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228 ☉(⛩☴▲) 守護神の正体

 千尋が扱う "免除の朱"、それに各々が扱う神器を見て、とうとうこの日がやって来てしまったのだと残念に思っていた。

 境界の結界をも超えてやって来る黒い仮面の侵入者が襲い来る中、その最後の1人だった紗穂里が "森羅の書" を手に戻って来る。


「お待たせ!」


 ――本音を言えば、二度とその神器を "覚醒" させたくはなかった。


 過去の女神を封印した際に、その覚醒をさせた神器の恐ろしさを痛感した。

 覚醒した神器を扱えたのは水神だけだったが、その神器は水神の肌を融かし、瀕死の状態にまで追い込んだ。

 何とか窮地を脱出出来ても、あの時の水神は既に魔力を失ってしまっていたため、目覚めたとしても引き続き水神を担うには難しいという判断が下された。


 しかも死神曰く、あの時の神器は、全力ではなく3割ほどの力しか出せてはいなかったという。


「遅い!」


 千尋が紗穂里に答えつつ、私らの周囲に張ってあった結界を強固なモノにしていた。

 恐らくはそれと同時に境界の結界も(一時的に)強化したのか、先程まで侵入していた黒い仮面の姿も途切れる。


 近くに居た守護神がゼーゼー、ハーハー、という激しい呼吸をしながらも辛そうに私らを見つめた。

 その視線の先にあったのは千尋で。


「長くは持たないわよ」


 普段のテレパシーではなく、口でそう伝えていた。

 千尋も解っていたのか強めに頷き返している。


「千尋!」


 そう言って真っ先に場の空気を変えたのは、風見のその一言と涙、そして嬉しそうなハグだった。

 思わずポカンとする紗穂里を後目に、私は千尋の肩を叩き、私に気付かせる。


「お帰り」

「ただいま。まだ記憶ははっきりしていないけど……多分、かなり迷惑をかけたわよね?」


 スンスンと静かに泣き始めている風見に抱きつかれたまま、しかし、千尋は風見の頭をよしよしと撫でながらもそう答えてくれた。


 今なら言葉にしなくとも雰囲気で解る。

 千尋は私らの良く知る千尋として戻って来た。

 そして、過去の水神の記憶を思い出していることも。


 それが全てではなくても構わない。


 ――そう、今は、まだ。


「これから、どうする?」


 私は千尋に訊ねた。

 それは千尋が属性神のリーダーだから、という理由以外にもある。


 千尋はもう、私らと同様に敵が誰であるのかを解っていると思ったから。

 もちろん、私らも全く解らない訳じゃない。


 それを確かめる意味でも千尋に訊ねていた。

 千尋もまた、そんな意図を理解した上で答えてくれる。


「輪廻を止めよう。それが天界から地界に逃げて来た属性神の使命だと思う」

「でも、一体誰が輪廻を……」

「何も輪廻を引き起こしている人が悪い訳じゃないと思う」


 紗穂里の質問に答えた私は千尋を見る。

 そして如月のことを思い浮かべながら続ける。


「多分、輪廻を起こさなかったら未来が無かったから、仕方なく引き起こしていたんだと思う」

「それは、どういうこと?」


 如月は過去に戻る術を持っていた。

 その術は、恐らくは禁術。

 禁術は命を削ると言われているのだから、当然ながら如月は命を削ってでも輪廻を引き起こしていた。


 それは、属性神である私らが堕転という方法で未来から消えてしまっていたから。

 堕転した神が死ねば二度と転生しない。

 そして、属性神は1人でも欠けると地界のバランスを崩す。


 つまり、どちらにせよ永遠の終焉が訪れる。


 輪廻を続けていたのは、私らが欠けてしまっていたからであって、決して私らが憎くてやっていた訳ではない。

 だけど、結果的にそのことを "何者か" に復讐という目的に利用されてしまった。

 だから輪廻の未来を変える為、幾度も私らに接触し、私ら自身で未来を創らせようとした。


 ――最初の "如月は" は敢えて言わなかった。


「その存在が死んだから『輪廻は二度と起こらない』。そういうことだと思う」

「じゃぁ、この世界が崩壊したら……」

「なるほどね。じゃぁ尚更、その崩壊を招いている存在を倒さないと」


 風見の呟きに答えた千尋は守護神を振り返った。

 やっと落ち着いてきたらしい守護神が深い溜息と共に答える。


「そう――全てはこの時の為に動いていたの」


 答えた守護神がその仮面を取る。


 何となく解っていた私は驚かなかったが、紗穂里と風見は素直に驚いた様子で守護神を、否、美川先生を見つめていた。


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