146 ▲(☉) 展示会⑤
浄化が身体に負担をかけることを、私はあの能力大会で千尋を見ていて知っていた。
きっと、そのことをどこかで知っていたらしい風見さんも心配して本気は出させないと思うし、千尋の傍からあまり離れないだろうと思った。
そう考えたら、ほぼ私達2人で千尋と風見さんを守らなければならなかった。
香穂里は伝えなくても解っているのか、既に臨戦態勢になっている。
『でも、このままじゃ本気を出し辛いわね』
4人を守っていた結界が消えてから5分くらいで香穂里は呟いた。
『どうせバレてるんだし、本気出す為にも変身しますかね』
『え?! ちょっと、香穂里――』
私が慌てている間にも、香穂里は既に剣型のアンクを掲げて変身を終えてしまっていた。
仕方なく大きな溜め息を付きながらも、遠距離ながら既に慣れた香穂里の魔力のコントロールをしてあげる。
瘴気に囲まれているというのに変身して更に魔力を増大させたら、それこそ魔力暴走を起こしやすくなるというのに。
しかし、それほどまでに香穂里が本気だということは理解出来た。
即ち、風神の風見さんを受け入れてくれているのだと理解する。
が、どうしてそう感じたのかは解らなかったものの、そのことが嬉しくてほくそ笑んでいた。
ならばと、私も本気を出す為に自身の十字架を取り出そうとした、その時だった。
『発動して!!』
願望にも聴こえたその千尋の言葉が私の耳に入って来る。
瞬間、足元を光が駆け巡って行った。
『熱っ?!』
驚いて私はポケットの中で十字架を手放していた。
が、何も私の十字架が熱くなった訳ではない。その傍にあった魔法石が千尋の術式の光に触れて発熱したのだと気付いた。
その間にも、千尋の光は千尋を中心にして広がって行く。
まるで光の波のようだった。
その光に触れた瘴気が消えていくのが見える。
瘴気から生み出されていた黒い仮面が、避けるように背を向ける姿のが見てとれる。
『今がチャーンスっ!!』
香穂里はそう言いながら剣型のアンクで次々と黒い仮面ごと相手を斬っていた。
先程まで起き上がりかけていた者はあっさりと蒸発してゆく。
『あぁ、もう……』
とはいえ、あまり離れ過ぎると私のコントロールが上手くいかない。
変身することは止めて、私は渋々、香穂里の後を追った。
私達の使命は千尋を守ることなのに、香穂里はいつの間にか斬ることを楽しんでしまっている。
『待ちやがれ、ですぅ!!』
あるアニメのキャラ声を真似て土壁を香穂里の前に出してやった。
それだけでも香穂里には効果覿面だったのか立ち止まり、私を振り返ってくれている。
そして視線の先には千尋が映っていたのか、やっと我に返ってくれたらしい。
『おっと。目的をすっかり……』
『これだから戦闘狂は困るデショ!』
呆れながらも私は香穂里よりも先に千尋の元に急ぐ。
『大丈夫?』
『何とかねー』
『答えられるだけ余裕デショ』
厳しめに答えたが、内心では助かったと思ってはいる。これ以上は、変身した香穂里を抑えつけておくのも気疲れしてしまうから。
とはいえ、香穂里も昔ほど無茶はしていなかった。
私の後ろまで戻って来た香穂里が空にある遊園地の薄い結界を見上げる。
『遊園地ごと結界を張られて――これからもっと、違う何かが起きそうなんだけど』
『瘴気はどこか違うところから持って来ただけみたいね』
千尋は答えながらも、既に敷いていた浄化の術式を止めていた。
『これ以上、このあたりは湧かなさそうな感じ』
『あれ、何かしら』
不意に風見が中央の建物の上を指した。
私達が同時に振り返れば、そこには巨大な黒い塊が、1つ、2つ、……否、8つほど浮いている。
それを見た香穂里が小さく悲鳴を上げた。
「ひぃっ!」
『香穂里っ?!』
思わず香穂里を心配したが、それは本心からの恐怖ではなかったらしい。
が、それでも顔色が悪くなっていることには違いなかった。




