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067 ☈ 能力大会・建て前と現実⑤

 咲九に言われて仕方なく私が小包片手に駆け回ると、3階席の入り口のすぐ傍に山田が立っているのが見えた。


 そんな山田は静かに会場を見下ろしている。


 山田に近付けば、山田は何も言わずに私に手を伸ばしていた。

 解っていたらしい。だから何も言わずに小包を渡す。


「お姉さんは咲九を信用しているみたいやから忠告しとくけど、」


 不意に山田はそう言った。

 私は黙ったまま頷く。


「知らんとこで咲九は何か企んどるで。気をつけや?」


 そんなこと、何て思って私はゆっくりと頷いた。


 咲九が何かを企んでいることは薄々気付いている。

 長年の勘とか、そういう類では無い。

 そう咲九自身が匂わせているのだから気付かないはずがない。


 ましてや、いくらばあちゃんとの約束だとは言っても、情報屋が無料で私に様々なことを教えてくれている …… というのは、やはりちょっとは疑問にも思う。

 だけど、その理由は絶対に答えてはくれない。


 それでも、咲九の言っていることは事実だと思う。嘘には思えないくらいに言葉の裏を感じない。

 そもそも、嘘をついているのであればあの完璧主義の宮本が慕う訳が無いだろうし、リュウ様や蓮という、あの人間では無い2人が契約をする訳が無いと思う。


 それに何となく、咲九が何を企んでいようとも、今の私には関係が無いことだと思う。


 今の私は何も知らなさすぎる。

 あまりにも無知過ぎて現状にも頭が付いていけていない。


「…… 気を点けておくさ」


 私はそう答えて去ろうとし、途中で思い出して振り返る。


「ところで、その中身は何なんだ?」

「あぁ、コレ?」


 そう答えて山田は私に中身を見せてくれた。


 山田の指の間に大きめの球体が挟まれている。

 その球体は真っ白で、まるで大きめのパールを見ているようだった。


 1つだけ色違いで赤い魔法石があったが、それも球体をしている。


「女神専用の神器の核を元に創られた白い神器やね。まぁ、コレ使えたら早いわ」

「女神の神器 ……」

「本体は咲九が管理しとるんよ」


 あっさりと答えた山田はそれを上空に翳す。


「ウチは悪の属性を持っとるけど望んでは使わん。それはウチの魔力暴走に繋がるからや。そのコントロールが各々、訳有りで出来んあの子らは不憫でなぁ。ウチは解っとったから結界や封印であの子らの制御をしとったんや。それをも超えたあの子の悪意 …… 命を賭けて守ろうとした紫 …… もうな、ウチもよう解らんことになっとる。恐らく、現状は咲九だけが全て理解しとるんやなかろうか」


 山田はそう言いながらも白い神器のオーラを広めている。

 広められた光のオーラに沢山の蛍のような光が集まって来ていた。


 恐らくは妖精なのだろうと思いつつも、今は何故かはっきりとは見えていない。


「そもそも悪って何なん? 何で悪が存在するん? でもな、これに答えられる者は誰もおらん」

「それは咲九でも解らないのか?」

「さぁ?」


 そう答えた山田は私をチラリと振り返る。そして失笑した。


「咲九の思考はウチにも解らんよ。でもな、ウチは咲九が敵をも利用しとると思っとる。敵も策士やけど咲九はその上の策士や。そうやなかったら、今頃の咲九は既に敵を殺していなければおかしいんよ」

「ということは、」

「咲九は敵が誰か解っとる上で敵を泳がせとるっつーことや。おかしいやろ?」


 確かにそれはあり得る話しではあった。

 そう考えたら、山田が咲九を嫌う理由にも納得がいく。


「…… ま、それでもお姉さんには咲九しかおらんのやろけど」

「その通りで」


 私は即答した。


 例え咲九が敵の肩を持っていたとしても、私には関係がない。

 というより、関係があったとしても今の私の範疇では無い。

 だから私は咲九を信じる。それだけの話し。


 信じられないと思ったらそこで縁を切れば良い。

 きっと咲九なら私を引き止めはしないだろう。


 それに私から言わせてもらえば、もし山田も敵を知っているのであれば、どうして山田が敵を殺さないのかという点も引っかかる。


 咲九は他人の行動を止めるような人間では無い。

 止めるとしたら、それは咲九に関わる秘密を洩らされそうになった時と、相手が危険と判断した時だけ。


 つまりは、敵は相当な強敵だから頃合いを見計らっているとも考えられなくも無い。

 もしかしたら、山田も同じ考えなのではないか、と私は思う。


 そんな山田はふんっと鼻で笑っていた。


「別にウチやないからえぇけどな」


 要らぬお世話です、と内心では思いながらも失笑を返して、私はその場を後にすることにした。


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