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064 ☈ 能力大会・建て前と現実④

「何だ? アイツらは……」


 あまりに驚き過ぎて立ち上がっていた私の一言に、今も尚座り続ける咲九は失笑を返している。


 ちなみに観客席の様子は会場側からでも見られるようモニターで拡大してあり、白い毛むくじゃらの2人はそのモニターの隅に映し出されていた。


「 "白雲運河" という、超能力者を取り締まる、国際で認定された正式な裁判官よ」


 親父から聞いたことはあったが、それを目の当たりにしたのは今回が初。


「そんな奴らが目を点けていたってことは …… アイツら、かなり危なっかしい状態だったってことか?」

「まぁ、そんなところかな?」


 モニターには今も真っ黒い空間の中でも対峙する2人が映されている。

 ただし、その2人とも相手が見えていないらしく、攻撃は全然当たっていないし、そもそも距離が大分離れている。


「でも、あの4人が結界の中に入った時点で、私の今の結界がかなり脆くなるわね」


 あっさりと言い切った咲九に私は唖然としてしまう。


「何だって?」

「大丈夫、その為の遠音だから」

「…… オレに何をさせようと?」

「遠音は何もしなくて良いの」


 そう答えた咲九は私に座れと手で合図している。

 だからその通りに座れば、咲九は何故か私の手を握って来た。


 その瞬間、自分の目が凄く熱くなったことに気付く。


「あ、あつ ……」


 すぐに目が金色に変化したのだと解ったが、咲九はこのことに関してはそれ以上、何も言わずに私と同じ金色の目で私を見つめている。


「大丈夫 …… 問題は魔法石だけだから」

「それ、かなり大きな問題じゃぁ ……?」

「うん。でも、大丈夫」


 すると、何故か部屋にあった咲九の結界が消えた。


「遠音の力で、直接転送すれば良いだけだから」

「…… どういうことだよ?」

「個々には固有能力があるの」


 咲九はそう言って残りの右手で空中に文字を描く。

 描かれた文字は金色に輝いて空中に残っている。


「遠音の固有能力は物を転送すること。だけど、遠音の転送先はどこに届くか解らない。代わりに、会場の魔法石にはここの転送元が記されている。今までは私の強化の固有能力を利用して、この部屋の転送の力をも借りて強力な結界をそのまま転送していたのだけど、それを遠音の力に任せることで、私は結界の強化のみに集中出来るということよ」

「つまり、お前がこうして手を繋いでいれば、オレの固有能力?が使えると」

「そういうこと。私の効果範囲は皆よりもかなり狭いのよね」


 咲九はそう答えながらも結界を厚めにしているらしい。

 その度に私の目が凄く熱くなる。


「咲九 …… 何か、キツイ ……」

「負担がかかっているからでしょうね。軽減させてあげたいけど、私もかなり手一杯なの。でも、これ以上は強くしないから …… 耐えて」


 私は黙って目を閉じた。


 今までずっと、色んなことに耐えてきたことを思い出す。

 それらを思い返して自分を励ました。


 そう――私だってやれば出来る。

 ただ、その方法を知らないだけ。



『知らない訳じゃない』



 不意にそんな声が心の中から聴こえた、気がした。

 私は耳を傾ける。



『君はその自分の核の使い方を知っているはずだよ? それを知らないと思い込んでいるだけ。本当は今だって、彼女の力に頼らなくても自分の力だけで転送することは出来るのに。君は彼女に少し頼り過ぎて居ないかい?』



 確かに …… 何て、珍しく素直に思っていた。


 私は咲九を頼り過ぎているのかもしれない。

 咲九はいつだって私には優しい。優しく私を導いてくれている。


 だけど、同時に私は咲九無しでは何も出来ない。

 今だって、咲九の力を通じて自分の力を使っていることには気付いていた。

 だけど、その方法を知らない …… そう思っていた。


 だとしたら、どうして咲九が私の力を使えるというのか。

 単に引き出しているだけで、本来は私自身がその使い方を知っているのではないか。



『そう。君は知っている。確かに彼女は凄いよ。でもそれは、裏を返せば彼女は何かを犠牲にしているという証拠でもある。そんな彼女に頼りっぱなしで良いのかい?』



 何かを犠牲にしているらしい咲九に、私は何もしてあげてはいない。与えられるだけ貰っている。


 このままでは、咲九は死んでしまうのではないか。


 ―― 咲九が、死ぬ?


