第80話 竜の宝玉を求めて
目を開けると、金属っぽい材質で出来ている通路みたいな所だった。
この感じは奴らの施設ってことで間違いない、基地の内部に転送されたんだな。
俺を呼ぶ声……のようなものはまだ続いている。
「早く見付けて脱出しましょう、巻き添えを食うと大変だわ」
「うん。……こっちだ」
俺は声のようなものを辿って通路を進んでいく。
最低限の警備の機神しかいないのは、地上で戦闘が行われてるからだろう。
もちろんリナベルやコーディの敵じゃない。出会い頭に破壊されていた。
「……この部屋だ」
とある部屋の前で、声のようなものが大きくなった。
扉は閉まっていたため、コーディが横に付いている箱のようなものに手をかざして目を閉じた。
少しして、扉が左右に分かれて開いた。
「!!」
中には、あの紅い機神がいた。
アクセラバードやグラナギアと比べるとスレンダーなボディ、右手に剣、そして左手には魔法陣符を携えている。
俺と同じ戦闘スタイル……やっぱり。
「師匠……、師匠なのか……!? 俺だ、ライトだよ!」
届くか分からないけど、呼びかけずにはいられなかった。
「ライ……ト……」
紅い機神が俺の名を呟いた。
「俺が分かるのか……!?」
「ウゥ……」
紅い機神は剣を放し、右手で頭を押さえた。
「まさか……本当にマリーなの……?」
リナベルも紅い機神の様子に驚いている。
その時だった。
突然背後に現れた何者かに、首を絞められた。
「う……!!」
目の前の紅い機神に気をとられ、全く気付けなかった。
「何をしている、こいつらは侵入者だ!」
この声は……フェルド!
そのフェルドの声に、紅い機神は剣を拾い、戦闘態勢をとった。
「やれ!」
紅い機神はリナベルとコーディに襲いかかる。
「くっ……やり辛いわね……!」
リナベルは斬りかかってきた紅い機神の剣を避けた。
「お前はアクセラバードの所に届けてやる、このまま落ちろ!」
フェルドが俺の首を絞める手に力を込めた。
奴の失策は俺の口を塞がなかったことだ。
「身体強化<全>300%、継続回復」
小声で唱え、首を絞めるフェルドの腕に右手をかけ、握り込む。
指先が鈍色の外皮にめり込んで粉砕した。
「ぐああっ……!」
フェルドは堪らず俺の首から手を外した。あんなでも痛覚はあるらしい。
「げほっ……」
急に息を吸いこみすぎた。
「お前……本当に人間か!? 有り得ない……オレの腕を素手で傷つけるなど……!」
ああ……真祖から鍛えてもらったからな、化物の域に片足を突っ込んでてもおかしくない。
俺は消耗を抑えるため、いったん身体強化と継続回復を解除した。
「……アクセラバードから聞いた時は何かの冗談かと思ったが……。お前を天の座に迎えるから、見付けたら生かしたまま捕らえろとは……その人間離れした力が理由か!?」
俺は答えない。
「……生きていればいいのなら、腕の1本や足の1本がなくても構わないってことだろう?……この腕の代償は高くつくぞ!」
フェルドは銃を構え連射してきた。
この位置は……まずい!
俺は「魔法盾」の魔法陣符を使用し、フェルドの銃撃を防いだ。
避けたら危うく向こうで戦ってる二人に当たるとこだった。
あいつ……分かっててやったな!? ……俺も容赦しねぇ……!
「炎」「水」「岩」「風刃」の魔法陣符を立て続けに使用した。
爆発の後に岩と風の刃がフェルドに襲いかかる。
ついでに「氷」の魔法陣符を使用、少し魔力を流して形態変化させ、無数のつららに変えた。
「ぐおおおおっ……!!」
フェルドは全て喰らっていたが、まだ立っていた。
こいつもタフだな……!
だけどあと一息だ。
足掻きとばかりに銃撃してきたが、今度は避けた。
「これでもくらえ!“暴風刃”!!」
フェルドに竜巻のような風が襲いかかり、巻き上げてズタズタに切り裂いた。
落下し床に叩きつけられたフェルドは気絶している様で動かない。
「……“凍結”」
氷がフェルドを覆い尽くす。
ルフトカイザーの時のようにはいかない。
俺がフェルドにとどめを刺そうと動きかけた時、目の前にコーディが吹き飛ばされてきた。
「コーディ!」
側に駆け寄り、状態を確認する。
左肩にひどい火傷のダメージがあり、回復で治療した。
「ありがとう、ライト。……避けたつもりだったのに、あの紅い機神、同時に2つの魔法を発動してたみたいだ」
そう言いながらコーディは立ち上がった。
同時に2つの魔法……。そんな芸当は普通の魔術士には出来ない。
「……師匠は……“両の腕を振るう者”……異なる2つの魔法を同時に発動できたんだ。あの紅い機神は……ほんとに師匠なんだな……」
俺は右手を握りしめた。
「ライト……」
紅い機神の方を見ると、リナベルがお返しとばかりに回し蹴りをヒットさせ、壁に叩きつけていた。
「……そこまでにしていただきましょうか」
その言葉とともに現れたグラナギアが、空中で紅い機神をキャッチした。
小脇にはフェルドも抱えられている。
いつの間に……!?
「ワタシの可愛い人形たちを壊されてはたまりません、戦闘のデータも取れたことですし、ここは引かせてもらいましょう……上のヒトたちの相手も任されているので、こう見えても忙しいのですよ。それでは」
そう一方的に喋って、グラナギアは姿を消した。
人形、だって!? 人を何だと思ってるんだ……!
「ほんとイラッとくるわね、あいつ……」
珍しくリナベルも感情を露わに憤慨していた。
「しばらくこのイライラは収まりそうにないけど、今は竜の宝玉のことを考えることにするわ。……この奥かしら?」
リナベルが近くの壁に扉を見付けた。
「……うん、そっちから……聞こえる」
「コーディ、お願い」
リナベルの呼びかけに、コーディはうなずいて壁の横にある小さな箱のようなものに手をかざした。
しばらくすると、扉が開いた。
その先は通路になっていて、声のようなものに導かれるまま、俺たちは通路を進んでいくのだった。




