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ある冒険者たちが世界を救うまで  作者: 如月つばさ


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75/120

第75話 過去の夢

 そして次の日。

「だ……大丈夫かい?」

 ふらふら起きてきた俺に、ヒルダが声をかけてきた。

「とりあえずは……」

 俺は椅子に座ると、そのままテーブルに突っ伏した。

「まさか……リナベルにやられたのかい!?」

「正解……」

 俺は顔を上げずに答えた。

「そりゃ災難だったね……。それにしたってひどいやつれ様だけど、何かあったのかい?」

「いや、リナベルにも相談しようと思ってたんだよ……ただコーディの方が先になったってだけで……」

 心配するヒルダに、昨日の夜の出来事を話した。


「そうだったのか……。まぁ、いつもの姿を見てたら忘れがちだけど、彼女ああ見えてお嬢様だからね。ちゃんと正しく扱ってやらなきゃ拗ねちまうから気を付けな」

「わかった……」

 眠くて、そう返事するのがやっとだった。



「あんた、死にたいの!?」

 俺は魔物の血に塗れたまま、後ろを振り返った。

 背の高い、赤い長髪の女が立っている。

「……そうかもな」

 そう自嘲ぎみに返事をしたら、女は俺の前に回り込んできて、自身の手が血塗れになるのも構わず、俺の頬をはたいた。

「なにす……」

「誰だろうと命を粗末にする奴は許さないよ!……そこで倒れてる魔物にも、あんたから喧嘩を売ったんじゃないだろうね!?」

 何でわかったんだ?


 俺の目の動きから女は何かを察したようで、今度は反対の頬をはたかれた。

 そして「炎(フレイム)」の魔法陣符(マジックカード)を使用して魔物の亡骸を焼き払う。

「ついて来な!あんたに言いたいことが山ほどあるけど、まずは身体を綺麗にしてからだ!」

 女は俺の手首を掴んで、どこかへ連れていこうとする。


 振りほどこうとしたが、無理だった。

「放せよ!」

「あんな戦い方をする奴を野放しにできるか!絶対逃さないよ」

 女は恐ろしい程の圧を放った。

 俺はそこでようやく女との実力差を認識し、逃げられないと悟ったのだった。


 近くには池があり、着くなり俺はそこに放り込まれた。

「ぷはっ……!なにしやがる……」

 その先の言葉が続かなかった。

 女が服を脱いで下着のような格好で池に飛び込んできたからだ。

「背中の方とか届かないだろ?洗ってやるよ」

「じっ……自分でやるっ……!」

「おーおー、かわいいねえ。でも言ったろ?逃がさないって」

 俺はそのまま女に身綺麗にされる羽目になったのだった。


 服が乾く頃には夕方になっていた。

「今から帰っても閉門時間に間に合わないね。仕方ない、今日はここいらで野宿するか」

 女はてきぱきと動いて、あっという間に準備が終わってしまった。


「さ、飯にしようか。……そこに座りな」

 その頃には俺も落ち着いていた。

 言われた通りに丸太の上に腰掛ける。

「ああ、そういえばまだ名乗ってなかったね。あたしはマリー・スプレンディア、冒険者をやってる。ランクはSだ。……あんたは?」

 Sランク……!あの圧も納得だ。

「ライト・アルトノート。……学生だよ、アーイディオンポースの……」

「学生……!なんで学生があんなこと……いや、学校には言わないでおいてあげるから、どうしてか教えてくれる?何があったんだ?」


 相手は圧倒的な強者だ。俺に吐かせるのなら、締め上げるなり色々できそうなのに、話を聞いてくれるという。

 俺もこの女……マリーに興味を持った。

 ……でも、どこから話せばいいんだろう……。



「……はっ」

 どうやらテーブルに突っ伏したまま眠ってしまったようだ。

 懐かしい……夢を見た。でも、どうして今頃……?

「ああ、起きたかい?これでも飲んで目を覚ましな」

 ヒルダがお茶を出してくれた。

 そうか、ヒルダの口調……少し師匠に似てるんだな、だからか……。

 俺はヒルダに礼を言って、カップに口をつけたのだった。

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