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185 ☴(☉▲☈) 如月家

「――――という訳だ。まぁ、結果的に言えば、アイツはオレの為に、オレの私有地ということになっているあの舟山を守ってくれていた、ってことだ」


 話し終えた永瀬さんは満足した表情だったものの、残る2人は唖然としてしまっていた。

 そういう私も、少しばかり信じられなくて頭を整理するので精一杯だった。


「ええっと……つまり、遠音が如月家の正当な後継者、ということで良いのかね?」


 本谷さんの質問に永瀬さんは頷く。


「そういうことになるな。ただまぁ、今はあの舟山の境界側は無くなっちまったから、守護神のオレが居る意味もあまり無いんだが……逆に言えば、境界が無くなったお陰でオレが戻らなくても問題が無くなった、とも言えるんだよな」

「何か、関係が複雑……」

「ホント、ホントデショ!!」


 岸間さんの呟きに答えた本谷さんが必死に永瀬さんに訴えていた。

 そんな永瀬さんは途端に真面目な顔になって2人に言う。


「ちなみに、親より上の世代はもっと複雑なんだが……」

「い、今は別に良いかな!!」


 混乱していたのか、岸間さんはそう答えてから大きな溜め息をついていた。


 もっとも、複雑な家庭事情何てどこにも存在するのだと、逆に安心しながら聞けていたのは私だけだったのかもしれない。

 魔物だった千尋の家も、両親を兄上に殺された私の家も然り。


「それよりも、いつまでここに居るつもりなのよ?」


 話しを変えるべく、岸間さんが永瀬さんにそう訊ねていた。

 話しながらも何か解ったのか、永瀬さんは千尋の髪留めを指で示す。


 その髪留めは何度も外れそうになる度に、私が付け直してあげていたモノ。

 今も外れそうになっているのを永瀬さんが直してくれている。


「さっき宮本に触れた時、偶然に触れてな。多分、コレを使えばいけるんじゃないかな、とは思ってた」

「……じゃぁ、何で言わなかったのよ?」

「先にオレのことを話しておこうと思ったからなー。咲九と違って、同時に3つのことは出来ないし」


 そう答えた永瀬さんは自身の簪を外し、その髪留めに近付けた。

 それだけなのに、1筋の光が現れた。


 それは綺麗な弧を描きながら大聖堂に向かって伸びる。


「……なるほどね」

「独り納得してないで、こっちにも納得出来るように説明してくれない?」


 岸間さんの厳しい一言に肩を竦ませた永瀬さんは答える。


「話しをしながら、簪にオレの魔力を流して溜めていたんだよ。で、その簪から一気に宮本の髪留めに魔力を流し込んだから、この光が強くなって見えるようになった、という訳。ほら、消えていくだろ?」


 そう言っている間にも、光は強い光を放たなくなった。

 ただ、それも薄くなっただけで見えなくは無かった。


「そういえば、過去に千尋、言っていたっけ」


 そう言ったのは岸間さんだった。


「前の学校指定の髪留めみたいで、魔力を蓄えることが出来るんだ~って。だから、如月と山田との3人で交換しながら色んな属性で魔力を蓄えていた、とか……そんなようなことを」

「あぁ……だから、死神時代の咲九の魔力が若干残っていたのか」


 答えながらも、永瀬さんが光の示す先、大聖堂に向かって歩き出したので私達も続く。


 私が千尋を背負った分、出遅れて永瀬さんを少し先で待たせてしまっていた。

 3人で近付くと永瀬さんが口を開く。


「過去に咲九はここに何かを隠しに来ていたな。その時の魔力がその何かと、宮本の髪留めに若干残っていたんだろ」


 私は納得しながらも、それだけだと2人が解らないのではないかと思って付け加える。


「魔力を何かに蓄えると、少し距離や時間が開いても、そのモノまで辿ることが出来るの。それに、その魔力を使って手元に戻すことも可能らしいわ」

「まぁ、核も本来ならその方法で全てを取り戻せるはずなんだが……」


 永瀬さんは先を歩きながらも、そう答えて私をチラリと振り返る。

 その行動の意味を理解していた私は仕方なく答えることにする。


「兄上の特殊能力は "捕獲" なの。弟の貴の心臓も、私達の残りの核も、恐らくはその "捕獲" の能力によって奪われ、保管されているのだと思うわ。その能力を使われてしまうと、どんなに頑張っても取り返せないわ」

