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055 ▲ 能力大会・昼食②

 羽生 黄とは同じ図書委員だったので、自己紹介の時にすぐ、名前からして紫の妹なのだと感じていた。

 今まで紫に妹が居たことを知らなかっただけに驚いたが、何分、紫との接点は漫研くらいだったので、今1年生の彼女を知らなくても仕方なかったのかもしれない。


 あまり長くは無い三つ編みで、赤縁眼鏡をかけている。

 凄く大人しい子らしく、委員会の活動中でも皆から孤立して黙々と作業を行っていた。

 嫌煙されている訳では無さそうなので、恐らくグループの拘束を嫌う紫と同じタイプなのだろうとは思っていた。


「そいえば、黄は結果、どうだったん?」


 不意に紫が訊ねれば、すっかり忘れていたのか黄は首を傾げていた。

 が、自力で気付いて答える。


「勝ったよ」

「…… それはAグループで、ということで良いんだよね?」

「うん」


 淡々と答えた黄は、少し眠そうに欠伸をしていた。

 しばらく間が空いてから紫が何かに気付く。


「待て待て待てーぃ!! つまりそれは、次にウチと戦うってことやないかーぃ?!」


 午前中は各グループの中でのトップ争いだった。

 そして午後は、そのグループのトップ同士が戦うことになっている。


 AグループのトップがBグループのトップと、CグループのトップがDグループのトップと。

 即ち、Aの黄とBの紫、Cの山田さんとDの香穂里と勝負をすることになる。


 先程までのルールとは違い、5ポイント差が出た時点で多い方が勝つ。ただし時間制限が倍の20分間になり、ポイントの上限は30という決まりが追加される。そのため、大半は先に30ポイントを取った方か、20分間でポイントを多く取った方が勝つことになる。

 人数の関係で去年とはルールが異なっていた。


「うん」


 黄は最初から解っていたらしく、息切れをしている紫を不思議そうに眺めていた。

 一方で、戦うことになるのかと山田さんと香穂里が既に小さな火花を散らしている。


「姉妹の勝負と馬鹿力の勝負、か」


 遠音の呟きでほぼ同時に4人が遠音を睨みつけていた。

 それを如月さんが見ていて失笑している。


「花菜子、本気出さないでね?」

「そ、そうだよ! 去年、香穂里、本気出して会場の壁、破壊しちゃったデショ?!」


 如月さんの一言で思い出して言ったものの、まぁもう本人達は本気を出すつもりのようで。


『2人の本気 …… 結界が壊れないか心配だ ……』


 迷わず如月さんにそう言ってみた。

 と、如月さんは解りやすく溜め息をついている。


『結界どころか学校を壊されそうで怖いわね』


 ギョッとして目を丸くさせていれば、そんな私に如月さんは失笑を返していた。


『大丈夫よ。元々、花菜子が参加をするという時点で、そういう覚悟で来ているのだから』

『怖いなぁ』

『私からしてみれば、観客の方が恐怖しないか心配だわ』


 そう答えた如月さんは遠音をちらりと見ている。


『まぁ、いざという時は …… いや、それが来ないことを願うけど …… 遠音の力を借りるわよ』

『遠音の?』


 そう言われて見れば、遠音のオーラは朝よりも大分落ち着いたらしく、綺麗な金色を放っていた。

 先日までは白色だったことを思えば、遠音の中で何らかの体質の変化が起きたとしか思えない。


 もっとも、変化が起きてすぐにオーラの色が変わることなんてあり得るのか …… 私には解らなかったが。


「なんだかなー」


 不意に紫がそう言った。私達は揃って紫を見る。


「黄と戦うくらいなら降参したいわー」

「降参したら許さない」


 黄はそう答えて紫を軽く睨んでいた。

 紫は溜め息をついている。


「いやさ、だとしても、本気は出しにくいわ ……」


 そう言った紫の直後に校内放送を伝えるチャイムが鳴る。

 食堂に居た誰もが一斉にスピーカーを向いて、放送の内容を待っていた。




 各グループのトップ同士の勝負の会場は、女子校側ではなく男子校側に近い、中央校舎傍の巨大な競技場で行われることになっている。

 が、去年、香穂里がその会場で結界ごと壁を破壊した。


 その影響なのか、今年は去年よりも結界師が倍以上に派遣されているようだった。

 選手の4人が先に去って、残された私、千尋、遠音、如月さんの4人で会場に向かう。


 ちなみに、学園生活を普通に送っているだけなら、今日以外で中央校舎に行くことはまず無いとは先輩から聞いている。

 中央校舎には会議室といくつかの教室があって、そこでは小学生向けの模擬授業や学校案内などが開催されたり、学園に通う生徒の保護者と先生との間で進路相談が行われたり、学外の教育者の講師を呼んで学内の生徒向けに授業が開かれたりするくらいらしい。


 女子校側からその中央校舎に向かう長い階段は急勾配なので、高所恐怖症らしい千尋と遠音が怖々と足を進めていた。


 ちなみにこの階段を使う方法以外にも、(20分ほど時間ロスになるが)生徒であれば女子校側の校内のエレベーターを利用して外側から入り直す方法と、大行列が出来ている階段脇のエレベーターを使う方法があった。

 が、階段脇のエレベーターは景観を見せる為に設置されたので、1回見送ってから次が乗るまでに約10分かかる。


 その大行列に並ぶよりは、大昔から設置されているらしいこの階段を使った方が早いという私の判断だった。


「良い眺めなんだろうけどねー」


 千尋はそう言って溜め息をつく。


「この階段 …… どのくらいかかるの?」

「下りなら10分くらいデショ。上ると30分かかるからオススメはしないが ……」

「そうでしょうね」


 如月さんはそう答えつつも、ポンポンと素早く降りて行って途中のスペースに身を置いて待っている。

 流石に、私も如月さんのようには降りれそうには無かった。


「平然と降りられる如月さんは異常デショ!」

「ん?」


 如月さんは不思議そうに首を傾げていた。

 遠音が失笑している。


「アイツは異常と思わないから解らないんだろうな ……」

「あー、まぁ、咲九は空、飛べるし」


 思い出したかのように千尋まで失笑していた。

 私が驚いて如月さんに言う。


「飛べるなら飛んで欲しいデショ!」


 素直に見てみたくて言ったのだったが、これには千尋が即答する。


「燃費が悪効率だから滅多に飛ばないみたいだけどね」

「…… そうね。今だと、私が何も出来ずに2人によって学校が破壊されるわね」


 どちらかと言えば2人に対して呆れた様子で如月さんは答えていた気がした。


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