240 ☴(⛩☉▲) 涙の理由(閑話)
『大丈夫……では、ありませんの』
冷静に円が言い放つ。
同時に、円が私を振るい払っていた。
空中でよろけた私が落ちそうになる。
それを岸間さんが助けてくれた。
円は私達を見下ろし、その赤い鬼面を顔から消す。
良く見れば、その綺麗なはずの顔には黒い模様が浮き上がっていた。
それが痛々しくも深い傷となってしまっている。
『もう、後戻りは出来ないの。瞳が心を失って、生命共同体となっていた私にも、この模様が現れた。こんな顔では、学校には戻れない。女優として仕事にも戻れない。悩んだ末に逃亡を計ってしまったの――瞳を差し置いて』
円は苦しそうに胸を抑えた。
兄上に円と瞳と紫を紹介したのは、他ならぬ私だった。
幼い私は何も知らずに、ただただ、兄上が超能力者を集めていることを知って、能力を分け与えていることを知って、魔力の低い円と瞳が、能力が無いことで嘆いていたから、兄上だったらどうにかしてくれると信じて紹介した。
あの時、私は部屋に入れてもらえなかったけど、紫は2人と一緒に入って行ったから、恐らく紫は2人のことも、どのような契約が交わされていたのかも、知っていたのだとは思う。
だから、抱き着いた際に思わず確認してしまった。
――まさか兄上が円の心臓を奪っていたとは。
『逃亡者がどういう結末を迎えていたか、何て知っていたわ。それでも、私は……貴方を、純を追い駆けて行きたかった』
円の目から、涙が零れ落ちたことを知った。
が、岸間さんの停止を促す腕の所為で円の元には向かえそうにも無い。
『純は、私達みたいに騙されないでね』
途端、円は凄い勢いで下方に向かっていた。




