第96話 ヒルダからの通信
そして次の日。
部屋で朝食をとったあと、ナビゲーションボードにヒルダから通信が入ってきた。
「コーディ!……良かった、目が覚めたんだな」
ヒルダの隣に、コーディが立っていた。
〝おかげさまで、もうほとんど良くなったよ。後は細い調整が済めば合流できそうだ〟
そこでコーディは首を傾げた。
〝君の方こそ大丈夫かい?少し疲れているように見えるけど……〟
「これは……半分以上リナベルのせいだな」
俺は昨日の出来事をコーディに話した。
……リナベルから散々血を吸われた後に、ようやく猿轡と手の拘束を外してもらって、異常解除をかけてもらえたことも。
〝あはは……それは災難だったね〟
「いや、笑いごとじゃないんだって……」
俺はコーディに抗議した。
〝……で、無事に竜の宝玉は女王様に届けられたのかい?〟
横からヒルダが尋ねてきた。
「ええ、当たり前でしょ。ちゃんと届けて報酬も頂いたわ。でも、役に立つだろうからって、また貸してくれたのよ。ね、ライト君」
「うん。……ほら」
俺は宙に手を突っ込んで、竜の宝玉を取り出した。
……でも収納魔法の空間の中は窮屈そうだし、どうしたもんかな。
「そなたの望む形に姿を変えよう。想像するがよい」
考えていたら、竜の宝玉から提案があった。
その竜の宝玉の言葉に、コーディとヒルダが驚いている。
「ほんとか?……じゃあ……」
俺は小鳥の姿を想像した。
すると、竜の宝玉が光を放ち、まさに俺が想像した通りの小鳥の姿になった。ただし、まるでガラスの置物のように透明なままだけど。
「ははは。これはなかなか良い」
そう言うと、竜の宝玉は部屋の中を飛び回り始めた。
〝……どっから突っ込んでいいか分からないけど、それ、喋れたんだねぇ〟
「そうなんだ、女王様が呪文を唱えたら、喋れるようになったんだよ」
ひとしきり飛んだ後、竜の宝玉は俺の頭の上に着地した。
「そうそう、それと、女王様から新しい依頼があったわ。精霊竜の力を束ねる……まぁようするに、ライト君がまだ契約していない、力のある精霊竜を探して契約して欲しいってことみたいね。どうやらインディアにいる司祭……ライト君のおじいさんが居場所を知ってるみたいだから、次はインディアに行こうと思ってるんだけど」
〝なるほど……〟
「コーディはゆっくりしてていいわよ。まだ情報収集の段階だから」
〝わかった。一応リナベルたちも気を付けてね〟
「了解よ」
〝じゃあ、そろそろ……〟
「……待ってくれ」
通信を終わろうとしたヒルダに、声をかけた。
〝ん?どうしたんだい?〟
「一つ……聞きたいことがあるんだ」
あまり、先延ばしにするのも……良くないだろうから。
俺は大きく息を吐いた。
「その……、前に機神がネイティブガンナーの人たちを捕まえて、自分たちの仲間に引き込んでたって話をしてたよな?」
〝ああ、そうだね〟
ヒルダは俺の質問の意図を、注意深く探っているように見えた。
「……機神にされたネイティブガンナーの人たちは……元に戻れた……?」
ヒルダも、少し息を吐いた。
〝……いいや、残念ながら元には戻らなかったよ〟
「……そっか……」
ベヒモスに、まずは救う方法があるか聞いてみろと言われた時も、どこか頭の片隅では分かっていたように思う。だけど、信じたい気持ちの方が大きかった。
……師匠はもう戻らない。
となれば、やれることは一つしかない。
けど……まだ踏ん切りがつかないのだった。