 どうしてそう思ったのか、私には解らなかった。

 だけど今、何故か物凄く明確に、このまま私が何もしなければ咲九が死ぬと感じた。


 ―― 咲九を殺してはいけない。


 不意に体が軽くなった。


 目をそっと開ければ、咲九が驚いた顔で私を見ている。


「オレが何もしなかったら、お前は死ぬのか?」


 何て酷い質問だと我ながらに思いつつも、訊ねずにはいられなかった。

 咲九はふぅと、どこか優しい顔になって口を開ける。


「そうね。自分が死ぬことは怖くないけど、遠音が何も知らないままだったら、少しは怖いかな?」


 咲九は無知な私を残したくは無い、そう言っているようにしか聴こえなかった。


 だったら無知のままでいたいとも思ってしまう。

 無知のままだったら、咲九は消えないのではないかと。


「私は恐らく、遅くても1年後にはこの世の存在ではなくなると思うの」


 そう答えた咲九に私は素直に驚いている。


「もしこのまま遠音が何も知らなくても、という意味ね。私は残りわずかな寿命の中で、私が思い残さないように行動をしているだけなの」

「何か …… 病気なのか?」

「地界で言うなら病気みたいなモノね」


 聞いてはいけないことを聞いてしまったらしい。

 私は唖然とする。


「ま、待ってくれよ?! ってことはお前、あの森をオレに返そうと思ったのは、ばあちゃんの残した魔力が尽きそうというだけでは無くて、お前自身も死期が迫ったからってことなのか?!」

「うん、そうだよ?」


 咲九はあっさりと、でも不思議そうに答えていた。


「約束は約束だし、そもそも思い残して死んだ私がどうなるのか解らないもの」

「つまり、死の直前、悪鬼に憑依される可能性がある …… という意味で、か?」

「それだけじゃないけどね」


 そう答えた咲九は私の腕の上から軽く寄り掛かって来た。


「自分の父親を一刻も早く見つけ出さないといけないから」


『結界を張っている者よ』


 不意にそんな声が流れてきた。

 先程の白雲運河という者の声だと解るなり、私は警戒する。


 が、咲九は平然としている。

 気付けば、見ていない間にモニターは真っ暗でほぼ何も見えなくなってしまっていた。


『今から浄化と還元をする。結界もそれに応じて属性を変えてはくれないか?』

「律儀に教えてくれなくても解っているのになぁ」


 咲九はそう呟きながらも右手をくいっと捻っている。

 それだけで右手から結界の球体が空間に広がって、やがて私の力で転送されたことまで理解した。


『助かる』

「 "白雲運河" とかって奴は、お前のこと、知っているのか?」

「さぁ?」


 咲九は即答して、どうでも良いとばかりに右手で文字を描いて遊んでいる。

 金色の文字は5秒ほどすると消えて無くなってしまう。


「でもまぁ、知っていたところで私には手を出さないことだけは確かだよ」

「何で?」

「何も悪いことをしていないから?」


 そう答えた咲九は失笑する。


「この国は、何故か他の国よりも悪霊の数は少ないくせに、悪鬼の数は多いと言われているの。その原因を探るために派遣されているのが "白雲運河"。だから同じ国民とは限らないのよね」

「そうなのか …… にしたら、日本語が上手いような?」

「テレパシーって元々、言語は関係無いし」


 意味を考えてから、なるほど、と思った。

 テレパシーはあくまでも "想い"。心の中で思ったことを頭から発している電波のようなモノと思えば、確かに言語は関係ない。


「あれって文字になっている訳じゃないのか ……」

「うん。伝わって来た想いが私達の中で翻訳されているだけなの。そうね …… "想い" よりも "ジェスチャー" みたいなモノ、と言った方が解りやすい?」

「だな。しかし、そう考えると試験とか …… 答えを教え合えて楽だよなぁ」

「あ、それは無理だよ」


 あっさりと咲九が答えたものだから思わず、


「お前、やったことあんのかよ」


 何てツッコミを入れてしまった。

 咲九は嬉しそうに頷いている。


「最初は誰でもやるものじゃない? ちなみに無理と言ったのは、試験中にテレパシーを使ったら後日、何故か審査委員なる団体が学校に来て0点にするよう言われるらしいわ」

「うへ」

「まぁ、それでも忠告のみで初犯は採点してくれる先生も居るけど …… あまり宜しくないわよね」


 咲九はそう答えて失笑する。


「それに遠音が一番苦手にしている英語でも、英文はどんなに頑張っても無理ね。日本語訳されちゃうみたいで」

「あ …… 確かに」


 そうこうしている間にも、黒いモニターが薄らと状況を映しだし始めていた。


 片方は既に終了したらしく、大きな獣が1人を抱えている様が解った。


 が、もう1人はまだ交戦中らしい。

 しかし、そのくらいしか解らない。


 不安に思いつつも見つめるしかなかった。


「大丈夫よ」


 不意に咲九がそう呟いた。


「どちらも悪の属性が収束されているから、後はあの2人が堕転しないように見守るだけ。とはいっても、白雲運河や千尋では岸間さんの堕転を止めることは出来ないけど」

「…… じゃぁどうすんだよ?」

「この様子を見守っている子が居るじゃない?」


 咲九に問われて、私は客席を思い出す。


 そう言えば、宮本と一緒に居るはずの紗穂が客席には居なかった気がする。

 後は先程の試合で負けた山田。


 こういう状況に陥った岸間に真っ先に駆け付けるとしたら紗穂だろうと思った。


「しかし、大半が眠っちまってるのに ……」

「大丈夫。本谷さんも私達と同じだから」

「それは神様ってことか?」

「それ以外に何があるのよ?」


 咲九はそうニヤニヤとしながら答えていた。


昼食~この話しに至るまでは一気に上げちゃいたかったので更新も速かったのですが。

ちょっと一気に更新しすぎて疲れたのでペース落とします。


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