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181 ☴(☈) 学園へ④

『――えるか? 聴こえるか?』


 壊れかけた掛け時計を見て、時は既に10時を回っていたことを知った。

 それが朝か夜かは解らないが、明るいので朝だと思いたい。


 晴れない朝靄の所為で気温は異常に下がっている。


 眠りついたままの千尋を心配し、傍に引き寄せて、ただただその朝靄の塊が上空を通り過ぎて行くのを見ながらも、指輪から囁かれる声に答える。


『聴こえたわ』


 伝える方法は解っていた。

 が、他の誰も方法を覚えていないのではないかと思って使わなかった。


 それに、この方法で兄上にも聞かれてしまえば一貫の終わり。せっかくの逃亡劇が台無しになる。

 もし方法を覚えていたとしたら永瀬さんだろうと思いながらも、相手の返答を待った。


『今、3人でそっちに向かっているが、無事か?』

『答えられているくらいだから無事よ。それよりもこの靄、複数の術者が居るの?』


 幻術の靄は厄介で、しつこい。

 本来は悪魔が扱う術で、範囲はせいぜい半径3キロメートル程度。それが周辺だけに留まっていないことからも、複数という答えに辿り着いて静かにしていた。


『霧のことを覚えているなら、今は無視してくれ。恐らく本格的に攻撃されることは無い。それよりも、訳あって今3人でそっちに向かってる。宮本の様態はどうだ?』


 無視しろと言われてもね、何て思いながらもフヨフヨと漂うそれらを見つめた。嫌でも目に入って来るのに無視は難しい。

 もっとも、地面近くで横になったまま動かなければ襲って来ることはないし、襲われてもあまり固くなければ痛くも痒くもない。

 これらの攻撃が面倒なのは、私達が本物と勘違いしてしまうことと、五感を含めた感覚を失うことと、その油断した隙を突いて悪霊のように憑依してくること。


『千尋はまだあれから一度も目覚めていないわ。ただ本当に死んだように眠っているだけで……心臓(?)が動いていることは、毎日きちんと確認しているけど』


 魔物だから心臓で良いのか解らない。

 しかも、表情も安らかだから逆に怖いのよね。

 ——とまでは言わなかったが。


 今はそれよりも、こちらに向かっている理由を知りたかった。


『あの時、貴方が言っていた "何か" が起きたのね?』

『正解。学校で火事があったらしい。学校に住み着いていた奴の情報だから間違いない』


 永瀬さんの返答に目を丸くしたものの、どこかで納得している私が居た。


 良く考えてもみれば、学園には守護神が居た。

 そして守護神が居たということは、兄上の里のように境界があるということ。


 風神として目覚めた今だから思い出して理解したものの、大会直後の子猫と触れ合っていた時点では知らなかったこと。

 記憶が正しければ、その境界には天界で属性神(わたしたち)が使っていた神器が眠っている。


 でも、その神器を使うには条件がいくつもあったはず。


『保管できなかった核の次は神器を狙う何て……本当に、兄上は何を考えているのかしら』


 あの日から今まで私はここに居た。

 ずっと家の中に居た。

 だけど、いつの間にか風神の核は私の体内に戻ってきていた。


 これが、核を奪われても雷神が心配しなかった理由なのだろう。


 千尋の水神の核はネックレスにあったので奪われなかったのか、又は解らなかったのか。

 とはいえ、もし体内にあったら同じように奪われてしまっていたかもしれないが。

 どちらにせよ、問題にもならない些細な事件だったのだろう。


『そこまで理解しているなら、早い話、そちらと合流できたらすぐにでも学校に向かおうと思っているのだが……』


 学園の境界に神器が眠っている、それが一緒に燃やされてしまうかもしれない。

 だが、急いでこちらに向かっているものの、それを阻害しているのは。


『この靄の所為で方向感覚が狂わされてしまうのね。解ったわ』


 元々、属性神は方向に強い。

 でもそれは、太陽や月、星などで居場所や方角の確認が出来ていたというだけの話し。


 今はその全てが見えない状況下に置かれているのだから、当然ながら動かない方が良いことは解っていた。

 だから私もこうして千尋と一緒に横になっていたのだから、このことは言われずとも理解できる。


 そもそもこの靄の正体を永瀬さんが知っているのであれば、地面や床に横になっていれば靄の塊が判別出来ずにこちらを無視してくれることも知っていたはず。


『靄を風で吹き飛ばして道を作れば良いかしら?』

『それだとお前らの位置がバレちまうだろうが!』


 ツッコミを入れられて悩んでから、納得して考えを改めた。

 3人、ということは既に岸間さん達も一緒なのだろう。

 だとすれば、本谷さんが飛べないから足場が必要だった。


『このまま向かえるとしたら、川沿いか大通り沿いに行くことになると思う』

『そうね。川沿いに出られたら2人が道を知っていると思うわ』


 悪夢の件を思い出しながら答えれば、


『解った。川沿いに向かってみるわ』


 という永瀬さんの返事があった。


「(あ、でも隠れる場所がないわ。伝えるべきかしら?)」


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