第79話 開戦
そして次の日の早朝。
目的の場所にあと少しで差しかかるという所で、ジェラルド団長から通信が入ってきた。
リナベルが応答する。
「こちら悠久の翼よ。もう間もなく到着するわ」
〝確認できている、そのまま聞いてくれ。……そろそろ時間らしい。ノルドツァンナの軍から通達があった。作戦のおおまかな内容だが、俺が王の盾を召喚したら開戦だ。こちらに一番近い塔1本を王の盾が破壊する。君たちは空から残り3本の塔を破壊してほしい。破壊が完了次第、地上より基地へ総攻撃をかける。君たちはそれには加わらず離脱してほしい〟
「いいの?」
〝かなり消耗するのではないか?無理はさせられない〟
ジェラルド団長は誰がとは言わなかった。
「そうね……分かったわ。ありがとう」
リナベルは俺に向けてウインクした。
〝もし劣勢になるようなことがあれば、再び連絡する。その時の為に、近くで待機していてくれ〟
「了解」
〝よし、では行こうか。……召喚魔法陣起動、いでよ、王の盾〟
現場上空に差しかかったリントヴルムの遥か前方に、王の盾が現れた。
空から見た機神の基地は本当に広大だった。カルデラのような地形のへこんだ所を、ほぼ建物が埋め尽くしている。その東西南北に1本ずつ塔が建っていた。
「さっそく来たよ!しっかりつかまっててね!」
それと同時に無数の飛行タイプの機神と10機の機竜がリントヴルムに襲いかかってきた。
リントヴルムはブレスを吐いたり、翼に装備されたブレードで切り裂いたりと、確実に機神の数を減らしていく。
機竜はあっという間に半数以下になっていた。
地上では王の盾が渾身のシールドバッシュで塔を破壊していた。
根本からへし折られた塔は、爆発を起こして崩壊した。
「すごいねぇ……!」
リントヴルムはその様子を目の端で捉えつつ、機竜の最後の1体の翼をブレードで切り裂いた。機竜はバランスを崩して墜落、地上に激突し炎上した。
「ライト、細かいやつをお願い!」
「わかった!……サラマンダー、来てくれ!」
俺が首から下げている透き通った水色の牙に手を当てて願うと、炎の翼を持った赤い竜がリントヴルムの隣に現れた。
「空に浮いてる機神たちを残らず倒してくれ!」
〝いいだろう〟
ドンッ!と大気が震える感じがしたかと思うと、サラマンダーを中心に円が広がるように機神が爆発していく。
「ありがとう、サラマンダー!」
〝構わぬ〟
サラマンダーは空気に溶けるように消えていった。
これで邪魔をする奴らはいなくなった。
もうひと仕事だ。
「ヨルムンガンド、来てくれ!」
今度はごつごつしたアースクリスタルの鱗を持った竜が現れた。
「目の前に見える3本の塔を破壊してほしいんだ!」
〝任されよ〟
その言葉と同時に、3本の塔それぞれの上に巨大な岩石の塊が現れた。
そしてヨルムンガンドの咆哮と共に巨大な岩石の塊が3本の塔に落とされる。
あまりの質量に、3本の塔は押し潰され爆発した。
「ありがとう、ヨルムンガンド!」
〝礼にはおよばん〟
ヨルムンガンドもまた、空気に溶けるように消えていった。
「任務完了、だな」
眼下では、機神の基地への攻撃が始まっていた。
「お疲れ様、ライト君。……大丈夫?」
「ああ、思ったよりも大丈夫そうだ。……あ」
突然、何かに意識を引っ張られた。
「ライト君……?」
声の様なはっきりとした感じではない。意思みたいな何かが伝わってくる。
「……誰……だ?……そこに……?」
リナベルが俺の顔を覗き込んでいる。
視線が合わないのが分かったのか、俺の肩をつかんで揺さぶりはじめた。
「ライト君!しっかり!」
「……はっ!」
しばらく揺さぶられ、俺はようやくこちらへ意識を戻すことが出来た。
「どうしたの?何があったの?」
「……竜の宝玉があそこに……機神の基地の中にあるんだ……。今も……呼ばれてる……」
「なんですって……!?」
「近くまで呼んでくれるって……、すぐに!? ……リナベル、どうする!?」
「……仕方ないわね、行きましょ!」
こういう時のリナベルの決断は早い。
リナベルは俺の右手を取った。
「リントヴルム、君はすぐに離脱してくれ」
コーディも俺の左手を持った。
「わかった、気を付けてね」
リントヴルムが言い終わると同時に、俺たちの姿が消えた。




