第65話 サブマスター
そして次の日。
日が昇ってすぐに朝食をとり、リンドヴルムにもご飯をあげて、俺たちは一路スールブリッサを目指した。
空の旅は順調で、機神の機竜に絡まれることもなく、昼過ぎにスールブリッサが見えてきた。
今度は飛空機械の発着場に着陸してもらった。
リントヴルムから降りると、ジェシカが出迎えてくれた。
「お帰りなさいませ。どうでしたか……?」
「うん、大丈夫。バッチリ起動できたわよ。……ここに呼んでいいのかしら?」
「えっ……と、団長に確認してきますので少々お待ちいただけますか?」
「了解よ」
ジェシカを待っている間、辺りを見ていると、リントヴルムの周りに人だかりが出来ていた。多分飛空機械の整備をする人たちだと思う。会話が出来ると分かって、リントヴルムにいろいろと質問している様だった。
「お待たせしました」
ジェシカの声に振り向くと、何とジェラルド団長がついて来ていた。
「すまない、この目で確かめたくてな。ふふっ、だいぶ驚かれるだろうが、各国の王たちにはすでに話は通してあるから、ここに呼んでもらって構わんよ」
「分かったわ、じゃ呼ぶわね」
そう言って、リナベルは地面に手をついた。
「召喚魔法陣起動、いでよ、王の盾」
リナベルが手をついた先に巨大な魔法陣が浮かびあがり、そこから王の盾が出現した。
「マスター、オ呼ビデショウカ」
王の盾は右手を胸に当て、リナベルに礼をするような動作をした。
そこにいる俺たち以外の全員が、その巨大さに目を奪われ、口をあんぐりと開けていた。
「こ……これがギガントゴーレム……」
さすがのジェラルド団長も、それだけ言うのが精一杯のようだ。
「ええ。……王の盾はその名の通り、強力な魔法障壁を操るゴーレムよ。纏っている鎧は、ドワーフの名工ガルディアヌス作の魔法銀とダマスクス鋼の合金製だから、ちょっとやそっとの攻撃は通らないわ。本体も魔鉄を使用しているから頑丈よ。あまり攻撃は得意じゃないけど、いざとなれば魔法障壁を使用したシールドバッシュを行うわね。あとは……地中移動が出来るっていうところかしら」
「……そ、そうか……」
あ、これあんまり頭に入ってないやつだな。
「で、ジェラルド団長に相談……というか、お願いがあるんだけど、王の盾のサブマスターになってくれないかしら?」
「俺が……サブマスターだと?」
「ええ。……ほら、私たち任務でいないことが多いじゃない。その間管理してもらえると助かるというか。今のところ王の盾はガーディアンフォース所属ってことになってるんでしょ?」
「まぁ……預かるという形だが」
「じゃ、決まりね」
相変わらずリナベルは強引だなぁ……。
「それに、団長なら道を踏み外さないと思うから」
「……参ったな。……俺は小心者なだけなんだが」
ジェラルド団長は困ったような顔で笑っていた。
謙遜してるけど、小心者でSランクになれるかっての。
「それじゃ団長、そのままそこに立っててね」
リナベルはそう言うと、再び地面に手をついて何か呪文を唱えた。
するとジェラルド団長の足元に魔法陣が現れた。
「権限付与、サブマスター、ジェラルド・オーデュバル」
リナベルが宣言すると、ジェラルド団長の足元の魔法陣が一瞬光って消えていった。
「うん、大丈夫そうね。団長、こちらへどうぞ」
リナベルはジェラルド団長を王の盾の前へ連れていった。
「何か声をかけてみて?」
「わかった。……ジェラルド・オーデュバルだ、よろしく頼む」
「サブマスター、コチラコソ、ヨロシクオ願イシマス」
王の盾が軽く会釈をしたように見えた。
「ちゃんと登録できたみたいね」
ジェラルド団長はしばらく王の盾を見つめていたが、やがてリナベルに向き直った。
「……ギガントゴーレムを起動できたことで確信した。君は吸血鬼の名家、ラキュール家の令嬢だったのだな、リナベル・スカーレット。いや、リナベル・ド・ラキュール」
「ふふっ。バレちゃったわね」
「……さすがにもう誤魔化せないだろう。だが……我々に協力してくれたこと、感謝申し上げる」
「そんなお堅いのは無しよ。私は私のやりたいようにやってるだけだから」
そう言って、リナベルはにっこり笑った。
ディアが言ってたことって本当だったんだ。
その時、一人の通信士が息を切らせて俺たちの所へやってきた。
「お取り込み中失礼しますっ……!ジェラルド団長、スールブリッサの東に突如機神の大群が現れました!急ぎ指令室までお戻りください!」
「何だと!? 分かった、すぐに行こう」
「団長、私たちはどうすれば?」
「手筈通りなら、スールブリッサの騎士団とノルドツァンナの軍が対処するだろう。君たちはひとまずこちらで待機していてくれ。要請があればナビゲーションボードで連絡する」
「了解よ」
ジェラルド団長はうなずくと、ジェシカと通信士を引き連れて戻っていった。




