第121話 四つの町の異変
翌朝、俺たちはもと来た道を戻り、リントヴルムに乗ってインディアまで帰ってきた。
「ただいま、じいちゃん」
家のドアを開け、リビングまで行くと、寛いでいるじいちゃんがいた。
「おお、戻ったかライト。……どうじゃった?」
「うん、無事に契約できたよ。それから、バハムートにも会えて契約できたんだけど……」
俺はその時のことをじいちゃんに話した。
「なんと……バハムート様がそこまで消耗されておったとは……。しかし良くやった、ライト。少しでもバハムート様のお力になれたのなら、こんなに嬉しいことはない」
じいちゃんは俺の頭をわしゃわしゃと撫でた。
驚いた竜の宝玉が飛んでいった。
「おお、すまぬ……」
「ったく、少しは加減してくれっての」
俺は乱れた髪を手櫛で整えた。
「……だけど、母さんが用いた術で、原初の精霊竜と繋がってたなんて……」
「そこが精霊竜の因子の出所だったんじゃな……。まったくあやつめ、これ以上ない強力な術を己の息子にかけるとは……」
まぁ吸血鬼の真祖の前では無意味だったけどな。
「だが……そのお陰でバハムート様を助けることができたとは……何たる運命の悪戯か」
「そうだよな……」
母さんは多分、この枷が解かれるとは思ってなかっただろうから。
「まぁ……お前も色々あったじゃろうから、時間が許す限りゆっくりしていけ。もちろん、そちらの御二方もな」
俺はうなずいた。
「ご厚情に感謝します。司祭様」
「ありがとうございます」
リナベルとコーディもそれぞれじいちゃんにお礼を言った。
「さて、そろそろ時間じゃな。儂は祭壇で祈りを捧げておるから、後は適当に寛いでくれ」
そう言うと、じいちゃんはリビングから出ていった。
それから少しして、リナベルが何かに気付いた顔をした。
「……そういえば、コーディが復帰したことを報告してなかったわね」
そう言うと、リナベルはナビゲーションボードを取り出し、起動した。
「こちら悠久の翼、ジェラルド団長、応答願います」
リナベルが呼びかけると、応じたのは団長ではなくジェシカだった。
〝申し訳ありません、ジェラルド団長は会議中のため、私が代わりにご用件をお伺いします〟
「そうなのね、分かったわ」
リナベルはコーディが復帰したこと、新たな精霊竜の力を借りられたことを報告した。
〝そうですか!よかった、団長も喜ぶと思います。ここ数日、気の滅入る報告ばかりでしたから……〟
「気の滅入る……?」
〝あ、あー……。これからお話しすることは、どうか内密に願います〟
ジェシカは一瞬しまったという風な顔をしたが、話してくれるらしい。
〝実は……レーウェコルリス、モンターナ、アルウェウス、トランキル、この四つの町の住人が……残らず変死している事件が起こりまして……〟
「残らず……変死?」
知らずリナベルの口調が少し咎めるような強いものになっていた。
……トランキルって、確か俺たちがクラウストルムに行く前に立ち寄った、機神に襲われてた町だよな……。住人全員がやられたってことか……?
俺は内心穏やかじゃいられなかった。
〝……はい。最初に事が起こったとされるレーウェコルリスの町では、魔物が有毒ガスを撒き散らしたと疑われていましたが、調査に入った冒険者パーティの話では、どうも違うようだと。生きたまま生命力を奪われているようだと言うのです〟
「あー……その、永遠を生きる者の可能性は……?」
不死者が使役する下級のゾンビなんかは、生気を吸い取るからな……。
〝その可能性も捨てきれませんでしたが、そんなに大きな町ではないとはいえ、住民全員を対象とするにはそれなりの動きがあるはずです。そんな中、モンターナの町で機神の痕跡が発見されまして……恐らく何らかの攻撃を受けたのではないかという意見に落ち着きつつあります……〟




