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242/254

242 ☴(⛩☉▲) 何度も、何度も、

 笑顔で可愛い洋服をいくつもプレゼントしてくれていた円、

 展望台ではしゃぐ瞳を優しく見守っていた円、

 お化け屋敷で怖がる円、

 私が悩んで居ればすぐに訊ねてくれた円、

 ――などを思い出していた。


 しかし、目前の円は化け物へと姿を変えて行く。


 その姿はまるで、


「邪乃丸」


 私が言おうとした言葉を口にしたのは、すぐ隣に居た千尋だった。


 今は4人で少し離れたビルの上に居る。

 茫然と、ただただ、遠方から円の変化を見守っていた。


「これは、どういうことなの?」


 千尋に聞かれても、私にも見当はつかなかった。


 円の化け物への変化は止まりを見せない。

 それどころか大きくなった分だけ皮膚や肉が融け始めていた。

 稀に垣間見えていた内臓までもが融けて行く。


 それでも、私達は見守ることしか出来ない。

 その体に触れたらどうなるのか――それは邪乃丸の体に触れたことがある属性神だからこそ、知っていることでもあった。


 ――逃げて。


 後退してはいたものの、何も出来ないままだった私達に円が悲しそうに呟いた、気がした。


 声が空気に響き、嫌な結界を生み出す。

 悪魔の部屋と化すには、時間の問題だろうと悟った。


 ――このままだと、貴方方まで巻き込んでしまうから。


 円の嘆きは徐々に結界を厚くさせていった。


 それでも、私達は動けなかった。

 円を助けようにも、助け方が解らなかった。


 それは、私達の知識不足なのかもしれない。

 知識があれば、如月さんのように情報があれば、もしかしたら円を救えたかもしれない。


 でも、後悔しても遅い。

 今の私達では誰も円を救うことは出来ない。


「円、ごめん」


 私は呟き、千尋の腕を掴んだ。

 我に返った千尋が私を見、納得した表情で頷き返してくれる。


「行こう」


 後ろ髪を引かれる想いで黒い建物へと飛び出した私は、少し離れた所で振り返り、巨大化した円のその最後の姿を黙認した。


 結界の中の円は意を決したような眼で私を見つめてくれていた、気がする。

 それ以上に進めば、見届けることが出来ないだろうと感じていた。


 それでも、私は進まなくてはならない――覚悟を決めて、前の千尋だけを見て走ることにした。


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