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145 ☴(⛩) 展示会④

 楽しくメリーゴーランドという乗り物に乗っていたのに、その妙な視線に気付いた瞬間、体は勝手にその乗り物から降り、3人の元に戻ってしまっていた。


 3人は私の行動に首を傾げていたが、その途端にメリーゴーランドは爆破される。


 爆破と言っても規模は小さかったのでこちらまで被害は少なかったものの、そのお陰でやっとこの4人が揃っている意味に気付くことが出来た。



 そもそも、敵側に居た私を千尋以外の2人が易々と受け入れてくれるとは思ってはいなかった。

 私もどういう顔をしたら良いのか解らない。


 だから、そんな2人から距離を置く為にも乗り続けていた、というのが本心。

 本当は、2人のことをもっと知りたいと、心のどこかでそう思っていた。


 そんな思考でいっぱいいっぱいだったためか、周囲に漂っていた濃厚な瘴気の影響かは、解らない。


 だけど、この中で誰よりも、このねっとりとして気持ち悪い瘴気を知っていたはずなのに気付けなかった自分が、凄く悔しかった。

 そして、私の所為で、千尋だけではなく2人まで巻き込んでしまうのではないかと恐れた。


 ――それが、若干の出遅れになる。


『危ない!!』


 前に居た千尋に引っ張られた途端、私はやっと我に返っていた。

 慌ててその場から前方に退けば、私の首筋の後ろを何かが掠めていく。


『チッ』


 ――今の瞬間、全てを理解した。


 千尋が私を掴んでくれている腕を自分で掴み返し、その千尋を軸にして振り返り、もう片方の手にしていた指輪型の神器を相手に向けて伸ばしながらも、その形状から短剣へと姿を変えさせた。


 その短剣を思い切り投げてやる。


 短剣は見事に命中し、相手の背中に突き刺さる。


 が、それだけでは済まさせない。

 短剣に伸びる鎖を引っ張れば、当然ながら短剣は引き抜かれ、私の元に戻ってくる。


 相手にはかなりのダメージだったのか、少しだけ苦痛で唸った気はした。


『狙いは、属性神の核』


 私は呟き、千尋とその前方の2人を振り返った。


『だからここに誘き出された―― "キサキ" という餌を使われて』

『そんなところだと思ったデショ』


 本谷さんは即答し、自身の後ろからやって来た黒い仮面に、いつの間にか拾っていたらしい枝で退治する。

 枝には魔力を流して強化してあるのか、ゴンッという重そうな音がこちらにも聴こえて来ていた。


『本当は風見さんが未だに敵ではないかと疑いたいところだが――疑ってばかりも居られない状況で違い無い、でしょ? 香穂里』

『紗穂里がそう思うなら、私は構わないよ』


 本谷さんの脇に居た岸間さんが私をチラリと見つつ、手にしていた十字架を剣の形にさせていた。


『それに、前から風見のことは気になっていたし……風神には間違いないんでしょ?』

『間違いないわ。風神の記憶もあるし、皆と一緒に戦う覚悟も出来ているから』

『それにしても、不思議なものね』


 不意に、私の代わりに結界を張ってくれていた千尋が呟く。

 黒い仮面はその結界でこちらに近付いて来られない様子だった。


『こうやって一緒に戦っていると、何だか懐かしい気がしてきて……』

『雑談している場合ではないわ』


 私は千尋に言いながらも2人を見つめた。

 本谷さんも千尋を見て気付いたのか、前方に結界を張って千尋の結界に上手いこと繋げている。


 一方、その結界が繋がれる直前に岸間さんが剣で殴り倒した鬼面は、何故か地面の上に倒れることもなく煙と化していた。それを見て失笑する。


 ――兄上が私を "敵" と判断した。


 その術は兄上と契約した一握りの鬼面所有者にしか扱えない。そして鬼面所有者は、兄上の命令ではない限り外の世界で動くことは出来なかった。まして私達がここに集まっていることを解っていたとすれば、妹である私を狙うことはしないはず。


 つまり、私は見捨てられたのだと瞬時に判断した。

 故に、不思議そうにその光景を見ている岸間さんを見て答えることにした。


『瘴気で集められた悪霊だから、この瘴気が絶えない限りは、ほぼ無限大に湧いて来るわ』

『いくら倒してもキリが無い訳、か』

『じゃぁ、どうする?』


 岸間さんの結論に答えた千尋が私を見る。

 が、残念ながら妙案は思い付いていない。


 こんな会話を繰り返している間にも、黒い仮面を着けた悪霊は私達の周囲に湧いている。


 どうしよう、と私の焦りが募る。瘴気を絶つ手段、なんて……。


『瘴気を浄化すれば良いの?』


 千尋がそう私に訊ねていた。

 目を丸くして千尋を見る。


『出来るかもしれない……薄い "悪" なら浄化出来るから』


 しかし、浄化はかなり身体に負担をかけることになる。

 が、それも解っていたのか、千尋は私に頭を横に振っていた。


『大丈夫、任せて』

『じゃ、私らで千尋を守るよ!』


 岸間さんのそんな一言で、早くも本谷さんは前方の結界を弱めていた。


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