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028 ☈ 修学旅行・3日目⑥

 風見がぶっ倒れ、驚いて寄って来てくれた美川先生に事情を話して引き渡した。


 そのまま様子を伺うに、どうやら小林らは "愚者の塔" 近くで(制服だったから普通に旅行者だとバレて)金を出すよう脅迫され、その恐怖で失神してしまったらしい。その地域で飲食店を経営しているという男性が店内に救助してくれていたらしく、大事には至らなかったとか。

 しかし、そこに居たのは小林、猪塚、小池の3人だけで2組の他の2人が見当たらず、また男性曰くその時には既に3人しか居なかった、ということだった。


 如月は、"マショウ" の影響で気分を悪くした宮本と一緒にその3人を近くの警官に引き渡し、(如月と一緒に塔に行った警官曰く)地元の警官でも近寄らないらしい塔の中まで単独で足を伸ばしたが、そちらには誰も居なかったらしい。

 何事も無ければ集合時間までには一定の場所に引き返すという外に配置された警官との約束だったから、そのまま如月らは戻って来たのだと言う。


 班員で唯一、私だけがバスの中に居たのは、単純に超能力者だと認識されていなかったからだと思われた。

 バスに帰還していた私らと麻生らの中で橋本先生が呼び出したのは岸間と紗穂だけだったから間違いないと思う。


 もっとも、紗穂同様、私自身も小林がどうなろうと興味は無かったが。


『多分ね、』


 不意に如月の声がした。

 私が如月を見れば、如月も私を見てきていた。


『塔の上に連れ去られたのだと思う。塔の入ってすぐのあたりに鞄が残されていたのに、1階には誰の気配も感じられなかったから』

「(…… それってかなりヤバイんじゃ ……)」


 心が読める如月だから声は届くと思っていた。

 だが、距離が開いているためか、それとも普段の外側の結界を戻しているためか。

 どちらにしても、如月には届いていないようだった。


『本当は、危険を承知で2階に上がろうとしたら喧嘩を吹っ掛けられてね。それ以上、先には進めなかったの。まぁ、これを伝えちゃうと余計に怒られるから止めておくけど』


 そう答えた如月は橋本先生に怒られているらしい。

 が、呆れていた警官によってまぁまぁ、どうどうと言われているような気がした。


 そんな中、宮本がやっと立ち上がれるようになったらしい。

 保険医の居るワゴン車に風見を運んでいた美川先生が、戻って来るなり今度は宮本を気遣って支えようとしていた。


 近くで見る宮本は顔が真っ青で、私は何とも言えない気分になる。


『 "マショウ" は魔術の "魔" に瘴気の "瘴" と書くの』


 また不意に如月の言葉が聴こえた。

 今度はこっちすら向いていない。器用だな。


『魔瘴に慣れていないと気分を悪くするけど、それだけね。

 魔瘴は壁型の安易な結界で簡単に防御出来るけど、千尋はそういう結界に慣れていないから、走りに集中して魔力を変に消費し過ぎちゃったことも影響しているのよ。

 ただ、それをいちいち一般人に説明するのは面倒だから』


 宮本は美川先生に支えられるまま保険医の車に運ばれていた。

 一方で、警官は小林らが居る病院名を橋本先生に伝えているようだった。




 バスはホテルに向かうことになった。

 この後に予定していた見学は全て無しになる。


 無論、そのことを含めてバスの中では美川先生が事情を説明してくれていたが、詳細までは言われていない。


 そのためか、如月には所謂テレパシーというモノなのだろうか。

 沢山の質問の声が飛んで来ていた。


 が、如月は先生の質問に少しプラスしたような必要最小限のことしか返答していなかった。

 とはいえ、恐らく麻生と来生には如月からきちんと説明したのか、珍しくその2人から質問されるようなことは無かった。


 ホテルでは各班に部屋が割り振られ、班毎に部屋で待機するようにと言われた。

 珍しいことに、しばらく黙っていた岸間が如月を見て口を開く。


「何があったのか、教えてもらえない?」


 如月は頷いてから、何故かテレパシーで私らに詳細を話してくれた。


 内容は私が知ったこととほぼ同じ。

 それにプラスして、”愚者の塔" の中の雰囲気を伝えていた。

 が、これに興味を示したのは本谷だけで、私を含め岸間もあまり興味は無かった様子。


『で? 何でわざわざテレパシーなの?』


 岸間の質問に如月はあっさり答える。


『この間のホテルと違って壁が薄いから、隣の班に聞かれても困るからね。私はあまりこのことを公にしたくないの。

 確かに私は千尋 …… 宮本さんに頼まれて助けに行ったけど、私が "愚者の塔" に行ったことがバレたら、私の保護者をしてくれている神主さんを心配させてしまうから』


『聞いて良いか解らないけど、本当の親 …… ではないの?』


『うん。母親はたまに顔を見に来てくれるけど、父親は行方不明。幼い頃の私、体が弱くて神主さんが作る結界の聖域からあまり出られなくて。

 今は出られるようになったけど、もう何十年も離れて暮らしていたのよ? 今更、顔を合わして暮らせると思う?』


 如月はそう答え、私らの表情を見て失笑していた。


『その行方不明の父親を探しつつ、お金が必要になったから、私には不要な情報を売る商売を始めて。ただ、情報屋としては半人前でね。私独りじゃ何も出来ないから私と弟を含めた3人で営んでいるわ』

『3人 ……』

『今頃、学園に残っている1人が記事を消してくれていると思う』


 そう答えた如月に岸間が目を丸くしていた。

 まさか、如月ではない見ず知らずの相手が動いているとは思っていなかったらしい。


 そういう私は、何となく如月が動く訳ではないことを知っていた。


 良く考えてみれば解ること ―― この旅行中に決着をつけようとしている麻生らが、この場にその記事の原稿を持って来ているとは思えない。

 となれば、データ自体はパソコンがある自宅か学園にあるはず。


 如月の能力を使えば学園に戻れそうではあるものの、流石の如月でも時間はかかるだろう。しかも、恐らく麻生らは如月をしっかりと監視していると思う。

 が、如月はそれを解った上で引き受けた。

 となれば、如月と内通している誰か違う奴が処理をすることになる。


『信頼している仲間だから頼んだの。例え記事の内容を読んだとしても、私以外には漏らさないでしょうね』

『あ ……』


 岸間の声とほぼ同時に紗穂も素直に驚いていたようだった。

 この2人は、如月に記事が読まれるとは思ってもいなかったらしい。


「(まぁ、そういうことだよなぁ)」

『ところで、記事の情報はどこから漏れたのか …… 情報屋だったら解る?』


 岸間の質問に如月は頭を傾げていた。


 が、やがて答えを出す。


『情報屋の数は多いからなぁ。それに、その記事の内容にも依るから何とも』

『そう ……』

『でも、もしも仲間が記事を読んでしまっていたら、その情報の対価として、心当たりがあったら心当たりを、無くてもある程度の情報を答えてあげる。普段の私なら読まないのだけど、普通に読んでしまいそうな仲間だし』


「…… もしかして、弟?」


 岸間の口での質問に如月は驚いていたようだった。


「あ、うん。何で解ったの?」

「いや、何となく。でも、何だか解らないけど弟の行動って解りやすいよね ……!」

「そういう姉の行動も解りやすいデショ」


 やっと話せた!とばかりに紗穂も口を開いていた。

 そして話題は兄弟姉妹のことになる。


 …… 残念ながら兄弟が居ない私には全く解らなかったが。


リアタイで劇場版のTV版を見ちゃってました。

日付が変わったら、この続きも編集して投稿する予定です。

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