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さくらは善か悪か(仮)・輪廻篇  作者: 葉月雷音
廃病院と失われし過去
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126 ▲(⛩☴) 廃病院④

ホラーっぽくないけどホラー回①



 箱をリュックの中に入れ、私達は早足で階段を降りていた。

 既に濃霧の9階は降りていた――はずなのだが、何故かその濃霧が全体的に建物を覆い始めていた。


 更に恐ろしいことに、そんな私達の背後からはカラカラ、ペタペタ、という音が近づいてきている。


『ひいいいぃぃぃぃ!!!』


 怖がる千尋が私の腕にしがみ付いていた。

 ……正直ウザイのだが、何せ "リアルゾンビ" に追い駆けられる羽目にはなるとは思ってもいなかっただけに、私も内心では冷や汗を掻いている。


 というか、死体が動くとか有り得ない!

 私達は悪夢を見ているだけなのだ!!


 と後ろの実物を見ていなければ実にそう思い込みたかった。


 とはいえ、死体の狙いは解っている。


『箱を置いて行けば……良いのだと思うのだが……』

『それは絶対にダメよ!』


 風見さんの睨みに私は溜め息をつくしかなかった。


 もっとも、リアルゾンビは院長の1体だけ。

 他は私達が蹴ったり踏み壊したりしてしまっているものの、追い駆けて来ることはない。(ただし、その音でも千尋は酷く怖がっているが。)


 魔力を結界で使っている分、魔力を消費して走ることは難しかった。


 ある程度の距離をおいたところで病院の外に出られたら(人目に付くので)どうにかなるのではないか、と話し合った私達は、とりあえずリアルゾンビに追い駆けられる恐怖を味わいながらも、その距離を保ちながら急いでいる。

 ゾンビゲームで有名な "バイオ戦争" を平然とプレイしていた香穂里なら、もしかしたらまともに相手を殴り倒してくれたかもしれないが。


 病院の1階、出入口まで戻って来たところで、その扉が固く閉ざされていることに真っ先に気が付いた。

 手を伸ばした風見さんが何度も扉を強く引いたり、押したりしたものの、ビクともしない。


 その間に、リアルゾンビの音は1階まで降りてきたことを伝えていた。


『く……っ』


 風見さんが片足を折って床に付く。


『魔力が尽きそう……』

『やだ!? こんなところで、冗談はやめてよ……!!』

『冗談を言える状態ではないデショ!!』


 千尋にツッコミを入れて、私も同じように扉を掴もうとした。

 が、それを風見さんに止められる。


『魔力を奪われる結界が張られてあるわ』

『何だって?!』

『だから、下手に掴むと……』


 その間にも音は近付いて来る。

 すると、千尋が金色の目で笑い出す。


『な、なぁんだ……扉、普通では開かないだけよね?』

『……千尋?』

『じゃぁ、』


 急に立ち上がった千尋が両手の間に魔弾を溜め始めていた。

 私は慌てて風見さんの腕を引っ張って手を扉から離させる。


『壊せば良いじゃない!!』


 間一髪。

 魔弾が私の脇を通って扉に当たっていた。


 向かいからは砕け散るガラスが飛び、背後からは何者かの叫び声が聴こえる。


 だが、そのお陰で我に返ったらしい千尋が真っ先に外に飛び出したのを見て、私は風見さんと共にそれに続くことが出来た。


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