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236 ▲(⛩☴☉) やってみたかっただけ

 ――何も、こんな時に来なくても良いのに!!


 地面が大きく揺れ始めていた。


 私はこの地震を知っている――世界が崩壊する前に必ず起きるモノ、ということを。

 そしてこれが起き始めたら、境界諸共、全ての地面が少しずつ崩れ去る。

 やがて全ての足場を失くした生き残りもブラックホールに飲み込まれてしまう。


 もっとも、普段はこのあたりで輪廻するから、恐らくは地面も過去に戻されていたのだと思う。


 だが、今回はそれが無いらしい。

 ということは、3人はここで戦う姿勢を示していたものの、ここに居ればその崩落に巻き込まれる可能性が高くなる。


 その危険信号は地神の神器が教えてくれていた。

 だから間違いない。


『空に居る2人も、聞いて!』


 私は千尋に守られながらも言った。


 空では見える敵と剣を交えていた香穂里が純と一緒に私をチラリと振り返ってくれる。

 でも、それだけで言葉が伝わっていることは理解出来た。


『ここで戦うのは、危ない。地面が崩落する気がする。だから、少しずつ場所を移動出来ないか?』

『空だからだいじょ――』

『解ったわ。どちら側に行けば良い?』


 香穂里を遮って純が答えていた。

 もっとも、過去にもこの場所に立っていたことがあったと思われる純は素直に従ってくれる。


『香穂里、御免! でも説明は後! とりあえず、あの黒い建物の方向に10mくらい』

『チッ。了解』


 どうやら舌打ちしたらしい香穂里だったが、すんなり飲み込んで移動を開始してくれた。

 そんな2人を追い駆けるような形で見える敵は移動して行ってくれる。


 しかし、こちらの見えない敵は如何なものか。

 まして隣のビルに移動しようにもかなり距離があるので跳躍では難しそうだった。


 しかも、悩んでいる間にも襲撃は続いている。


『(こちら側にいる敵への)作戦なら、ある』


 結界を張ってくれている千尋が答えつつ、何度も見えない敵が襲撃する度に、その結界の修復を最優先で行ってくれている。


『紗穂里の能力で安全な場所まで橋を作れば良い。もっとも、敵もそれを利用して来てしまうだろうが――』


 ――私は弱いな。


 素直にそう思っていた。

 千尋は、そんな私の心境に気付くこともないまま続ける。


『――多分、大丈夫』

『了解デショ』


 答えた私は、さっそく蔦をイメージする。

 もっとも、大聖堂の地下の時のように暴走してはいけないことも理解はしているものの、木属性を使うことに多少の恐怖心は残っていない訳ではなかった。


 しかし今は、それ以上に "死ぬ" ということへの恐怖が勝っていたのかもしれないとは、巨大な蔦の橋を編んで繋げたあたりで気付かされた。


 見えない敵が刃を蔦に向けていたが、蔦は多少の傷では動じ無いくらいに太い。

 あと幸運にも、敵が刃で攻撃する瞬間は姿を見せるという事実に気付く。


『隠遁は影踏みが弱点』


 蔦の橋を移動しながらも、不意に純からアドバイスが耳に入って来た。


 なるほど、これがベテランの隠遁らしい。完全に透明人間と化している。

 ただ、その対策さえ理解してしまえばいくらでも脳内に浮かんで来る。

 きっと、これらが神様としての記憶なのだろう。


 しかし、雲や繭が多めで街灯もない現状、純が言った影踏みをしようにも光が乏しい。


『見えないなら、見せてしまえば良いのでしょ?』


 隣のビルに降り立った千尋は、答えるなり橋の上を指していた。


 振り返れば、そこには水が浮いている。

 否、水がこちらに向かって動いて近付いて来ている。


 なるほど、水の塊を敵に着けていたらしい。

 通りで、先程から敵が襲撃してくる方向の結界を千尋が厚く出来ていた訳だ。


 見える敵なら、私でも攻撃が出来る。

 物理なら水神よりは得意だ。


『よっしゃ! 反撃開始デショ!』


 答えた私は壺の方の神器を杖型に変えて構えてみた。


 ……構えてみたかっただけで、特に意味はないけど。


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