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さくらは善か悪か(仮)・輪廻篇  作者: 葉月雷音
廃病院と失われし過去
120/254

120 ⛩(☴▲) 廃病院①

 正直、紗穂里が居たことには驚きを隠せなかった。むしろ、こんな場所で再会出来るとは思ってもいなかっただけに嬉しくも思う。

 が、これから行く場所は緊張しておかないと何が起こるか解らない。

 だからあまり笑顔を作れそうにも無かった。


 ともあれ、紗穂里の事情を聞いて理解もする。


「まさか、香穂里も入院していたとはね……」

「も、ということは?」

「私の兄も、そして純もここに入院していたのよ」


 ――そう。


 栗原病院に入院していたのは純も同じだった。純の場合は、死神様の施した封印の所為で記憶障害だった挙句に改竄までされたようだったが……それでも、記憶に纏わることを実験していたことには変わりないようだった。

 兄もここで異変があったとしか思えない。


 ――それらが偶然の一致には思えない。


「中、入る?」


 私は純に訊ねた。

 純は頷いて答える。


「えっ?! でも、毒が充満しているって……」

「そうね。だから強力過ぎるほどの結界が何重にも張られているわ」


 紗穂里の質問に答えた純が真っ先に立ち入り禁止の内側に入る。


「でも、私は進まないといけないの。ここではまだ、立ち止まれない」

「って純が言うから私も付き合うけど、紗穂里はどうする?」


 内側に入りながらも今度は紗穂里に訊ねた。

 だけど、紗穂里も既に決まっていたのか、ロープを跨ごうとしている。


 不安はあったものの、1人増えるだけでこんなにも心強くなるとは思ってもいなかった。



 私達の事情は向かいながら紗穂里に話した。

 最初は純が風神という件だけでも驚いていたものの、納得したのか最後には笑顔を見せてくれる。


「でも、世界を消滅させるって……そんな大それたこと、本当に出来るのデショ?」

「出来るわよ」


 それまで黙っていた純が答える。


「天界と地界と境界と、後は小さな世界がいくつかあって、それぞれが上手いこと均衡を保っているからこの世界、つまり地界は守られていたの。でも、天界が崩壊した今、その均衡は既に崩れているわ。本来、境界も全てどこかでは繋がっている世界だったはずだから、それが点在しているということは、つまり既に崩壊が始まっているということだと思うの」

「それは風神の記憶?」

「そうよ」

「それが改竄されている恐れは無い?」


 紗穂里の一言に、私達の前を歩いていた純が急に立ち止まった。そしてゆっくりとこちらを振り返る。

 それは私も一度は思ったことがある。だけど、


「無い……と思いたいわ。そう思わないと、何を信じていいのか解らなくなってしまうもの」

「まぁ、ね」


 純の返答に紗穂里も納得せざるを得なかったのだと思う。


 記憶が改竄出来るのであれば、核自体の記憶が改竄出来ないとは言い切れない。

 でも、それを言ってしまったら本当にもう、何を信じれば良いのか解らない。


 前に咲九が言っていた "情報の選択" という言葉を思い出す。

 正しく、今それが必要な時だと実感した。


 まだまだ話し終えていない話しをしながらも、純が建物の結界を数秒ほどで解除し、3人で建物の傍まで進んだ。

 中は日中だというのに薄暗くて不気味な雰囲気を醸し出している。


『一応、結界を』


 純に言われた通りに結界を自分に張る。

 紗穂里も結界を張ったことを確認した純は、建物の入口の頑丈そうな戸を手前に引いた。


 意外にも鍵はかかっておらず、すんなりと戸が開かれる。

 が、中に入る前からその異様な空気に気圧されてしまう。


『 "悪魔の部屋" 』


 不意に紗穂里が呟いた。純が頷いている。


『この建物の内部自体、”悪魔の部屋" と化しているのかも。だから周囲にもその瘴気が漏れ出していた……のデショ』

『それだけじゃないわ。この空気……気化した "神毒" が濃厚に充満しているのだと思う』

『その "シンドク" って……もしかして "神薬" のこと?』

『そういう呼ばれ方もしていたわね』


 純は答えながらも一歩を進み出す。

 だけど、紗穂里はブルッと震えて動きそうにも無い。


 真っ先に気付いた純が紗穂里を振り向いて訊ねる。


『どうかしたの?』

『 "神毒" ってことは……吸い込んだら、ボク達、死んじゃうんじゃ……』

『属性神には効かないわ』


 ほぼ即答だった。金色の目をした純が答える。


『でもこれも、風神の記憶。私は自分を、風神を信じる為にも進むわ』

『そうね』


 私もそう答えて一歩進んだ。


『神様が神様を信じないで誰がいつ証明するの? 今でしょ!』

『そのネタ、ちょっと古いかも……デショ』


 そう答えながらも、紗穂里も私達と一緒にその一歩を踏み出す決意をしてくれていた。


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