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060 ☉ 能力大会・後半2戦目

 会場が片付けられて、やっと次の試合が行われることになった。

 紫は担架で保健室に運ばれ、付き添いで黄は付いて行ってしまったらしい。


 紫のことを気にしながらも、私は山田と中央あたりで対峙している。


 やはり、山田は普段とは違う表情をしていた。

 いつもの眼鏡も外している。


『2人とも、聞こえる?』


 不意に如月の声がして周囲を見回したが、山田が私に首を横に振っていることに気付いた。

 そして山田が答える。


『聞こえるで』

『あんまり派手にやり合わないでよね。さっきの試合の所為で、結界を強化して転送していた魔法石が一部、ダメになっちゃったのよ。余分に持って来たけど、酷い場合はこの次の最終試合、結界無しになるからね?』

『そら難儀な話しやね』


 そう答えた山田は手の骨を鳴らしている。


『ウチが本気出したらどうなるか …… よう知っとるやろ?』

『知っているから声をかけているの。魔力暴走の連鎖だけは起こさないでよ?』

『何のことや?』 『どういうこと?』


 山田と私の声がほぼ同時だった。

 そして、山田とほぼ同時に気付く。


 つまりは、山田も本気を出すと魔力暴走をしやすい体質だということ。

 恐らくはこのことに山田も気付いたらしく、私を見ながら溜め息をついている。


 魔力暴走は連鎖しやすいらしい。こと、そういう体質の能力者が一緒に居るだけでも危険だと世界中の研究者が警鐘を鳴らしているが、日本ではまだ(そういう体質の能力者が少ないので)認められていなかった。

 しかし、私は何となく、連鎖しやすいことは過去の経験から気付いていた。


『そういうこと。だから今回、2人には運営側から特別な結界を施してあるみたいね。本気出して暴走したら気絶するようにされているから、そうなってしまったら相手が気絶に気付かない限り、誰も助けようがないのよ』

『相手を気遣いながら戦えっつーのは …… 難儀なこっちゃ』


 ずっと睨んでいた山田にも殺意は無いらしい、と解ったあたりで私も少し安堵した。

 でも、本気で当たって戦える相手なのか否かくらいは計りたい。


『そうね。でも現状を理解したでしょ? それで十分よ』


 如月がそう返答したかと思えば、そこに審判がやって来た。

 恐らく予備の審判なのか、少し緊張気味に私らを見ている。

 まして去年、壁を壊して審判に怪我を負わせた私が居る。


 何だか申し訳ない気持ちに襲われた。


「準備は宜しいですか?」


 その一言で私らは頷いた。

 もっとも、勝負は勝負。ここで負ける訳にはいかない。


 審判の合図に観客席が湧いている。


「それでは第二試合を開始します」


 こうして試合は始りを告げた。




 私は後方にジャンプして大きく退きながらも、その手に魔力を集めていた。

 しかし山田も同じ考えだったらしい、同じように手に魔力の弾を作っている。


 山田の作る弾が黒くドロドロしているのを見て憑依型の悪属性だと悟った私は、自分の魔力の炎の弾に密かに光属性を混ぜ込んだ。

 先に山田が弾を私に向けて放って来る。

 とりあえず自分の弾を放って牽制しつつも、私は更にその上空へと跳んだ。

 弾同士は丁度中央あたりでぶつかり、弾ける。

 が、私の真下に来ていた山田が舌打ちをしていることからも、どうやら弾は互いにダミーだったらしい。しかも、山田は空中戦を苦手にしているのか追ってはこない。

 故に、敢えて魔力を頭に集結させる。そして落ちる勢いで山田に頭突きを食らわしてやった。

 が、山田は解っていたらしく結界で防御している。

 …… 如月ほどではないものの、結構硬い結界らしい。私の方の頭がじんわりと痛かった。


 しかしながら、今ので私に1ポイント入る。

 この直後から30秒くらいはいくら頑張っても点にならないどころか、相手を傷つけたら即退場というルールなので互いに間合いをとる。


「チッ」


 山田は大きな舌打ちして体勢を整えている。


『本気出んように調整されてへん?』


 不意に山田の声がした。薄々気付いていたので私も返答する。


『私もそう思っていたけど …… やっぱりそう思う?』

『魔力を上手く集められへん。一部、逆流しとるし』

『如月の所為 …… なの?』

『私じゃないよー!』


 今にも泣きそうな如月の返事があったので、私らは思わず仰け反りそうになってしまっていた。


 審判が合図をしてポイントが入るようになったことを知らせてくれる。

 とりあえず、攻撃が届く程度の間合いを詰めることにする。


『相手の本気と試合の邪魔はしない …… それがウチとの約束やろ?』

『だから私じゃないってば。でも逆流していたのは、前の試合の術の余韻が残っていたから …… だと思う』

『黄の ……?』


 確かにオーラを奪う術を使っていた。逆流する魔力は足を伝って地面に流れ出ていることにも気付いている。

 が、黄は地面を通してオーラを奪っていた訳ではない。


『咲九が黙るっつーことは、紫の術やな』


 山田はそう答えつつ、魔力の弾を作っている。

 今度のは濃いことから、痛い奴だとすぐに気付いた。


 だから私も弾を相殺する為の弾を作り出す。

 が、先に作っていた山田の方が大きかった。


「次のは痛いで!」


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