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051 ▲ 能力大会・前半戦②

 やっと学校に着いたかと思えば、それだけで遠音は既にバテてしまっていた。


 なので会場には行かずに、いつでも涼しくされている図書館に足を運んだ。

 ここは外から上空の風を上手く取り込んで設計されているので、応援と熱気で熱いことが予想出来る会場よりは涼しいだろうと思ったため。


 もっとも、イベントごとがある日にわざわざ図書館に来る生徒は居ない。

 私達を除けば、奥で作業中の司書さんくらいしかいなかった。


「大丈夫かー?」


 私が覗き込む中、やっと落ち着いて来たらしい遠音が少しだけ顔を上げてくれた。

 が、遠音の顔の赤さは取れていない。すぐにテーブルにうつ伏せになってしまう。


「うー ……」

「まぁ、仕方ないわよね」


 そう言いながらも、如月さんが私の為の水入り紙コップを置いてくれた。

 少し居なくなっていたのは、どうやら食堂から拝借してきたためらしい。


 手で有難うと示してから少し飲む。

 冷たい水が喉を通って行った。


 そういう如月さんの2つ目の紙コップは遠音の為に持って来たらしい。


 椅子に座った如月さんは、そのまま遠音の背中を擦った。

 そんな如月さんが、遠音のオーラを調整しているのが見える。


 だから私は失笑してしまっていた。


『事情は良く解らないが、如月さんは何か知っているということで間違いないか?』


 遠音のオーラは白色だったはずなのに、今日は黄色のように感じていた。

 だからこそ不安にも思っていたのだが、如月さんがゆっくり頷いたことで理解した。


 恐らくは、旅行後に如月さんから少しだけ聞いていた、黒い結界時の遠音の魔力暴走が私と出会う前に起きたのだろうと勝手に解釈する。


「そういう調子だと、しばらく動けなさそうデショ ……」

「見に行きたい所があるなら行っちゃって良いよ。看病は私がするから」


 如月さんの発言で私はピクリと反応してしまったものの、それでは如月さんに悪い。

 しかし、如月さんは何故か頭を横に軽く振っていた。


「岸間さんが気になるのでしょ?」

「うっ ……」


 図星だっただけに胸が痛い。

 凄く痛い。


 でも、本音は香穂里よりも千尋がどう戦うのか気になっていた。


 水と言えば聞こえは良いが、正直なところ他の属性も利用しないとあまり強くはない。

 前に水の属性を持っていた友達が言っていたのだから間違いないと思う。

 修学旅行のあの時も香穂里に愚痴っていたくらいだし。


「良いよ、大丈夫。それに私が心配なのは後半の花菜子だけだから、今は特に目ぼしいことも無いしね」

「本当に、良いの ……?」

「咲九が良いって言ってるんだ、行けよ」


 遠音がうつ伏せ状態のまま答えたので、少しだけイラッとした。

 が、それを如月さんが手で宥めている。


 —— 元はと言えば遠音の所為だろう?!


「心配して損したデショ」


 少し皮肉を込めて言葉を吐き捨て、私は独りで闘技場に向かうことにした。




 闘技場に入ってすぐに、観客の歓声に熱が込められていることに気付いた。

 2階席に向かっていた私は、速足のまま通路の突き当りまで来て下を覗き込む。


 すると、紅白の巫女姿の千尋と、体操着の紫が間合いを詰めあっている所だった。


 先に動き出したのは千尋で、紫の真っ向から拳を振り上げている。

 しかし、紫は余裕の表情で千尋の脇に飛び出ると、そのまま左手で手刀を作って千尋の首の後ろを狙う。

 が、そこには水の結界があったらしく、千尋は紫の攻撃を間一髪で真下に避けていた。

 しかし、下にはそれ以上に逃げ場は無い。

 千尋は咄嗟に作った水の結界がクッションになったお陰で紫の手刀の攻撃ダメージを和らげていたものの、やはり痛むらしい。

 上手く逃げ出して間合いを取りながらも首後ろを擦っていた。

 紫は余裕そうに口笛を吹いているように見える(歓声で良く解らないが)。


 紫は運動神経が良いことは、体育祭で学年代表のリレー選手をやっていることからも良く解っていた。何度も陸上部の勧誘を受けながらも断っている。

 最初は私や遠音と同じ漫研に居たものの、花子が遠音に付き纏うようになって早々に退部した。

 それ以降はどの部活にも所属していない。


 もっとも、漫研的に紫は "描く" より "読む専門" なので然程の打撃にはなっていない。


 ただし、前に円から聞いた話では紫の将来の夢は小説家らしい。

 だから今の漫研では漫画好きばかりだったので物足りなかったのだろうと私は思っているし、本人もそんなふうに言っていた。


 そんな紫は、去年の大会の2位だった。

 香穂里とのその勝負はほぼ互角で、互いに一歩も譲らない攻防戦を繰り広げていた。


 一応、時間制限有りにポイント制なので、先に5ポイント取った方が勝つルールになっている。

 しかし、その審判があまりの迫力に圧倒されて審判を忘れてしまうほどだった。

 後にビデオ確認をして、先に5ポイントを取っていたのが香穂里だったから勝てたものの、その時間内にポイントを多く稼いでいたのは紫だったらしい。


 ちなみにこの時、紫はグループの誰にも参加することを伝えていなかったようで、後から紫が参加していたことを耳にした円と瞳は、一時的に紫のことを『裏切り者』と呼んでいた。

 とはいえ、今年も円と瞳は仕事があって参加はしていないようだが。


 もっとも、紫は円達のグループであっても、元から孤立しているような立場を維持している。

 故に円達のグループとは違って、あの遠音でも話しかけやすい方ではあるらしい。


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