100話:制裁
「どうも、皆さんこんばんわ」
瀬奈の料理を食べ終えて、かおりんが帰っていった後。
俺は自分の部屋へと戻り、パソコンの前で準備を整えると配信を始めた。
:緊急と聞いて飛んできた
:タイトルが不穏すぎる
:何事?
:画面真っ暗
:映像は無しって事かな?
:ダンジョンじゃないみたいだな
:何が起こるのか
:報告は分かるが、注意喚起って何?
いつもの配信は、『奥羽ダンジョン2047年11月●日』みたいなタイトルにしていて、配信後に階層名や討伐したモンスター名を追加する形にしている。
それが今回は、『【緊急配信】報告と注意喚起』となっている。だから、視聴者もタイトルを見てざわざわしているわけだ。
「今日はいつものダンジョン配信じゃないから映像は無しだ。パソコン用のカメラは用意してなかったからな」
カメラが必要になる事なんて無い。WEB会議とかもする事は無いし。
:ラジオ的な感じで聞くか
:ダンジョン配信ほど気合入れて見る必要は無いな
:安心し見れる
:タイトルは不穏なのに、コメントの雰囲気は穏やかで草w
:視聴者がダンジョン配信に毒されてるな
まぁ実際、この配信は何か重要な情報が出てくるわけでも、モンスターを倒すわけでも無いからな。でも、映像は後で見た方が良いぞ?
「それじゃあ、ササッと本題に入ろうか。配信タイトルの通り、ちょっとした報告と注意喚起についてだ」
:20層に変なモンスターがいたとか?
:今日はポーター女子と潜る日だから、何か発見したとしても18層か19層だろうか
:それか質の悪い冒険者に絡まれたとか?
:それは怖い
:ワクチンとか?
:あれがいたら嫌だな
:あいつらって18層とかまで進めるくらい強いの?
:狂信者集団イヤ……
そういやそんな連中いたな。12層だったか。そういや、あれ以降出会ってないけど、仙台入口にいたのはあの3人だけだったのか?
「ダンジョンの中じゃなくて、ダンジョンから帰ってくる時の話なんだけどな。
みんなも知ってる通り、ダンジョン協会のホームページに掲載されている『指定冒険者』のリストに俺の名前もある。指定冒険者であり、個別接触可となっていない場合、協会を通さない取材や接触は禁止されている」
:やっぱり先月ホームページに追加されていた伊藤祐也がフードファイターだったんだな
:個別接触可と書いてないから、取材したい場合は協会を通せって事だな
:取材受けた事あるのかな?
:取材依頼はたくさん来てそう
:指定冒険者が今回の配信と何か関係あるって事?
「しつこくなければ法律で罰則されないし、一度くらいなら厳重注意で終わりだとは言われてるな。でも、それを受ける側からしたら危険で不快だと感じる。俺は問題ないけど、パーティーメンバーやその家族へ危険が及ぶ可能性だってある」
:『重要人材の保護に関する法律』だっけ?
:ストーカー防止の法律の一段階上のやつか
:上位冒険者以外が対象になってるのは見たこと無いな
:そこは報道の自由の観点からも、ちゃんと協会もしっかりと運用してるんだろ
:法律自体のニュースは見たことあるけど、適用されて処罰されたニュースは見たこと無いな
:厳重注意された時点でやめてるって事かな?
「そう。この法律が適用されているニュースって見た事ないよな。でも、実際に今日それと遭遇したので、ここでその時の映像を見てもらおうかと思うぞ」
そう告げるとパソコンを操作して、事前にドローンからダウンロードしておいた映像を配信へと映し出す。
真っ暗だった配信画面に、上空から撮影された鮮明な映像が映し出される。
:遭遇したのか!
:本当にマスゴミは!
:報道の自由って言葉を自分たちに都合のいいように使ってる連中がよ
:映像!?
:マジかよ
:フードファイター目線でのマスゴミの様子が見れるのか
:えっ? 上から?
