表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
233/253

233 ☴(⛩☉▲) お風呂(閑話)

 黙ってしまった皆を見て、私はどうしよう、と独り葛藤していた。


 彼は生きているかもしれない。

 でも、そんな一言は言わなくても皆も解っていると思う。


 永瀬さんのことだって、誰も言わないだけで気にはなっていると思う。


 だからといって、下手に話を変えてしまうのもどうかと思う。

 まして千尋は目覚めたばかりで、もしかしたら千尋が倒れた理由を理解していないかもしれない。


 話すなら今だろうと思いながらも、上手く切り返しする言葉が見つからずに、でも、現状を変えようとした私が居た。


「わ……私!!」


 何か言わなくては。

 ただそれだけで出て来たのは一人称だけだった。


 が、こうなってしまえば自棄だ。


「気分転換に、皆でお風呂、入らない?」


 あまりに突拍子だったのか、3人が唖然とした表情で私を注目してくれた。


 しかし、これで良い。

 それに、お風呂は既に下調べ済みだったから皆で入るのには丁度良いとは思っていたし、何より私自身も含めちょっと体臭が気にはなっていたこともあって、悪戦苦闘しながらもお風呂を沸かす為のスイッチは入れておいた。(切れていた線を繋げたけど。)


「お風呂って……」

「お風呂、あるの??」


 千尋の言葉を遮って、真っ先に嬉しそうな声を出していたのは岸間さんだった。


 頷き返しながらもその方向を指す。

 3人が一斉に、その指の先にある "温泉・入浴はこちら" という張り紙を発見したと思う。


「しかも温泉?! ちょー嬉しいんだけどっ!!」


 岸間さんは嬉しそうにジャンプして本谷さんを引っ張った。


 本谷さんが驚いた表情で岸間さんを見ている。

 が、途中で困惑した表情に変わっていたと思う。


 そんな本谷さんの背中を立ち上がった千尋が押していた。


「そうね。私達、相当 "臭い" もの」

「えっ?! そ、そんなに気になっていたのデショ?!」


 ショック!という表情をした本谷さんだったが、それには千尋が鼻を抓んで答えていた。


 それを見た本谷さんが項垂れ、抵抗する力を失くしたらしい。

 岸間さんに引きずられ、千尋に押し出されるようにしてお風呂に向かわされていた。




 千尋の家ほどの大浴場では無かったものの、シャワーが6つ以上あったことで個々に汗を流すことが出来ていた。


 私はただ大きな湯船に浸かりながら3人を眺めていただけではあったものの、本谷さんが岸間さんの背中を流したり、岸間さんが千尋の長い髪とシャンプーを使って形を作って遊んだり、それを鏡越しに見て知っていた千尋が本谷さんを呼び寄せて同じことをしていたり、と、まるで先程の動画を見なかったかのように戯れていた。


 安堵した私はただただ、微笑みながら3人を見つめる。


 ――でも、幸せな時間は続かない。


 3人が遊び疲れて湯船に入って来たあたりで、3人を見ながらもずっと悩んでいたことをぶつけることにした。


「私の兄上が黒幕だったら、私は全力では戦えないかもしれない」


 その一言で3人が真面目な顔を向けてくれた。

 そしてそれと同時に岸間さんが口を開く。


「それはもう、皆も解っていると思う」

「・・・」

「私だって、もし(黒幕が)パパだったら無理だと思う。だから、その時は気にしなくても良いよ」


 岸間さんの一言が心に染みたのか、少し涙ぐみそうになった。


「でも、岸間さんは、私よりも強い人だから……」

「強くなんか無いよ、私は」


 そう答えながら岸間さんが私の傍にやって来る。


「常に一緒に居たパパが怖かったから、私の、だけではなく紗穂里のママを(私が)殺してしまったから、強くならなければならないと思い込んでいただけ。強さを誇示することで、自分の弱さを隠していただけだよ」


 そう言える岸間さんが羨ましいと思った。

 それこそが、岸間さんの強さなのだと思った。


 私には真似出来ないこと。


「私も不安だよ。後ろの2人だって、不安だからこそあの動画を見て困惑した。身内を殺すことになるかもしれない――嫌なことだよ。私も、出来たら避けたいことだよ。でもさ、この世界を救えるのって、生き残った私らしか居ないでしょ?」


 事実だとは思う。

 もしかしたら、彼のように生き残っている者もどこかには居ると思う。

 でも、その人達が身内を殺すことになる事象に力を貸してくれるか否かは解らない。


 そもそも、大元は天界の属性神が引き起こした現象。

 決着をつけるのは私達しかいない。


「遠音の分も、ボク達が頑張るしかないのデショ!」

「それに純だって、十分強いと思うよ? さっきも場の空気を変えてくれたし、さ」


 本谷さんの発言の後の千尋の言葉には失笑を返しておいた。

 やっぱり、3人にはバレていたのだと思った。


 が、これには本谷さんが食いつく。


「そうデショ! 臭いならもっと早く言って欲しかったデショ!!」

「そ、そこまで私は……!」

「でも、そう思っていたからお風呂、準備したんでしょ?」


 岸間さんの冷静な切り返しに本谷さんが怒り出す。

 思い切り頭から湯船のお湯をかけられてしまった。


 が、すぐ傍に居た岸間さんまで被害を受けている。


「私にもかけるのか?! このーう!!」

「何をーっ!!」


 そう言い合った岸間さんと本谷さんがお湯かけ合戦を始めそうになっていた。


 即座に合間から撤退する私。


 すれ違うように千尋が割り入って止めている。


「そーこーまーでー!」

「「うぐっ……」」

「というか、お風呂の中でやることじゃぁないでしょうに。ここから出たらやって頂戴。私にまで被害が出るでしょう?」


 その発言、流石は千尋。

 しかし、残念なことに反抗した2人からほぼ同時にお湯をかけられていた。


こんなタイミングになった風呂回ですが。

なかなか皆が揃わないんだもの。仕方ないよね!


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