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032 ▲ 修学旅行・事後①

 朝日が昇り始めても、庭の穴や建物の壁などの修復はゆっくりと進んでいた。

 日を反射して数多の妖精達が織り成す光の庭は一段と輝きを増す。


 そんな光景をベンチに座って眺めていた私は、隣に座る香穂里と、更にその隣に座る千尋に声をかけた。


「この光景を納められたら良かったんだけどなぁ ……」


 持って来た携帯のカメラ機能で撮ろうとしたものの、カメラには一切、妖精のその光景が映されてはいなかった。

 感動的で素晴らしい光景ではあったが、どうやらこのことは脳裏に焼き付けるしか無いらしい。


「妖精や精霊の存在は知っていたけど、呼び掛けられるとは知らなかったよね」


 香穂里はそう答えて千尋を見たが、千尋は全くこちらを見てはいなかった。

 しかし、声は聞いていたらしい。


「前の学校の授業で教わったけど、超能力者の間でも声をかけられる人は限られていたみたい。私のクラスでも3人しか成功しなかったし、その後でどんなに頑張っても1人しか増えなかったから。それに、声をかけられると言っても指示は限定的。単純なことしか理解を示してくれないみたい」


 千尋はそう答えてこちらを向いた。


「咲九曰く、私が水神だから水の属性の妖精がすぐに理解をしてくれたみたいだけど」

「如月さんって本当に凄いデショ」


 私はそう答えながらも右手に目線を落とした。

 そこには既に瘡蓋になった傷跡が残されている。


 妖精の修復作業が始まってすぐに、如月さんは1人ずつ怪我の治療をしてくれた。


 真っ先に治療されたのは私で、傷口付近に結界を張ったかと思えば急な激痛が走ったために振り払ってしまったものの、如月さんは満足した様子で次の千尋に向かっていた。

 何をされたのか解らなくて手を見れば、先程まで手を伝って地に落ちていた血が嘘のように止まっていて、しかも傷口は一瞬の激痛だけで瘡蓋までに治されていた。


「確かに咲九は凄いけど、風見さんはもっと凄かった」


 千尋の一言に香穂里はゆっくりと頷いていた。


「体が弱いから体育に出ないのだと思っていたけど、走ったり、跳んだり …… その行動でも自然と魔力を使ってしまうから参加出来なかったのかもね」

「なるほど …… 確かに、前の学校にそういう体質の人もいたわ。咲九もそれに似たような体質、と言っていたし」


 千尋も納得したらしく、答えながら頷いていた。

 が、2人はほぼ同時に溜め息をついている。


「実践不足 …… か」

「知識不足もあるかも、ね」


 千尋の言葉に答えた香穂里が再度、溜め息をつく。

 これには私も失笑するしかない。


「確かにその両方かもしれない …… だけど、あまりに私達の持っている属性や術などの情報が足りなさ過ぎているのだと思う。風見さんが強いのは、きっとそれらの総合的な情報を持っているからじゃないか?」

「基礎が出来なきゃ応用も出来ない、とは先生が授業で良く使う言葉だけど、」

「確かに無いかもしれないわね」


 失笑した千尋と香穂里がそれぞれ答え、そして3人揃って仲良く溜め息をつく。


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