第90話 再びの謁見
俺たちの乗ったワイバーンは、城の中庭のような所に着地した。
すぐにお世話係の人たちがやってきて、俺たちが降りる手伝いをしてくれた後、騎士と一緒にワイバーンを連れていった。
リナベルとその様子を見ていると、一人の軽装備の男性が俺たちの前にやってきて、優雅に一礼した。
「お久し振りでございます。近衛のアーウィンです」
以前、女王様に謁見した時に、宿まで迎えに来てくれた人だ。
「ここからは私が案内いたします。どうぞこちらへ」
アーウィンは俺とリナベルを伴って歩き始めた。
中庭のような所から少し歩くと、回廊に出た。
美しく手入れされた庭園がよく見える。
その時だった。
「リナベル、今……」
俺は小声でリナベルを呼んだ。
「ええ、変な視線だったわね……」
リナベルも気付いていたようだ。
確認や好奇心じゃない、鋭い視線。まるで獲物を見付けた時のような……。
アーウィンは気にする素振りもなく、前を歩いている。
「とりあえず様子を見ましょうか」
小声で言ったリナベルに、俺はうなずいた。
そして謁見の間の前室へとやってきた。
「……もう少しかかりそうですね。申し訳ありませんが、今しばらくお待ちください」
アーウィンの言葉に俺たちはうなずいて、そこにある椅子に腰掛けた。
それから20分ぐらいして、ようやく俺たちに声がかかった。
大きな門をくぐり、女王様の前まで進み、片膝をついて礼をする。
「ガーディアンフォース所属のリナベル・スカーレット及びライト・アルトノートです」
近衛兵がよく通る声で俺たちの名を告げた。
「面を上げよ」
女王様の許しを得て、俺とリナベルは顔を上げた。
「ガーディアンフォースのジェラルド団長から聞いている。ついに竜の宝玉を機神の手から奪還したそうだな。早速見せてもらえるか?」
「はい、分かりました」
リナベルが宙に手を突っ込んで、竜の宝玉を取り出した。
あれ以上力を使われては堪らないと、ここに着く前にリナベルに取り上げられたのだ。
リナベルの側にやってきた近衛兵が持っているクッションの上に、竜の宝玉を乗せる。
近衛兵は女王様の所まで歩いて行き、恭しく竜の宝玉を差し出した。
女王様は竜の宝玉を手に取って、しばらく眺めていたが、突然右手を上げた。
「人払いを」
その短い言葉で、謁見の間にいた人々が殆どいなくなった。
残っているのは女王様の隣に立っている宰相みたいな人と、二人の護衛の騎士だけだった。
「リナベル、ライト、ここからは自由に発言することを許そう。……その前に」
女王様は竜の宝玉に向かって、呪文のようなものを唱えた。
すると、竜の宝玉が一瞬、光を放った後……。
「……我を開放したのはそなたか?」
喋った……!
「はい。私の名はエウスレーカ・フレナ・アーイディオンポース。どうかあなたの力を貸していただけないだろうか?」
「我が力を借りて何とする?」
「私たちに精霊竜の声を届けてほしい」
「ふむ……良いだろう」
女王様は竜の宝玉に礼を言った。
そして、改めて俺たちを見た。
「竜の宝玉についての依頼はこれにて完了だ。ご苦労だったな、約束通り報酬を支払おう。それと……もう一つ仕事を頼みたいのだが、受けてくれるか?」
「ええと……内容によりますが……」
「ふふっ、慎重だな。だが、どのみち……そなたに受けてもらわねば困るのだ、ライトよ」
「えっ!? お……俺ですか?」
「そうだ。この依頼は私からというよりは、ジェラルド団長からという方が正しいかもしれんがな」
「それは……もうほぼ任務ですよね……」
「ははは、そう捉えてもらっても構わぬ。その前に……まずは少し状況の確認をしようか」
女王様はそう言って、隣に立つ宰相みたいな人に声をかけた。




