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152 ☈ 遠音の役割

「酷い音だ」


 私はそう言いながらも無心になる努力をした。


 一度でも無心モードになれば、こんな音は聴こえなくなることを知っていた。

 が、そのモードになる直前くらいに音は再度襲って来る。


「ちくしょう!! また最初からかよ……!」

「境界でしたら広範囲の念話……テレパシー類の遮断もある程度なら出来るはずなんですが」


 蓮はそう答えながらも、本人は既に無心モードになっているようだった。


「僕が心配なのは、むしろお姉さん以外の4人ですよ。お姉さんはまだ精神を保っていられていますが、あの時の精神状態ではいつまで耐えられるのか解りませんし」

「図太くて悪かったな!」

「そこまで言っていませんよ!?」


 蓮は答えながらも無心モードを止めたのか、ゆっくりと目を開けて森を見つめた。


「こんな時、姉さんが居れば……」

「咲九は死んだ」


 はっきりと蓮に言った。

 が、これは半ば私自身にも言っている。


「咲九が見たいと言っていた未来を守ることが、オレらに出来る最後の願いだったんだろ? 咲九以外の全員が未来を生きている世界を。なら、オレらが咲九の代わりにやらなきゃいけないんだ。違うか?」

「そうですが……姉さんが居たら、誰がどこにいるかすぐに解るのに、と」


 そう答えた蓮は溜め息をついていた。

 居場所が解れば様子を見に行ける、というのが蓮の言いたかったことらしい。咲九に頼っているのではないと解り安堵したものの、その次には疑問が浮かび上がって来る。


「その方法って、咲九はどうやっていたんだ? そもそも、咲九はどうやって位置を知り得ていたんだ??」

「知りませんよ。そもそも、固有能力の場合だったら方法何てありませんからね。あったとしても、他人が同じ方法をしてみたところで意味はありませんし」


 蓮の話しを聞き流しながらも、私は必死に頭を巡らせてみていた。


 確かに固有能力なら私らが方法を知っても意味は無い。が、固有能力にしてはチャッチイ気がする。何か違う方法があるはずだ――そう、あの鳥籠とか――。


「鳥籠、か……」


 あの中には様々な色の珠が浮いていた。

 その珠は、思えば属性神の各々の核にも似ていた気がするし、そうじゃなかったかもしれない。核にしては色がくすんでいたし。

 しかし、その珠がもし核だったとしたら、気配を追うことなんて容易になる。何せ核は神の心臓みたいな部位らしいし。


 とはいえ、あれが核ではなかったとしても、私の持つ雷神の神器のようなモノや教科書でも追おうと思えば出来なくはないらしい。

 つまりは、あんな珠でも由来ある品だったということ。


「気配を追う……何か関係のあるモノ……そうか、」


 そして最終的に、今は蓮が持つ咲九のヘアピンを思い出していた。

 咲九の魔力が詰まったヘアピン。あれは咲九の居場所を示してくれていた。だからこの森に帰って来ることができた。

 ならば、そういうモノを入手出来れば良いのではないかと思い付く。



 思い立ったが、何とやら。


 私は立ち上がり、壁のコンセントから充電している自分の携帯を見つめた。

 蓮が不思議そうに私を見ている。


「どうかしましたか?」

「携帯を使って気配を追えないか――と思った」

「……はぁ?」


 馬鹿じゃないのか、とばかりに呆れ返った蓮が私を見上げていた。

 しかし、今の私なら出来そうな気がしたので、携帯のアドレス帳を開く。


 確かに、山の中のこの神社では電波は立っていなかった。

 今は電波ジャックの所為で、街でも然り。


 しかし、電波塔が破壊されたという情報は入っていなかった。


 可能性とすれば、携帯会社の基地局が乗っ取られているとか、電波自体を遮断して繋がらなくしているとか、そのくらいだろうと思う。

 そうじゃなければ、テレビだけが黒い仮面の集団を(消音で映像だけだが)映すはずがないのだから。


 ならば早い話、私が皆の携帯に直接電波を発信すれば良い。


 あの様子だと、宮本と風見、岸間と紗穂は一緒に居る可能性が高い。

 そして、宮本と紗穂は携帯を常に所持していることは修学旅行の時に見て知っていた。


 使うのは、咲九が利用した私の固有能力――モノを転送する力。


 あの時は、咲九が送り先を調整してくれていたが、今はこの携帯のアドレスがある。

 そこに私の空メールを送れば、そのメールを頼りに気配を、居場所を辿ることが出来るのではないだろうか。


「……はぁ。何となくですが、解りましたよ」


 不意に蓮が私の背に手を触れて来た。驚いて飛び上がりそうになった私の服を掴んで止めてくれている。

 どうやら私の思考を読んでくれたらしい。


「僕が手伝えるのはお姉さんの暴走を抑えることくらいですが、それでも良いですか? コントロールまでは出来ないですよ?」

「頼むぜ!」


 そうは言ったものの、本当に出来るかどうかは解らない。ましてや、携帯に上手く届けられるとも限らないし、それで気配が追えるかどうかも解らない。

 が、このまま何もしないよりはマシ、くらいだろうか。


「そういう前向きなところ――僕も見習わなければいけませんね」

「お前はまだ、咲九の死を受け入れられていないから、だろ」


 そう答えながらも、最初に宮本を指定する。


 宮本も蓮と同じで、現状を受け入れられていないのだろうと思った。


 だから怖い。

 だから何も出来なくなってしまっている。


 堕転は感染病のように()()()()しまうと聞かされた。


 そのまま堕転しなければ良いのだが、前回の時に真っ先に水神は堕転してこの世界を崩壊に導いている。つまり、一番危険なのは水神だと思っても良い。

 水神の次に危ないのは炎神だった。確か前々回は、確か炎神が先に堕転していたはず。


「もう二度と、誰も堕転はさせない。それがオレの役割だ」


 ――堕転すれば、咲九の居ない今度ばかりは永遠の終焉しか残されてはいないのだから。


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