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ある冒険者たちが世界を救うまで  作者: 如月つばさ


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92/120

第92話 前払いの品

 謁見の間にいる全員が、レヴィアタンの消えていった空間をしばらくの間見つめていた。

「……どうあっても、俺が受けなきゃいけないんですね」

 ややあって、俺はぽつりと呟いた。

「うむ。まだ踏ん切りがつかないか?……そうだな、今なら前払いで、これをやろう」

 女王様はにやりと笑って、服の袖から包みを取り出して広げた。


 中には植物の種のような物が入っていた。

 あの特徴的な形は、まさか……!

「ハクリュウソウ!……ですか!?」

 俺の食い付き具合に、女王様はにっこりと笑った。

「さすがだな。幻と言われる花の種の名を即座に答えられるとは。……やはり草花を育てていたか」

「えっ!? 何で知って……」

 目を白黒させる俺の反応を愉しんでから、女王様は口を開いた。

「我が城には、いたるところに花を飾らせている。その花は城下町の店から仕入れているのだが、時折よく保つ丈夫な花があってな。気になって店主に仕入れ先を尋ねたところ、たまにやってくる行商が仕入れてくるものだと言う。さらに調べると、その行商はインディアという辺境の村に行っていることがわかった。その村にいる黒髪で翠の瞳の少年から買い取っているという。それはそなたのことで間違いないな?ライトよ」

「そ、そうです……」

 まさか俺が育てていた花が王城に飾られていたなんて……。


「そなたが育てた花は丈夫で美しい。私も満足している」

「あ、ありがとうございます……!」

 努力してたことが認められるのは、やっぱり嬉しいよな。

「私が知っていたのはそういう訳だ。……それでどうする?依頼というか……この任務、受けてもらえるか?」


 物に釣られるのもどうかと思うけど、あれは欲しい。幻と言うだけあって、滅多にお目にかかれないからな。

「わかりました。謹んでお受けします」

「うむ。……では、これはそなたのものだ」

 女王様はハクリュウソウの種の入った包みを宰相に渡し、宰相が俺の側までやってきて包みを渡してくれた。

「さて、そなたたちも色々あって疲れただろう、今晩は城での帯在を許可しよう。ゆっくりと休むがよい」

 その女王様の言葉をもって、俺たちの謁見は終了したのだった。


 その後、再びアーウィンと合流した。

 アーウィンは俺たちを部屋へ案内した後、優雅に一礼し去っていった。


「リナベル、また……」

「ええ、あの視線ね。……いったい何なのかしら?」

 俺とリナベルは、テーブルを挟んで向かい合わせに座り、お茶を飲んでいた。

 この部屋に来る途中、回廊で1回、廊下で1回、あの視線を感じたのだ。

「あっ、そういえば……イヤーカフ付けるの忘れてた」

「いや、さすがに謁見する時に付けたらダメでしょ。でもここはノルドツァンナやスールブリッサじゃないから、大丈夫だと思うけど……」


 その時、部屋の扉をノックする音が聞こえた。

「はい、どうぞ」

 リナベルが答えた後、入ってきた人物を見て二人で驚いた。

「女王様……!」

「少しお邪魔するよ」

 女王様はそう言って、空いている一人掛けの椅子に座った。

 どうやら、またしても一人のようだ。多分護衛は廊下にいるんだろうけど。

 ……面倒臭い話じゃなければいいなぁ。

 なにやら箱を抱えている女王様を、俺は用心深く目の端でうかがったのだった。

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