247 ▲ vs.母親
育ての母親、里子さん。
全てを知った上で優しく私を迎い入れてくれた人。
――でも、今は、
無言の里子さんが私に襲い掛かってくる。
その威力は学園の境界や黒い仮面の比ではない。
また、円や瞳とも異なる手法――忍術に近い飛び道具で翻弄される。
動きを封じられて、時には逃げる方向に罠を設置されて。
――今は、敵だ。
頭では、解っていた。
でも、里子さんを傷付けることは、私には出来なかった。
呼び掛けるも、里子さんが答えてくれることはない。
黙々と、恐らくは命じられるがままに、私に攻撃を仕掛けてくる。
結界で和らげるものの、千尋ほど強力ではない結界では物理攻撃には極端に弱い。
また蔦で拘束しようにも、速さ負けする私では追い詰めることも出来なくて……。
心も体も、もうボロボロだった。
何日経ったのか、それすら解らない。
もしかしたら、まだ数時間しか経っていないのかも。
それでも、里子さんに攻撃する気力はない。
むしろ、ボロボロにされたせいでその魔力さえも消耗しきっていた。
里子さんからの、強力な魔弾が放たれる。
目で追っていて、解っていたはずなのに、避けきることは出来なかった。
だが、偶然にも当たった箇所にはポケットがあり、布が破れた程度で済む。
その破れた場所から遠音の携帯がポロリと落ちた。
カシャンという軽そうな音と共に地面に不時着する。
「……遠音……?」
遠音が私を守ってくれた、ように思えた。
遠音の携帯には微弱な結界が張られてある。
それは私のモノでも、香穂里のモノでもなかった。
その結界によって携帯も、私も守られたのだと知った。
そして同時に遠音のことを思い出す。
「そう、だよ。遠音の分も一緒に頑張ろうって、ボクが皆に言ったんだ」
里子さんの次の魔弾が飛んでくる。
でも、私はそれを打ち返す。
姿が見えなくなっても、すぐ傍に香穂里が居ることは解っていた。
強い気配は、ずっとすぐ隣から感じられていたから。
あぁ、なるほど。
きっと、これが遠音が言っていた幻術の中、なのかもしれない。
そう思えば。
里子さんが異なる人間に見えてきた。
「里子さんがボクを襲うはずがない! だってボクの大事な母親だから!」
そう叫び、自分に渇を入れて――神器 "森羅の書" を呼び出した。




