196 ☉ 空腹感(閑話)
「お腹……空いたかも」
ふと呟いた私は、食べ物を探して校内を彷徨っていた。
もっとも、ここ数日、水分すら口にしていないことを思い出す。
だからこそ、余計に何か口にしたかった。
(かと言って、都内の水道水は怖くて飲めないが。)
『何を探しているの?』
職員室の前を通りかかった時、その中から守護神の不機嫌そうな声が聴こえて来た。
『貴方の今回の条件は、そんなに難しくはなかったはずだけど……』
上から目線の口調にこちらが苛立ちそうになる。
既にあの担任の所為で慣れていた私は、しかし、それでも言いにくくて困惑した。
が、ここは境界の中。
聞くなら守護神の他には居ない。
『その……お腹が空いてしまって』
少しの間。
きっと職員室の中では溜め息をついているだろうな、何て勝手に想像していた。
『……なるほど!』
しかし、守護神のその一言で、私は笑われていたのだと知った。
途端に恥ずかしくなる。
『今日なら調理室にはカレー用の食材が、保健室にはアイスクリームが、食堂にはラーメンやパスタなどの冷凍食品が、売店には唐揚げやパンなどの食品があるわよ。お金はかからないから、好きなモノを選んだら良いわ』
何て優しく答えてくれた。
なるほど、境界の中なら食べ放題、飲み放題なのか、何て思っていれば、
『ただ、味は保証しないけど』
というオチまで教えてくれた。
しかし、口に入れば、お腹に入れば何でも良いと思っていた私は素直に感謝する。
『いえ、その――ありがとうございます!』
『いいえ。むしろ、そこまで気が回らなくて、ごめんなさいね』
その言い方に、何故か疑問を感じていた。
が、あまりにもお腹が空き過ぎたのだろう――頭が上手く回らない。
だから考えることは全て後にした。




