238 ☉(⛩☴▲) 円の思慕
かなり前の、輪廻していた中での話しだったと思う。
上機嫌の円が、珍しく私に声をかけてきたことがあった。
教室で風に吹かれて涼しんでいた私は、あの夏の日の出来事を、未だにしっかりと覚えていたらしい。
「魂の双子の話し、知ってる?」
「……急にどうしたの?」
円が超能力に関する話しをすることも珍しかっただけに、頭でも打ったのかと本気で心配した。
でも、円は平然と頭を横に振っていたので違うのだろうと知る。
ある研究者が、四大神であれば知ることが出来ると云われていた "魂の双子" に関する研究成果を発表した、とテレビで話題になっていたからだろう。ちらりと聞きかじった限りだと諸説あるらしいが。
もっとも、新聞で知っていたとはいえ、興味はなかったので適当に返答する。
「知っていても、別に興味無いし」
「双子は同じ種類の属性になりやすいのですって」
「うん、それも知ってるけど……」
だから何、と言いかけた口が、円の手を見て止まる。
円の手の上には炎の魔弾が出来ていた。
「私達も、もしかしたら双子だったのではないかしら?」
もっとも、火属性は多くても炎属性は数少ない。
そうは言っても雷や地属性に比べれば多いし、炎はあくまでも火属性の進化系。神器で火力を上げれば炎属性まで進化は可能。
当の火属性はかなり多いので、気に留めるようなことでもなかった。
――はずなのに。
円と出会ってからずっと違和感はあった。
そもそも、数居る火属性でも多少の性質は異なるもので、パパともママとも、私の炎は似ていなかった。
なのに、円の炎の性質だけは同一のように感じてはいた。
だから、赤い仮面の性質に気付いていた私は相手が円ではないか、と薄々感じていた。
本来であれば、他者の魔力が源の炎は、私では扱えない。
しかし今、私はわざと円の炎に飛び込んだ。
瘴気を帯びた炎は、既に円が堕転している証拠。
さっぱりとした炎の外周とは異なり、内部はドロドロとしていることも、何となくは知っていた。
そのドロドロした炎が私にまとわりついている。
だけど、不思議と熱くは感じなかった。
『何をしているの!!』
円が私に怒鳴っていた、と思う。
炎を消そうとしたことも、察した。
でも、私はわざとその炎を消さなかった。
前々から感じていた、円の炎への安堵感と、複雑な円の感情が同時に伝わって来る。
"魂の双子" の私が神様なら、相方も神様に成り得る魔力はあるらしい。
それも一卵性双生児などの一般的な双子とは異なり、同じ属性、同じ性質ではあるらしい。
しかし、同じ属性ということは、片方しか神様には選ばれない。
例え核を飲み込んだとしても相方には根付かない。
それが円だったのだと思う。
恐らく、円の慕う "死神様" の本当の正体は、未だに正体が判明していない邪神あたりだったのだろう。
兎にも角にも、死神様からこのことを伝えられた円は、私を逆恨みするようになった。
でも、私は何も知らなかった。
炎神であることすら知らない私を襲撃する度に、円は複雑な感情を抱いていた。
そのことで、死神様に対する感情も変化していった。
――だから、今も迷っている。
「円は、どうして死神様……純のお兄さんを慕うの?」
円の炎を纏ったまま、私は円に訊ねていた。
円が努力の手を止める。
同時に、私に妖刀で攻撃しようとその一振りを繰り出して来た。
が、円の炎で結界を作っていた私には届かない。
『貴方には、解らないことよ』
円は常に瞳を心配していた。
瞳が仕事の時は、円も一緒に行っていたと紫から聞いている。
死神様は "奪い取る" 固有能力を持っていると純から聞いている。
「下に居る瞳のことが、心配だったから? 大切な何かを奪われて、取り戻そうとしていたから?」
『……っ』
「それとも、純のお兄さんだったから?」
『煩い……煩いっ!!』
円が妖刀を何度も何度も揮って来た。
結界が持たない、と思った私は距離を置く。
私がその場に居なくなったのに、円の適当な振りは治まらなかった。
「もう、大丈夫」
そう言って円の背中からそっと抱きついたのは、他ならぬ純だった。




