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222 ☴(▲) 神器を迎えに③

 帰路の道中、不意に違和感を覚えた私は、その気配の先に居るだろう大きな扉の前に立っていた。

 本来ならば、一刻も早く千尋の元に戻りたかったし、戻らなくてはならなかった。


 でも、その気配は未だに悩んでいるように思えた。

 揺らいだ想いの為か、その放つオーラをも揺れてしまっている。


 だから、私はその扉に手を触れて中に入ることにした。


 中は巨大な空間になっていた。

 図書館に来たのはいつ以来だろう。


 そう思っていると、入ってすぐに、その存在が私を視界に捉えたらしい。

 全体を見回せる入口付近からはその姿も丸見えだった。


「風見――さん?」


 どうしたの?という表情だった。

 が、その表情にも強張った感じが窺えた。


 焦り、恐怖、困惑。

 それら全てが相まって、揺れるオーラが更に弱々しく変形している。


「何で、ここに」


 私でも、その質問には答えにくかった。

 でも、正直に感じたことを訊ねることにする。


「本谷さんは、何を迷っているの?」


 途端、私でも解るくらいに大きく肩を揺らしていた。

 心拍数も上がったのか顔を赤くさせ、目を丸くして数歩程後退してもいる。


「何も……。別に、何も……」

「私、知っているわ」

「……何を?」

「本谷さんが、皆には黙ったまま調理室でカレーを作って1人で食べていたこと」


 この発言に本谷さんは驚愕すると思った。

 が、本谷さんは不思議そうな顔をして頭を傾げている。


「そ、そんなこと? それがどうしたの……?」

「かなりの量があったのに、1人で平らげていた時は、本当にビックリしたわ。見た目によらず、大食漢だったのね」

「まぁ……あの時は、何というか……」

「その後、ここに来て本を食べていたわ」


 私の言葉に、本谷さんが目を丸くした。


「……え?」


 その表情は、本当に驚いていたようだった。


「私が――本を食べていた? 何で??」


 しかし、そのことでやっと納得出来た私は溜め息をついていた。


「本谷さんがやるべきことは、神器を探すことでも、記憶を蘇らせることでも無かったのね」

「え? それ、どういうこと??」


 本谷さんは理解していないようではあったものの、時間があまりない現状、長々しい説明もしては居られなかった。

 まして、簡単には理解してもらえないことだろうし。


 故に、私は指輪型の神器を敢えて両方とも短剣の形にし、挑発するようにその片方を本谷さんの目前に突き出した。


「私と勝負して、私に勝てたら教えてあげるわ」

「ま、ま、待ってよ?! もう、そんな時間は……」

「そんなこと百も承知だわ。でも、今の本谷さんではなかなか理解してもらえないもの」


 過去に経験したことがある私だからこそ、本谷さんの現状も十分に解っているつもりだった。


 もっとも、地神は属性神の中でも短期決戦には向いていないし、まして今の本谷さんでは私に勝てないことも解っている。

 それでも、この勝負にはそれ以外の意味を持たせる。


 それが、あの神器を受け取りに行った私に課せられた使命なのだとどこかで感じ取っていた。


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