第91話 女王からの依頼
女王様の隣に立つ宰相みたいな人が、一歩進み出て一礼した。
「ここからは私、アーイディオンポースの宰相を務めるエストラ・サーディオルスから説明しましょう。……あなた方が参加した、機神の基地を破壊する作戦後、スールブリッサの騎士団やノルドツァンナの軍、そしてガーディアンフォースは相応のダメージを受けましたが、機神の数は激減し、それ以降に被害が減ったとの報告を受けています」
宰相は手に持った紙の束の、一番上の一枚をめくった。
「ただ、あなた方がジェラルド団長に報告した通り、三巨頭の一角である天のヴァルドファードが復活してしまったため、向こうの態勢が整えば、また機神による被害が増えることが予想されます。そうなる前に、天のヴァルドファードを含めた機神を一掃したい。そのために、ライト、あなたに精霊竜の力を束ねてもらいたいのです」
そういう事か……けど。
「待って……ください。俺が精霊竜を呼べるってこと……」
今度は女王様が口を開いた。
「この作戦を進める上で、ジェラルド団長より各国の王に共有があった。ただ、名は伏せられていた。……が、そなたにとっては気休めにもならんだろう、ノルドツァンナのディムヘルト王に囲われそうになった身としては……」
「どうしてそれを……」
「ジェラルド団長からだ。……精霊竜を呼べる者がいると共有があった際、クラウストルムの王とスールブリッサの王は表情に出さぬよう努めていたが、驚いていると分かった。だが、ノルドツァンナの王と私は振りだけだと気付かれてな。会議が終わった後に、団長から二人きりで話をしたいと言われ、そなたが精霊竜の剣を生成したことも真実だと聞いた。そして、そなたの自由を守ってほしいとも」
女王様は真っ直ぐに俺を見た。
「……ジェラルド団長は余程そなたのことが気に入っているとみえる。自身はノルドツァンナのギルドに所属しているにもかかわらず、自国の王に引き渡さず、他国の王を頼るくらいだからな」
ジェラルド団長……。
「約束した以上、私もそなたの自由は保障しよう。ただ最近、我が城にも物騒なことを考える輩が……おっと、これは後にしよう。……ところでライト、今ここに精霊竜を呼んでもらえないか?」
「えっ?ここに……ですか?」
「そうだ。そなたが契約している精霊竜は今何柱いる?」
「……ベヒモス、サラマンダー、レヴィアタン、ティアマト、ヨルムンガンドの5柱です」
「ベヒモス……?聞かぬ名だな。ふむ、では……レヴィアタンを呼んでほしい」
「……わかりました」
俺は首から下げている透き通った水色の牙に手を当てて願った。
「レヴィアタン、来てくれ」
すると、青い鱗に覆われた、蛇のような長い体で翼のある竜が現れた。
〝どうした、ライトよ〟
「ええと、女王様からあなたを呼んでほしいって言われて……」
見ると、女王様を含めた4名が口をあんぐりと開けていた。
「前に呼んでもらったティアマトは唸っているようにしか聞こえなかったが、本当にライトと会話をしていたのだな……」
「その宝玉のおかげで我々も精霊竜の声が聞けるのですね……」
女王様がぽつりと漏らし、宰相がしみじみと呟いた。
そして、その声を拾ったのか、レヴィアタンが女王様の方を向いた。
〝我に何用ぞ?〟
「はっ……これは失礼を。私の名はエウスレーカ・フレナ・アーイディオンポース、以後お見知りおきを……。実はお尋ねしたいことがありまして……そこにいるライトが契約していない、力のある精霊竜が宿っている場所をお教えいただきたく……」
女王様の問いに、レヴィアタンは少しの間、虚空を見つめていた。
〝……我が知るは古き場所……現在ならばインディアの司祭に尋ねるがよかろう〟
「わかりました。ありがとうございます」
〝うむ。他になければ戻るが……よいか?〟
俺が女王様を見ると、女王様はうなずいた。
「うん。ありがとう、レヴィアタン」
〝礼には及ばん〟
そう言って、レヴィアタンは空気に溶けるように消えていった。




