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230 ☴(⛩☉▲) 先生の役目

 未だに神聖な雰囲気を保つ校内に逃げ込みながらも、美川先生は私達に全てを話してくれた。

 そして、まるで誘うようにゆっくりと歩き出す。


 学園の守護神が輪廻を悪だと気付いたのは、残念ながら数回前のことだったらしい。

 自身の手帳を発見して読み返し、属性神が居る時代を何度も襲撃する存在があることは解った。

 ただし、魔力暴走などが起こる前に属性神が自滅、又はその核の記憶部分を分裂、消滅させることで次世代に引き継がないようにしていた為、皮肉にも世界は終焉を迎えずに仮初の未来に進めていただけらしい。


 しかしながら、それも永くは持たない。

 そのことを守護神に教えてくれたのは、この境界の中に封印していた多くの神器だったという。


 そして地界では、この時代での輪廻が始まる。

 輪廻を引き起こせる存在はもう1つあることも、手帳には書かれてあった。

 ただし、そのもう1つは、この世界が終焉に向かわないようにわざと輪廻を引き起こしているのだという。

 その存在が、後に禁術一家と云われるようになる如月家だった。


 しかしながら、それもまた、永くは持たない。


「如月さんが私のクラスに転入したのは、単なる偶然では無かったの。如月さん曰く、この世界は既に輪廻出来る回数に限界を迎えて、むしろ突破していたそうよ。強制的に輪廻出来たとしても確実な未来の保証は無い、そう言って私の前に現れた。だから、本当なら如月さんは隣の2組に居るはずだったのだけど、理事長に頼んで同じ転入生の山田さんと交換してもらったの。今までの流れを変えるために、ね」


 一瞬だけ岸間さんが驚いた目をしていたと思う。

 が、すぐにいつもの真面目な表情に戻っていた。



 美川先生が辿り着いた場所は、今の私達の教室があるすぐ近くの向かい側、役員会館と呼ばれる扉の前だった。

 手慣れた手付きで美川先生は鍵を差し込み、その扉を開ける。


「……なるほど。確かにここなら、シャワールームもテレビもありますね」


 岸間さんの一言に美川先生は失笑を返した。

 そして通路のような狭い入口を抜ければすぐに開けた場所に出る。


 右側にはノートパソコンとテレビが、左側の奥にはシャワーの絵が描かれた扉があった。

 どちらも使用していただろう、美川先生のオーラの形跡が残っていた。


「そしてここだけが、境界でも唯一、外界と連絡が取れる場所でもあったの」


 答えながらも、美川先生は周囲に結界を張ってくれた。

 途端に前方から気配も無く魔弾が飛んで来る。


 見れば、前方の長そうな通路から飛んで来たモノ、という理解はした。


「その通路の先が、地界への出口になっているわ」

「……なるほど、出口で誰かが待ち構えている、と」

「それなら倒すまでデショ!」


 本谷さんの発言に岸間さんが勢いよく通路に向かおうとする。

 が、それを制止させたのは美川先生だった。


「大丈夫よ。ここは学校の敷地内で、私は教師。生徒には一切手出しさせないわ!」


 そう答えた美川先生が金色に輝く自らの神器を繰り出した。

 そして魔弾を送り出す。


 しばらくして、その相手が境界の出口にあっただろう結界を突き破って侵入して来たことが、結界を破るその異音から理解できた。相手は私達の遠方からやって来るのが見える。

 装着させられた黒い仮面から触手なようなモノが伸び、それが素肌を黒く侵食し始めていた。


 相手はその勢いのまま、美川先生に襲い掛かる。

 力押しの勝負では五分五分というところか。


「今なら出口に他の気配は無いわ! 貴方達は隙間を縫って、少しでも先に進みなさい!」


 美川先生に促され、千尋の力強い頷きもあって、私達は揃って地界へと帰ることにした。


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