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さくらは善か悪か(仮)・輪廻篇  作者: 葉月雷音
休暇の過ごし方
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047 ⛩ 休暇の過ごし方⑨

 撮影が終わった後、キサキさんの片付けを手伝いながらも、最近の話題で盛り上がっていた。


 ある漫画家の海外取材の光景を密着取材していたことや、前回の怪盗ホーリーのある写真が高額で買い取られた後に国連から抹消するよう警告を受けたことや、吉村 洋(よしむらひろし) 首相の海外訪問が取り消された理由がこの国国内の治安が悪い為らしいことなど、まだ公にされていないキサキさんの記者らしい話題が特に印象に残った。


「まぁ、私は記者だし、国連がダメだと言えば公に出来ないけど、大半がお金で解決されてしまうのだからどうしようもないのよね。確かにお給料代わりに裏金は貰っちゃったけど、良いのかなぁとか思う面もあるし ……」


 キサキさんがこういう話をしてくれるのは、私の家系が前の政権の時の首相の分家だったからだと思う。

 とはいえ、既に本家とは違った方面で名を馳せているためか、他の分家と比べて放任されつつある。


 だから直接的には関与していないまでも、そのような政治の秘密裏な話しは耳に入って来ては居る。

 それでも、現在はキサキさんほど詳しくは無かった。


「怪盗ホーリーの写真だって、そんなに鮮明では無かったと思うんだけどなぁ」


 私は怪盗ホーリーが誰かを知っている。

 だからキサキさんの呟きに返答することは出来なかった。




 それは、私が初めて神子を務めた夏祭りが終わった数週間後の夜のことだった。


「侵入者がいるぞ!!」


 神社中を父の弟子の1人がそう叫んで駆けずり回っていた。


 驚いた私が廊下に出れば、神社の入り口の方面に、当時は何十人も居た父の弟子達が一斉に走って行くのが見えた。


 恐怖で足が震えているものの、私もその方面に行こうとした。

 が、いつの間にか背後に居た父に引き止められる。


「千尋は宝物庫に居なさい」

「お父さん ……?」

「狙いが解らない以上は、お前を危険な目には合わせたくないんだ。お母さんも心配するだろう?」


 私の母は病弱だった。

 しかし、神社を含んだ区域に張られている古代からの結界にはヒビがあり、その結界を守れるくらいの大きな結界を作れるのは母しか居なかったので、その命が尽きるまで、又は次の結界を守れる世代が生まれるまで、母は望んで神社のある部屋に閉じ籠っている。


