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070 ⛩(☴) 悪霊騒ぎ①

 大会が終わってからというものの、何故か学園内に様々な悪霊を見かけるようになっていた。

 そのため、部活動は17時までと定められ、18時までには生徒は完全下校し、それから有志で残った生徒と超能力を持った先生で手分けして悪霊を退治するという慈善活動が行われていた。


 しかしながら、この活動には円達はもちろんのこと、何故か咲九と花菜子も参加はしていない。


「修業の場には持って来いだと思うけど、そもそもの原因が解らないのに参加しても意味は無いもの」


 理事長自らの要請だったが、咲九はそう言って断ったらしい。


 咲九曰く、悪霊の原因は大会時の魔力暴走によって出来た結界の歪みらしい。

 が、その歪みがどこにあるのか解らない今、学園内の全ての悪霊を退治しても、更なる強い悪霊が登場し続けるだけで意味はないという。


 ちなみに、学園に張られている結界が原因では無いらしい。

 元々、この学園の結界は強固で、特に女子校側の結界は戦時中でも健在だったと言われている。

 その結界では無く、結界の中に開いてしまった別の空間から流れ込んで来ているのだろう、ということまでは判明している。




 そんな活動が続く、早朝。


 帰宅後の試験勉強からか寝不足気味で、あまりの眠気で大欠伸をしていた私は、女子校側の坂道を少し進んだあたりで不審な動きをする風見さんを発見した。

 早朝過ぎるのか、まだ周囲に生徒の姿は無い。


 風見さんはエレベーターがある方向でも、門がある方向でも無く、何故か畦道を進み出す。

 そっちに何があるのか ―― 私は気になって付いて行くことにした。


 しばらく見失わない程度に畦道を進めば、不意に視界の開けた場所に出た。


 そこは凄く風が心地よくて、私は思わず目を丸くする。


 しかしそこから1メートル先は断崖絶壁。

 一応古びたフェンスはあったものの、ほぼ真下には街が広がっている。


「にゃ~」


 急に猫の鳴き声がして左側を振り返れば、風見さんが子猫の頭を撫でている姿が見えた。


 猫はかなりの数が居る。

 風見さんの更に奥には猫が1匹なら通れるくらいの穴があいていて、どうやらそこが猫達の住まいになっているようだった。どの子も大人しい。


 すると、風見さんが私を見上げた。

 これが、最近になって風見さんが私よりも早く教室に着いていた理由なのだとすぐに悟った。


 生徒が多い時間にこの畦道に入ったら不審に思われるのは間違いない事実。

 だけど、校庭の隅で食べ物を食べているだけでねだって来る学園の猫を嫌う生徒も多い。その猫達がバレたら処分されることは間違いない事実だろう。


「少し前に子猫に唐揚げをあげているのを見かけて、宮本さんなら大丈夫だと思ったの」


 風見さんはそう答えつつ子猫の前にも缶詰を開けて出してあげていた。

 缶は6個ずつ出しているらしく、風見さんはその場にしゃがんだまま、雨風に晒されていたと思われる周囲の6個の空き缶を隅に回収している。


「売店の唐揚げは凄く美味しいみたいだから、猫にあげている人は初めて見たわ」

「作り置きされていたみたいでね。いつもの味じゃなかったのよ」


 私はそう答えつつ、足元にやって来た猫の頭をポンポンとやってやった。

 しかし、次の瞬間に寒気がした私は慌てて手を離す。


 そして、驚いて風見さんを見た。

 風見さんが静かに、残念そうに頷く。


「悪霊に憑かれた猫達 ……」

「そう。前にこの子達のボスが悪鬼に憑かれてから、次第に悪霊に憑かれてしまったみたい。丁度修学旅行の時だったから気付けなくて、気付いた時には既に手遅れだったの」


 人間や妖怪とは違い、更に小さい体の生物に悪霊や悪鬼が憑依した場合の祓える期間は凄く短い。

 そのため、ものの数分で完全な悪霊に化す場合もある。


「完全に憑依される前に殺さなくてはならない …… このことは、解ってはいるの。でも ……」


 頭では解っていても、確かに惨いことだと思ってしまう。

 どうにかして祓ってあげたかったが、しかし祓ったところで他の仲間と一緒に居る限り、また違う悪霊に憑依される可能性は高い。

 そうなってしまったら意味は無い。むしろ、完全に堕ちた悪霊や悪鬼を除霊した方が徳は高まるらしく、そうやって神主や人神に成った者も多いと知ってはいる。


 ―― 恐らくは、咲九とリュウ様がそのタイプだろうと思っている。


「あと、放課後に活動している歪みの原因は多分 ……」


 風見さんはそう言いながら、猫達が出入りする穴を見た。


「この穴の先にあると思うわ」

「穴の先 ……って?」

「解らない。でも、大丈夫だった子も穴の中に戻ったら憑依されて戻って来るの」


 そう答えた風見さんは残念そうに溜め息をつく。


「私達が旅行で居なかった時に地震があったみたいなの。そこに何かの衝撃が加わってこの穴が空いた …… というのが推測。この子達が穴を住処にしたのはつい先日の話しで、大会がある前までは体育館裏の岩場を狭そうに使っていたの」

「ということは、こっちの穴の内部の方が居心地良い、ということ?」

「だと思う。でも、穴の先に何があるか解らない以上、無暗に掘り返すことはしない方が良いと思って」

「触らぬ神に祟りなしってことでしょうけど、原因が解った以上はどうにかしないと」


 風見さんは頷き、立ち上がる。


「如月さんに手伝ってはもらえないかしら?」

「原因だったら大丈夫だと思うけど、咲九だとこの時間には来られないかなぁ」


 咲九は地元の始発で来ている。

 が、その始発が6時台。片道1時間半の咲九にとっては、この時間に来ることは出来ない。


 とは言っても、咲九には特別なルートはあるらしいが。


「聞いてみないと解らないなぁ」


 あぁ見えても咲九は気分屋。

 前に誘った時の様子では、あまり興味が無いように思えただけに少し不安が残る。


 まぁ、それでも聞いてみないことには始まらないが。


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