174 ☈ 久々の安堵 (*)
3人と会話をすることが久々だったからか、それともああなる前のニュースで私の死を報道されていたからか。
岸間に質問攻めにされるのではないかと緊張していたものの、予想外にそういうことは無かった。
それどころか、岸間は咲九の死にも、遠くにある里の主の気配にも、あっさりと理解を示してくれていた。
挙句に、あの頑固で傲慢な岸間が、宮本と風見を気遣う素振りまでしてくれている。
その所為で何故か余計に緊張はしたものの、とりあえず最低限、言うだけのことは言えた。
「(まぁ、それだけ互いに成長したってことか)」
そう思いながらも、私狙いの黒い仮面の取り巻きを増やすようにわざと飛び回ってやる。
3人には言わなかったものの、実はこのタワーの下にも鬼面の取り巻きは居た。もっとも、数が少ない挙句に私が知る鬼面では無い。
その取り巻きがこちらに気付くように、また3人が向かうだろう道に居る黒い仮面がこちらに気付くように、そして攻撃されないように飛び回るのはなかなかに大変だった。
だが、あの悪夢の中で最も非力だった私が出来ることはこのくらいだ、とも思ってはいる。
足から血が滴り落ちていたが、それでも痛みを堪えて飛び続ける。
『困った子』
不意に心の中から声が聴こえて来た。
が、それが誰なのか、何者なのかを私は良く知っていた。
私の中に漂っていた、過去に思いを共有した彼女の瘴気だけが外に抜けてゆく。
『せっかくの面白い悪夢を終わらせてしまうなんて』
『お前、まだそんなことを……』
『でも、あたしは利用されていただけ。トーネのおかげで解ったの』
その瘴気は恨みを孕んで更にドロドロとしたモノに変化する。
私の中にあった瘴気をも奪って、それは私と同じくらいの人型と化していた。
『あたしのやっと見出した楽しみがトーネを苦しませていたこと、絶対に許せない……』
「お、おい……」
と声をかける前に、それは早くも里の主に向かって飛び出して行ってしまった。
死んでも彼女の暴走癖は直っていなかったらしい。
思わず溜め息をつきながらも、まぁ良いか、と考えることを止めた。
どちらにしても里の主が彼女を悪神までに堕転させていたことには変わらないし、既に彼女は死者……堕転して死んだ故に転生は出来ないのだから、そこまで気にかける必要も無かった。
「(結局、彼女は里の主にとって、過去やオレらにとって、何だったんだろうな……)」
そんなことを釈然と考えながらも、全員が無事に外に出て、早くも家に向かい始めていることを知った私は、そのまま周囲を引き連れて森に帰ることにした。
今一番の問題は、今日から1週間をどうやって乗り切るか。
そして気になるのは、恐らく白雲運河から届いた矢文の最後に書かれていた "大きな事件" の内容。
白雲運河の予期が正しければ、私が悪夢から4人を救い出した丁度1週間後に事件は起こるらしい。
1週間後と言えば、もう後期の始業式を終えて授業が始まるくらいの時期。




