第86話 竜の宝玉の力
俺は気分転換しようと、外の空気を吸いに洞窟から出ていた。
空は夕焼けでオレンジ色に染まっていて、とてもきれいだ。
コーディは俺が側に行っても起きることはなく、良く眠っていた。顔色も良くなっていたし、呼吸も落ち着いていたから、もう大丈夫だろう。
リントヴルムもまた、どこかへ出かけているようで姿が見当たらなかった。
暇をみて、ちょくちょくエネルギーを補充しているけど、大丈夫かな?
まぁ、なくなりそうだったら帰ってくるよな。
〝ライト、宝玉が外に出して欲しいそうだ〟
そう言って、後ろからベヒモスが俺の背中をつついてきた。
「宝玉……、ああ!」
俺は宙に手を突っ込むと、竜の宝玉を取り出した。
心地良い感じと、少しほっとした雰囲気が辺りを満たす。
「もしかして、息苦しかったのか?」
そうだという意思のようなものが伝わってきた。
「そりゃ悪かったよ」
その俺の言葉に、ふんわりとした雰囲気が竜の宝玉から漂ってきた。
「怒ってはいないってことでいいのかな?」
〝……宝玉と言葉を交わすか〟
「え?……いやいや、感じしか分からないんだけど?それを言うならベヒモスだって、よく収納魔法の中の竜の宝玉が出たがってるって分かったな?」
〝我は腐っても精霊竜だ、そのくらい分からなくてどうする〟
「あ、そっか……」
竜の宝玉は、大巫女様が精霊竜からもらったものだっけ。
確かじいちゃんが言ってたな、様々な命の力を増幅し、そこに新たな生態系を作り出すほどの力を持ってるって……あ。
「いいこと思いついた。ちょっと力を貸してくれるか?」
竜の宝玉に確認すると、いいよという意志のようなものが伝わってきた。
〝何をする気だ?〟
「まぁ見ててくれ」
俺は竜の宝玉を地面に置いて、右手をつき目を閉じた。
そして大地に眠る種子に力を送り、イメージする。
そこに広がるは緑に包まれた島。
すると竜の宝玉から力が流れ込んできた。
……目覚めよ。
〝まさか……!〟
ベヒモスが驚く気配がした。
俺が再び目を開けると……景色が一変していた。
「え?あれ……確かにイメージ通りなんだけど……ここまで完璧に再現できてるなんて……」
そこは木々が生い茂り、緑豊かな島となっていた。
そして何より驚いたのは……。
「力を使ったあとにぶっ倒れてない!」
俺は地面に置いた竜の宝玉を拾い上げた。
「お前のお陰だよな、ありがとう!」
竜の宝玉もふんわりと優しい雰囲気を漂わせている。
〝……素晴らしいな、まるで大巫女が帰ってきたようだ〟
ベヒモスが俺の背中に鼻先を擦りつけてきた。
「ちょっ……くすぐったいって」
更にベヒモスは俺を咥えて横になり、身体の上に俺を乗せた。
ちょうど夕日が水平線に沈んでいくのが見える。
〝この宝玉があれば、お前の夢の実現がだいぶ近付くのではないか?〟
「確かに。……でも、アーイディオンポースの女王様に届けないといけないことになってて……。貸してもらえるといいんだけど」
〝なに、その時は我も頼んでやろう。まさかその女王とやらは精霊竜の頼みを断ったりしないであろう?〟
「ははっ、そうだよな。ありがとう、ベヒモス。その時はよろしく頼むよ」
〝任せておけ〟
その自信満々なベヒモスの言葉に笑いながら、夕日が沈んでいった空を二人で眺めていたのだった。




