245 ☉ vs.パパ
パパが執拗に私の首を狙うので、逆に攻撃は入れやすかった。
もっとも、どうしてそこまで狙うのか、私にはさっぱり解らない。
地面を蹴って上空へ。
パパの足蹴り、からの足から放たれた魔弾を、まるでピンポン玉のように撥ね返す。
その魔弾のギリギリを通ってパパが飛び跳ねてくる。
炎神は一応、飛ぶことも出来た。
だが、飛んでいる最中に魔術を放つと、その反動で自身が逆側に飛ばされてしまう、という利点とも欠点とも言いにくい現象がある。
だから、私は敢えてパパの頭を蹴ろうと考えた。
足場にしつつ、空へと逃げるため。
しかし、読まれていたのか両方の足首をパパの両手でガッツリと押さえられてしまう。
「しまっ……!」
流石に他人を空中で支える力はない。
よって重力に沿って(それでも徐々に)墜落した。
「パパ、ごめん!」
思い切りパパの頭を踏んずけた。
が、そんなパパが何故か一瞬、手を止めた気がした。
だけど、すぐさま魔弾が首の後ろを掠めていた。
魔弾を誘導していたのだろう。
パパが先に地面へ到着したのか、私にも圧で伝わってくる。
次の攻撃を警戒した私は慌てて後方に飛び退き、
――ふと、自身の体内の魔力の流れが変化したことに気付く。
「……?、……??」
思わず首の後ろを擦った。
でも、特に何もない。
にもかかわらず、まるで血液循環が改善されたかのような感覚が全身に広がっていた。
私のそんな確認を待っていたかのように、前方のパパが私を手で挑発してくる。
――それはいつもの訓練と変わらない態度で。
「ねぇ、パパ。教えてよ。
何で、敵の方に味方したの?」
パパから攻撃を、魔弾を仕掛けてくる。
――でもそれは、訓練ではありえなかったこと。
喋る必要はない、ということか。
又は、本物のパパではないからか。
攻撃を避けながらも神器を出すべきか、迷う。
『ママより、秘匿事項として、開示不可の記憶、有り』
その神器が不意に喋り出す。
『岸間家と如月家、深い因縁、有り。
故に、敵対せざるを得ない 状況下だった』
変化のしない攻防に、私は神器を、死者の守を構える。
『我を封じた者、因縁を解消すべく、古の情報を提供。
其れにより、パパが出国し、真実を知り、帰国した』
——目の前のパパは、偽物なのだろう。
私は目を閉じる。
——パパなら、解ってくれるはず。
いつもなら、訓練中に目を閉じる、なんてことはしない。
見ていないと怒られるから。
危ないから見ていなさい、そう言われるから。
今、そんなパパは目の前に迫ってきている。
本物のパパなら、立ち止まって待っていてくれるのに。
だけど、今は集中したかったから目を閉じた。
パパを真っ直ぐに見つめ、ただただ、死者の守の穂先に全集中する。
——狙うのは、パパの頭。
パパは確かに岸間家のルールを厳格に守っていた。
だけど、娘の私には凄く、優しかった。
お土産は必ず買ってきてくれるし、不在時でも電話をかけてきてくれた。
時には言い過ぎなこともあって、嫌だなぁ、と思うこともあったけど。
それでも、一緒に出掛けた時、パパは私に色んなことを教えてくれた。
何でも知っていて、何でも教えてくれるパパは、私にとって自慢の1つだった。
だから、私はただ、信じたかった。
——パパなら、私の意図を読んでくれることを。




