第77話 精霊竜の剣を見せたら
昼食後、ヒルダに精霊竜の剣を見せるため、俺たちは洞窟の外に出ていた。照りつける日差しが眩しい。
リントヴルムは出かけているらしく、姿が見当たらなかった。
「ベヒモス、来てくれ」
俺の呼びかけに、ベヒモスが姿を現した。
突然姿を現した黒紫の竜に、ヒルダが驚いている。
ベヒモスは俺の前までやってくると、左手に鼻先をくっつけた。
「ベヒモス……?」
〝我がいながら、お前にこのような苦痛を与えることを許してしまうとは……情けないな〟
俺はベヒモスの鼻先を優しくなでた。
「大丈夫だよ。そこにいるヒルダが何とかしてくれるみたいだから」
「ああ、最善をつくすよ」
〝そうか、よろしく頼む〟
ヒルダは任せてくれとばかりにうなずいた。
「……で、そのヒルダが精霊竜の剣が見たいって言うんで、少しだけいいか?」
〝分かった〟
俺はうなずいて、刃となったベヒモスを想像する。
辺りが光に包まれ、俺の手に黒紫の剣が現れた。
ヒルダだけではなく、リナベルとコーディも息を呑んでいる。
「ライト君、本当に……」
俺はリナベルにうなずいてみせた。
「ただ、俺の精神力が保たないから、ベヒモスが制限をかけてくれてる。本来の力を出せたなら、もの凄い威力ってのは……なんとなく分かるけどな」
「その状態でもアクセラバードの腕を斬れたんだ、本来の力は推して知るべし……だね」
コーディも心なしか興奮しているようだ。
ヒルダは気になることがあったようで、思案するように口を開いた。
「……ノルドツァンナの王様は、この事を知ってるのかい?」
「ああ。……最初に生成したのが大勢の人がいる前だったから……。実際囲われそうになって、ちょっとやばかったんだ。ベヒモスが助けてくれたけど」
俺はその時のことを思い出して、若干げんなりした。
「そうだったのか……嫌なこと思い出させて悪かったね。だけど気を付けなよ、その力を利用したい輩はたくさんいるだろうからね」
「うん。ジェラルド団長も心配してくれて、認識阻害の術式が彫られたイヤーカフを俺にくれたよ」
「そうかい、対策してるならいいけどね。……ところでそれ、ちょっと持ってみてもいいかい?」
「えっと……いいのかな?……はい」
ヒルダが俺の手から精霊竜の剣を受け取ろうと握ったとたん、ぶっ倒れた。
コーディが気付いて、ヒルダを受け止めてくれた。
「だ、大丈夫か!?」
息をしているが、ヒルダは動かない。
「……ライト君、私も触ってみてもいいかしら?」
「え、あ、うん……いいけど」
リナベルはヒルダのようにがっつり持たずに、指先でそっと触れた。
「!!」
触ったとたん、リナベルはさっと指を引っ込めた。
「……ライト君、よくそれを平気な顔で持ってるわね。……一気に精神力を持っていかれたわよ」
「母さんが倒れた原因はそれか……」
「あ……な、なんかごめん……」
俺はベヒモスに戻ってもらった。
〝ほんの一瞬だったゆえ、大丈夫だろう。じき目を覚ます。……ライトよ、精霊竜の剣を不用意に他人に持たせてはならん〟
「う、うん、分かった……」
〝最悪、精神が崩壊して廃人になるからな〟
「ひえっ……!ご、ごめん、ヒルダ……」
「とりあえずベッドで休ませよう」
コーディはそのままヒルダを抱え、洞窟の中に入っていった。
俺とリナベル、そしてベヒモスもコーディに付いていった。




