242 ☴(⛩☉▲) 何度も、何度も、
笑顔で可愛い洋服をいくつもプレゼントしてくれていた円、
展望台ではしゃぐ瞳を優しく見守っていた円、
お化け屋敷で怖がる円、
私が悩んで居ればすぐに訊ねてくれた円、
――などを思い出していた。
しかし、目前の円は化け物へと姿を変えて行く。
その姿はまるで、
「邪乃丸」
私が言おうとした言葉を口にしたのは、すぐ隣に居た千尋だった。
今は4人で少し離れたビルの上に居る。
茫然と、ただただ、遠方から円の変化を見守っていた。
「これは、どういうことなの?」
千尋に聞かれても、私にも見当はつかなかった。
円の化け物への変化は止まりを見せない。
それどころか大きくなった分だけ皮膚や肉が融け始めていた。
稀に垣間見えていた内臓までもが融けて行く。
それでも、私達は見守ることしか出来ない。
その体に触れたらどうなるのか――それは邪乃丸の体に触れたことがある属性神だからこそ、知っていることでもあった。
――逃げて。
後退してはいたものの、何も出来ないままだった私達に円が悲しそうに呟いた、気がした。
声が空気に響き、嫌な結界を生み出す。
悪魔の部屋と化すには、時間の問題だろうと悟った。
――このままだと、貴方方まで巻き込んでしまうから。
円の嘆きは徐々に結界を厚くさせていった。
それでも、私達は動けなかった。
円を助けようにも、助け方が解らなかった。
それは、私達の知識不足なのかもしれない。
知識があれば、如月さんのように情報があれば、もしかしたら円を救えたかもしれない。
でも、後悔しても遅い。
今の私達では誰も円を救うことは出来ない。
「円、ごめん」
私は呟き、千尋の腕を掴んだ。
我に返った千尋が私を見、納得した表情で頷き返してくれる。
「行こう」
後ろ髪を引かれる想いで黒い建物へと飛び出した私は、少し離れた所で振り返り、巨大化した円のその最後の姿を黙認した。
結界の中の円は意を決したような眼で私を見つめてくれていた、気がする。
それ以上に進めば、見届けることが出来ないだろうと感じていた。
それでも、私は進まなくてはならない――覚悟を決めて、前の千尋だけを見て走ることにした。