「そんな……」

「でも、だからボク達は生きているのデショ?」


 岸間さんの呟きに本谷さんは答えた。

 どうやら本谷さんも薄々気付いてはいたらしい。


「本来なら、核を奪われた時点で、戻って来ない時点で、今のボク達は既に死んでいるはず。それなのに生きているということは、少なくても保管されているだけで利用されたり、割られたりはされていないということだとは思う。……その理由までは解らないが」


 そう言う間にも、私達は大聖堂の扉の前に辿り着いていた。

 永瀬さんが扉をゆっくりと開いてくれる。


 人の気配はしなかったので普通に3人揃って中に入ったものの、その中は悪霊の気配すら感じられなかった。


「 大()() だからな」


 私の疑問に答えるように扉を閉めた永瀬さんが言った。

 他の2人も納得したのか、永瀬さんを振り返っている。


「ここのどこにあるのかね?」

「それはオレも解らん!」


 永瀬さんは答えながらも、疲れた様子で近くの長椅子に座ってしまった。

 そんな永瀬さんを見ていた岸間さんが言う。


「また同じ方法で光の筋を作れば!」

「もうオレの魔力がねぇよ!」

「……なるほど」


 そして私以外の3人は溜め息をついていた。


 が、私には心当たりがあった。

 だから3人の間を抜けて前へ進んで行く。


「どこに行くの?」


 気になったらしい岸間さんが私の後を付いてきてくれた。

 逆に安堵した私は答える。


「前にその蓮君が――ここではないけど、中央の大聖堂で言っていたの。大聖堂には地下がある、と。ここの大聖堂の地下には、確か大きな扉があったと思ったのだけど……」

「何でその扉だと思ったのよ? そもそも、どうして扉があることを……そこって、教師でも立ち入り禁止じゃなかったっけ?」


 岸間さんの発言は少し胸に刺さった。

 が、今は言わなければならないと思った。


 振り返って皆を見て、続ける。


「過去に一度だけ、その扉を勝手に開けたことがあるの。吸い込まれるように中に入ったけど、そこは色が無い世界だったことだけは、しっかりと覚えているの。でも、それ以外のことは何も覚えて居なくて……今だから、解るの。多分、そこが境界の中だったのではないかしら」

「 "時期" を間違えたのか」


 永瀬さんが不意にそう呟いた。そして私を見る。


「境界の中は、簡単に言えば宮本が作る結界の中と似たような構造なんだ。だから、普通の人間が正気を保てるような空間にはなっていないらしい。そういう理由から、力が弱い内に入ると "もう1人の自分" が現れて乗っ取られてしまう、とか(咲九の手記には)書いてあったな」

「もう1人の自分?」


 私は興味を惹かれて訊ねた。


 が、それには答えようとせずに永瀬さんは立ち上がり、本谷さんと一緒にこちらに近付いて来る。

 ちなみに、岸間さんは何故か固まってしまっていた。


「境界に行けば、嫌でも解ることだろうよ」


 その一言に、何故か岸間さんと本谷さんが反応して2人で頷き合っていた。

 そして、本谷さんが何かを私に言おうとして、口を何度かパクパクと動かしている。


 が、声は聴こえない。


「……なるほどね」


 そう言ったのは岸間さんだった。

 そして少し悲しそうな表情をして答えてくれる。


「事実を知らないと言えない呪いが人類にはかけられているみたいでね……そう、だからきっと、過去の記憶を持っていても風見の弟はその事実を風見に話せなかった、と思ってくれて良いよ」

「それが、雷神(オレ)が輪廻を悪と考えた最初の要因なんだ」


 地下に向かう鎖を外した永瀬さんは答えながら失笑する。


「そもそも、事実を伝えられないのはおかしいだろ? 何かを隠しているとしか思えないくらいに」

「事実の中に、風見さんの兄が隠さなければならないことでもあったのかね?」

「そこまでは解らんが……少なくても、オレらに苦痛を与えたいという明確な意志はあるようだな」


 本谷さんの疑問に答えた永瀬さんは視線で私達に何かを訴えかけていた。

 そのことに気付いて覗き込み、思わず失笑してしまう。


 地下にはたっぷりと瘴気が蓄えられていたのだから。


【ここまでの、如月家の簡易的なまとめ】

☈ 遠音は本家の末裔

遠音の祖母の姉の、娘たちは4姉妹

その中の1人が初代・怪盗ホーリーで、その娘が香穂里・紗穂里

その中の1人がキサキで、その娘が咲九


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