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244 ⛩(☴☉▲) 悪夢結界の再来

 黒い建物を目前にして、私達は茫然と立ち尽くしていた。


 建物と思っていたのは、先程の円が変化したような邪乃丸ばかり。

 それも半端ではない数の邪乃丸がその建物を覆い尽くしていた。


 元は円のように人間だったのかもしれない。

 いや、人間だったのだろう。


 そう思ったら、急に涙が込み上げて来た。


「何でっ……! こんなの、酷いっ!」


 私の叫びに驚いたのか、純がそっと私の腕を掴んできた。


 不意に香穂里が明後日の方向を見つめる。


「パパ……」


 これが罠だとはすぐに察した。


 何故ならば、私の目には遠巻きにこちらを見つめてくる家族が見えていたから。


「ねぇ、パパ。どうして敵の方に助力したの?」


 そう言いながら一歩を踏み込んだ香穂里が、瞬時に消える。


 私達はただ唖然とするしかなかった。


「……なるほど」


 不意に純が呟き、ある点を指す。

 その先にあったのはただの地面だったが、良く見れば一線が引かれてあった。


「ここは既に幻術の中かもしれない」


「里子、さん」


 紗穂里の一言で驚愕した私は、瞬発的に紗穂里の腕を掴んでいた。

 だが、そんな行為も虚しく紗穂里もまた消えていってしまう。


 ――このまま、純も消えてしまうのではないか。


 ふとした思いが駆け巡り、身震いした。

 それを純の暖かい手が救ってくれる。


「私はどこにもいかない。もう二度と、千尋の傍から離れたりなどしない」

「純……」

「それに、今の千尋の体と私は繋がっているから」


 純が私の腹部に触れた。


 今の私はそこに心臓が、核が、ある。

 それを理解しているのは、魔物としての私と契約する主だけ。


 安堵するのは当然なのかもしれなかった。


「警戒して」


 私にくっついていた純が囁いた。

 途端に前方から弟子たちが進んでくる。


 見えているのは同じ幻術なのだろうとすぐに悟った。

 ただ、今の弱っている心だと惑わされてしまう気持ちも良く解る。


 ――それでも、純も同じモノが見えているなら――


「千尋」


 純が私を見る。


「何が見える?」

「えっ? ……家族、が」


 と答えたあたりで、純には見えていないと知り、絶望する。


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