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143 ▲(☉) 展示会②

 入場チケットで園内には入ったものの、最後にここに来たのは幼稚園くらいの頃だったためか、ほぼ初めての感覚で紗穂里と共に歩いていた。

 ちなみに、紗穂里のママは過去にパパとデートで使用していたらしく、何度も1周したこともあるとか語っていたが。


 かなり奥にサーカスのテントらしきモノが見える。

 なお、紗穂里は何年か前にはお姉さんと良く来ていたらしく、スムーズに先を進んでいる。


 とはいっても、道は1本しかあってないようなもので、真っ直ぐ歩いていただけでその展覧会会場の建物には到着してしまっていた。


「さて、そろそろお昼近いのだが、どうする?」

「あれ、もうそんな時間?」


 驚きながら携帯を見れば、確かに針は13時を指そうとしていた。


 良く考えれば、紗穂里の家はどちらかといえば海側。

 都内に住んでいるとは言っても、動いていた私鉄が少なかった影響で乗り換えを5回以上はしていたことを思い出す。(私は乗り換えに弱いから紗穂里に付いて来ただけだが。)


「どうしようか。その辺の出店で済ます?」

「それか、入口付近にあったレストランか、この奥にある喫茶店か、になるデショ」

「良くご存じで」


 そう答えながらも、色々と周囲を見ながら考える。


 建物の周囲には出店が多かった。そんなに客も居ないからか、並ばずとも買えそうな場所は多い。

 今居る辺りならテーブル席も1組のカップルが居るだけで、かなり空いている。


 が、生憎の晴天の所為で日焼けは覚悟しなければならなそうだった。


 ゴーカートの奥にプール利用者用の大きめの滑り台が見える。


「そっか。ここ、一応プールがあるから外で食べられる場所があるんだね?」

「デショ。一応、レストランも外の席があるから水着に軽く乾いたモノを羽織ってこっちに来ることも出来るデショ。まぁ、ボクがプールに来たのはかなり昔の話しだが……」

「なるほどね。じゃぁ、暑いし……レストランか喫茶店で」

「ガッツリ食べられなさそうだから、喫茶店だと有難い」

「それで良いよ」


 そう答えたくらいには、紗穂里は既に歩き出していた。



 電波ジャックはあっても、太陽による自家発電が主流になっていた近年では、どの企業もある程度の電気の蓄えはある様子だった。恐らくは、この遊園地もその1つだったのだろうと思う。

 また客側も、何事も起きていないかのように遊んでいる。


 不安や恐怖に襲われていたのが馬鹿馬鹿しく思えるほど、本当にこの国は平和だなぁ、なんて暢気に思っていた。



 2人で軽食を終えて外に出ると、少しだけ雲行きが怪しくなっていた。が、そのお陰で直射日光からの暑さは無くなっていた。


 同じ建物の中でお手洗いを済ませて、展覧会の建物に向かって歩き出す。


 すると、メリーゴーランドの近くで紗穂里が足を止めた。


「……千尋?」


 思わぬ単語に私も目を丸くして前を見れば、呼ばれた本人が同じような驚いた顔でこちらを振り返っていた。

 それは紛れもなく、千尋と風見だった。


 2人して懐かしのパンツスタイルの双子コーデで決めている。

 が、美人な2人にはそれがとても似合っていた。


「え、何で紗穂里と……香穂里まで居んの??」


 千尋が驚いて訊ねている。

 が、それはこちらの台詞だった。紗穂里が真っ先に口を開く。


「キサキさんの展覧会があるって、新聞を見て知って……そういう2人も?」

「ううん。キサキさん、今海外出張中で、直接所属事務所に連絡してみたら、代わりに展覧会のチケットを送ってくれたんだよ。でも、その直後に例の事件で連絡、出来なくなっちゃって……」

「(携帯が)止まっているからね」


 答えつつも千尋と2人で携帯の電波を確認し、思わず一緒に溜め息をついてしまった。


「でもまさか、2人も来ているとは思わなかったデショ」

「それは……って、純、」


 思わず千尋の目線の先を見れば、風見がキョトンとした表情で私らを振り返っていた。

 が、風見は既にメリーゴーランドの柵の中に居る。


 私らが唖然としている間にも、風見は嬉しそうに乗るモノを吟味し始めていた。


「……あの風見、だよね?」


 私は思わず千尋に訊ねていた。

 普段の風見とは思えないほど笑顔で楽しんでいる。


 紗穂里も同感だったのか、千尋の反応を待っている。

 が、千尋も諦めた様子で頷いていた。


「これで、もう12回目……かな」

「えっ?!」 「はぁっ?!」


 ほぼ同時に紗穂里と驚きの声を上げていたものの、その声はメリーゴーランドの始動を示す音楽で掻き消されてしまった。

 しかし、その反応を解っていたのか千尋は失笑している。


「ハマっちゃったみたいでね……」

「……あの風見さんが……」


 いつもはあまり動じない紗穂里さえも、こればかりはワナワナと唇を震わせて驚いていた。


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