 そのため、私は母をあまり知らずに育った。

 それでも、母のためにも結界を守れるようになろうと修行を頑張って来たつもりではいたものの、未だに母以上の結界は作れないでいる。


 父の言葉は、すなわち邪魔だと言われているのだと思って悔しかった。


 それでも、母を心配させられまいと思って宝物庫に行った。


 宝物庫には様々な神器が眠っていたので、私はその隙間に納まって恐怖心を和らげることにした。



 しばらくして、外から掛け声が聴こえるようになった。

 弟子達の駆けずり回る足音が響く。



 またしばらくして、暗かった宝物庫に光が入って来た。


「…… ん?」


 なお、宝物庫に天井窓などは無い。


 私が上を向けば、宝物庫の屋根に巨大な円形の穴が空いていた。


 私が無意識に張っていた結界のお陰で助かったものの、もし無かったら屋根の残骸が頭上に降り注いでいただろうと思われた。


 そして、その穴から指し込む光り輝く満月の明かりを背にして小柄な人が降りて来る。

 小柄な侵入者は着地して、その顔に付けていた赤いお面を横にずらしていた。


 外では父の怒号が聴こえる。


『さて …… 目当ての "白金小次郎" はどれだろう?』


 テレパシーでの独り言。

 しかしそのことで、小柄な侵入者が魔力のコントロールが苦手なのだと悟った。


 そして、私はすぐ脇にあった刀の神器 "白金小次郎" をバレないように抱え込んだ。


 しかし、その微妙な動きで侵入者は気付いたらしい。

 瓦礫の砂煙が止む前に嫌な視線を感じてしまった。


 侵入者がこちらに近づいて来ることが解ったので、私はすぐさま軽く立ち上がり、後方に退いて瓦礫の上にしゃがむ。


 砂煙が顔のあたりまで止んだ時、私はその侵入者の顔をしっかりと見てしまっていた。


「チッ」


 侵入者、もとい同じくらいの少女は赤いお面を戻した。

 そして手を私に翳す。


『その神器を頂戴しに来た! 命惜しければ神器を寄こせ!』

「…… いや」


 私はそう答えてしっかりと抱え込む。


「何で貴方は神器が欲しいの?」

『神器は悪い武器だから封印しなければならない!』

「それは使う人間の所為であって神器の所為じゃないもん!」


 私はそう反論して更にギュッと抱え込んだ。


 すると、少女は何を思ったのか両手に火を取り出していた。


 そのまま突っ込まれれば、瓦礫に火が点いて私は火に囲まれてしまうだろう。

 しかし、私にも対策はあった。だから水の結界を作る。


『嘘をつくな!』


 少女はそう言って突っ込んで来た。


 恐怖で私は目を閉じる。

 そして強く強く、水の結界が硬くなるように願っていた。


 そんな時に宝物庫の巨大な扉が開かれる。


 驚いて目を開ければ、すぐ目の前まで迫っていた少女は弟子達によって取り押さえられていた。


 少女は懸命に暴れているが、父の持って来た注連縄によって魔力を封印されてしまった少女は、もはやただの少女に過ぎなかった。

 お面は完全に外され、その整った顔立ちに一部の弟子の息を飲んだ音がこちらにも聞こえていた。



 国連への情報提供者として登録していた父は、そのままその少女を国連に引き渡そうと思っていたらしい。

 ところが、その少女の身分を知った国連は、少女の記憶を消して少女を解放するように言っただけだったという。


 その理由を知りたくなった父は、知り合いの情報屋に訊ねた。


 その情報屋の話しによれば、怪盗ホーリーが行っていることは神器を封印するだけで特に問題が無いということと、その少女の家庭事情のことだけしか言えないという。


 が、その後日に国連の使者だった白雲運河が神社を訪ねていた。

 居間に通された白雲運河の話しに、一部の弟子達と共に聞き耳を立てながら外の落ち葉掃除をする。


『彼女の名前は "岸間 香穂里" と言い、海外では有名な魔術師の岸間一族の子女。

 しかしながら、彼女は幼い頃から父親に薬物を与えられた影響で意識が混濁することがあり、もしも今の彼女を制止させたらどういう行動を起こすか解らないので、最高の危険度5で私達が観察をしていた』


 と、意図もあっさり国連の秘密事項を教えてくれた。


 しかも、白雲運河であれば1対1でテレパシーを使えたらしいが、それを使わずに皆にも聞こえるように話しをしてくれたのは、彼女の顔を皆が見てしまった所為だとは、後から父に聞かされたことだった。


『しかしながら、私達も彼女を常に観察している訳にはいかない。

 そこである程度の情報を提供する代わりに、首相の分家であるこの宮本神社の一家に彼女の観察員として行動して欲しい。もちろん、危険だと判断したら呼んでもらえればすぐに駆け付ける。報酬は国連から出る。

 悪い話では無いと思うのだが、少し考えては貰えないだろうか』


 そう言ってその日は帰って行ってしまった。



 結果的にはその要望に応じることになり、怪盗ホーリーが予告を出す度に弟子達が振り回されることになる。

 あれから神社を狙うことも無かったので、私には無関係に思えていた。



 しかし、彼女の本名だけは私の頭からは離れなかった。


 だから統合され、同じクラスになった時、正直驚きを隠せなかった。


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