に首を切って頭を落として、血抜きをする。
その後、慎重に胴体を切り開いて、内臓を引っ張り出していく。
この内臓が上限到達に関係するのだろうか。
不安はあるがとにかくやってみる。
全ての内臓を取り出したので、腸を開いてから持ってきたペットボトルの水で洗い流し、ナイフで一口サイズに切り分けてコンロに敷いた網の上で焼いていく。
味は二の次だ。
しっかりと火が通ったものから口に運んでいく。
うん。案外美味しい。なんで皆捨ててるんだろうって思うくらいには美味しい。
これは肝臓、レバーだな。臭みは無いし、甘みを感じる。
次は胃袋、ミノ。うん、噛む度に出てくる脂が美味しい。
次に心臓、ハツ。赤身肉って感じの美味しさだ。
その他の腸、肺、腎臓なども食べ進めていく。
新鮮な内臓は美味しいって聞いたことはあるけど、ここまでか。
もっと下層だとヤバいことになりそうだ。
倒してから15分ほどで全ての内臓を食べ終えた。
塩くらいは持ってくるべきだったかも。
とりあえず1体分を食べたので、もう数体は食べようと思う。
どこにいるかな、ダンジョンネズミさん。
10分ほどで2体目を見つけて、1体目と同じように処置していく。
うん、内臓はやっぱり新鮮だと美味しいけど、味付けってすごく大切な要素だなと思う。
更に2体分の内臓を食べて、一旦打ち止め、いや食べ止めにして、いつも通り持てる限りのダンジョンネズミを狩っていく。
昼食を挟んで14時30分頃に12体分の肉を確保したのでダンジョンの入口へ戻っていく。
今日は4体分の内臓を食べたけど、これで上限に到達するといいんだけどな。
今日も到達しなかったら明日以降も1日4体分食べるしかないよな。
このスキルについて調査がされていないかネットで調べたけど、Absorbスキルの名前すら見つからなかった。
レベル上限に到達した時に獲得したスキルだから、やっぱりレアだったのかな。
誰か代わりに検証してくれないかな。
両手と背中に大量のダンジョンネズミを持って歩いていく。
『ダンジョンネズミの吸収上限に到達しました』
「っ!? よっしゃー!!」
両手に持ったダンジョンネズミを高く掲げる。
このタイミングか! やっとダンジョンネズミの肉から解放されるぞ!
内臓を4体分食べてから3時間くらい経ったはずだ。
スキルの効果で消化も吸収も早くなってるけどこれくらいかかるのかもな。
それよりも内臓で当たりだったな。
「はぁー、良かったー」
無事に考えが当たってくれて良かったよ。
これでダメだったら、爪か毛か30kg分かってことになるんだもんな。
美味しくない爪と毛は嫌だったからな。
さぁ帰るか。また瀬奈に何か作ってもらおう。
上限に到達したことも伝えなきゃな。
「ただいまー」
「おめでとう、肉ー」
「ありがとうなんだが、肉の方が気持ちがこもって聞こえたぞ」
「そんなことないよー」
「ほら、夕飯楽しみにしてるぞ。
あと、昨日のアドバイス助かったわ、ありがとう」
「私のおかげだねぇ。何か報酬が欲しいなー」
「何が欲しいんだ?」
「……包丁かな」
「良し悪しが俺には分からないから、瀬奈が買いに行けよ」
「いやいや、普通の包丁じゃなくてさ。
冒険者専用の店に売ってるやつが欲しいのよ。
野営道具の中に包丁もあるって見たんだよね。
でも冒険者じゃないと買えないから買ってきて」
「そんなのがあるのか。何が違うんだ?」
「強いモンスターの肉は普通の包丁じゃ切れないみたいで、切るにはその包丁が必要らしいんだよね。
まぁ専門の所で精肉に加工されてれば普通の切れ味がいい包丁で大丈夫みたいだけど」
「まぁ今後もモンスターの肉を丸々持って帰ってくるだろうし、財布と相談して決める形でいいな。
ってか、そんなに切れ味がいい包丁だとまな板まで切ったりしないよな?」
「えーっ、まな板も買ってくれるなんて太っ腹ー!」
「はぁー。その包丁がないと調理が厳しくなってからな。
そうじゃないと一番安いやつになるぞ」
「それもそうだね、分かった。じゃあ貸しにしておくね。
今日は何作ろうかなー」
ちゃっかりした妹だ。
まぁ包丁があれば俺にもメリットが出てくるだろうし、そのうち買うのは悪くない。
しっかり稼いでいかないとな。
瀬奈に肉を渡してからは、いつものジムでトレーニングをしてきた。
限界を測定したが、ベンチプレス60.0kg、デッドリフト107.5kg、レッグプレス170kg、アブドミナルクランチ41.25kgと、それぞれ前回よりも1つ重くても持ち上げることができていた。
まぁこれがステータス強化の影響なのか、単純に日頃のトレーニングの成果なのか分からないのだが。
これしか測る方法がないから続けていくけど。
「ステータス・オープン」
レベル:2(上限到達)
スキル:消化+、Absorb(上限到達:ダンジョンネズミ、スライム)
◇◇◇
『なかなか下層まで来ないわね』
『まだ5年だ。まだまだ時間はかかるだろうな』
『一番進んでいる子でも19層、レベルもようやく100だものね』
『他の奴の所だと21層、レベルは110らしいぞ』
『うちの子たちは出遅れてるわね。大丈夫かしら?』
『巻き返せるかは、この間覚醒した子が諦めずに強くなってくれるかにかかっているだろうな』
『あの子ね。遂に現れたわね、イレギュラーの特異スキルを持つ子が』
『ようやくだな。他の奴の所にはまだいないそうだし、先が楽しみだ』
『そうね。私たちの奥意、ダンジョンの真理に気づいて協力してくれるといいのだけど』
『案ずるな。あの子は奥意を知っても、それとは関係無く己の欲のために動き、結果として協力してくれるだろう』
『ふふ、楽しみね。何十年でも、何百年でも待ってるわよ。ダンジョンの更に先で』
『忘れるな。人間という種は、我らと違って瞬きする間に消えてしまうほど短命だぞ』