:これってドローン撮影?
:このためにドローンを用意してたって事?
「こういう事があった時のために、協会からドローンを借りててな。しっかりと撮れてて良かったよ」
伊達さんからドローンを借り始めてから1週間も経たないうちに成果が出るとはな。急いで借りれるように依頼して良かった。
:協会ってそんな事もしてるのか
:さすが指定冒険者
:用意よすぎない?
:このマスコミって仕込みだったり?
:ちゃんと音声拾ってるな
:全然話聞かないな、こいつ
:こういう奴イヤ
:どうなるどうなる
:あっ!
:あ~
:手慣れてる?
:もしかして、熊型モンスター相手にこんな感じの事やってる?
:熊の手を握って捻って地面に叩きつけて、その間にメンバーに攻撃させてレベル上げしてる?
熊相手に護身術みたいな事はやってないっての。レベル上げの様子もどこかで配信するか?
でもかおりんは顔や声を出したくないって事だし、録画したのを確認して、問題なければアップするか。後で相談しておこう。
:カバン漁りだしたぞw
:何が出てくる?
:何か取り出したな
:ストラップ?
:社員証か!
:解放したな
:掲げた
:えっ?
:マジでこの会社かよ……
:本物、だよな?
:大手じゃん
:知ってる新聞社
:これってどういう事になるの?
俺の高く掲げた社員証にドローンのカメラがズームした事で、社員証の内容がはっきりと映し出された。
「さて、という事で法律では裁けないので、俺のダンジョン探索の障害となり得るこの人と会社には、人柱になってもらいます。
小谷さんは優しいから何もしてないみたいだけど、俺はしっかりと対応するよ。法律に則った罰は大したものにならないから、法律以外でこうやって社会的に制裁を受けてもらう。
ちなみに、事前に協会には話をしていて、これについての対応も確認済みだ。このタイミングでホームページが更新されているはずだぞ?」
という事で、俺もスマホでホームページを確認してみる。
おっ、トップページのお知らせ欄にちゃんと追加されてる。
:おい! ホームページ!
:マジかー!
:ヤバいね
:協会が本気だって事だな
:それだけフードファイターを協会も重要視してるって事か
:この記者もだけど、新聞社も終わりかもな
:まぁこの新聞社、評判良くなかったし
ホームページに記載されていたお知らせの内容はこうだ。
『指定冒険者 伊藤祐也 への不当な接触を図ったA新聞社、及び該当の痣見記者に対し、当協会関連の全ての取材、会見への参加を無期限で全面禁止といたします』
ドローンを借りられるように依頼する際に伊達さんとは話をしていた。通告を無視するような記者、会社には社会的罰を受けてもらいたい。
それに対して、この処罰を提案してくれた。そして、この方針は東北支部だけではなく、協会全体でも承認されていた。どうやら協会としても、禁止しても無視して接触してくる一部悪質なマスコミの対応に困っていたそうだ。
「それじゃあ、これで緊急配信で伝えたかった事は終わりだな。ちなみに、初回だからこの対応で済んでるけど、今後はこれ以上の対応になるから覚悟しておくように。
あと、取材依頼についてだが、基本的に俺が話せる事は全部配信で話してるから、しっかりと配信を見てくれ。どうしても答えて欲しい質問があれば協会に言うように。動画のコメント欄だと埋もれる可能性もあるからな。
それじゃあ、また次の配信の火曜日に。おやすみなさい」
:おつ
:おやすみ
:おやすみなさい
:ラジオで終わらなかったなw
:何も無い配信じゃなかった
:絶対に何か起こる配信だわ
:ダンジョン目的で見始めたけど、最近はエンタメとして見てる
:2日間でアーカイブ見直そう
:21層はいつ行ってくれるのかな
少し待って、コメント欄が落ち着いた所で配信終了ボタンを押す。
これで、俺以外の冒険者へのマスコミの対応も良くなるといいんだけどな。




