第122話 飛翔魔法の使い方
なんか嫌な感じだ。
ジェシカの話を聞いてそう思ったのは俺だけではないようで、リナベルとコーディも揃って難しい顔をしていた。
「……そうなのね、話してくれてありがとう。……私たちはひとまずアーイディオンポースの女王様に報告に行こうと思ってるんだけど、その後の指示は何か聞いてる?」
〝はい、一度スールブリッサの仮本部に立ち寄ってほしいとのことです〟
「分かったわ。……それじゃ、また後日会いましょ」
〝はい。ではまた後日に〟
そうしてリナベルは通信を終了した。
「……リナベル、アーイディオンポースに行く前にトランキルの町に寄っていかないか?」
「奇遇ね、私も同じことを考えていたわ……」
リナベルは拳を握り締めていた。
「そうと決まれば、さっそく明日出発しようと思うんだけど、ライト君は大丈夫?疲れてない?」
「ああ、大丈夫だ」
俺はうなずいた。
しばらくして、じいちゃんが戻ってきた。
俺が明日出発することを伝えると、じいちゃんは驚いていた。
「急ぎの用でも出来たか」
「うん、そんなところ」
それから俺たちは思い思いに過ごし、夕食を食べた後は早々に床についた。
そして次の日の朝。
「それじゃ、行ってくるよ。また当分は帰って来れないかもだけど、ちゃんと戻ってくるから」
「うむ、待っておるぞ。気を付けて行ってこい」
どこからか竜の宝玉が戻ってきて、俺の頭の上に乗った。
俺たちはじいちゃんと村の見張り番に見送られて、インディアを後にした。
「あ、来た来た〜。ライト、ご飯ちょーだい!」
リントヴルムと合流して早々、魔力をねだられた。
「お前、俺ばっかりじゃなくて、リナベルにも頼んだらいいじゃないか」
「えっ?う〜ん、リナベルは吸血鬼でしょ?吸血鬼って魔力に癖があるんだよね。オイラは癖のない人間の魔力の方が断然好みだな〜。という訳でライト、ご飯ちょーだい!」
「はいはい」
ここにも魔力グルメがいたよ。
そういえば、リナベルは大丈夫なんだろうか?
俺が精霊竜になった話をした時、我慢できずに元の姿に戻ってたよな。
俺の側にいると集中するのが難しいんじゃないかと思ってたんだけど、ちゃんと丸い耳だし瞳孔も縦長じゃないし、今はそんなことはないみたいだな。
リントヴルムに魔力をあげながら、それとなくリナベルに聞いてみた。
「え?……そうね、一度味見をしたら大丈夫よ。味が想像できちゃうから。……そういう話をするってことは、私にも魔力を分けてくれるのかしら?」
「何でそうなるんだよ」
その時、ピンポンという音が鳴った。
「あら、残念ね。……ところでライト君、あの時真祖様から借りた本を読んでたみたいだけど、はかどってる?大体覚えられたかしら?」
どうやらリナベルも、あの時のことを思い出していたらしい。
「うう〜ん、魔法陣はさっぱりだけど、名前だけならなんとか……」
俺はコードを片付けながら答えた。
「そうなのね……」
リナベルは微妙な表情だ。
「それじゃ苦手な魔法とかはある?」
「いや、特に……あ、一つあった。俺、飛翔が苦手みたいで、なんというか、感覚が掴みきれてないというか……」
俺の返事を聞いたリナベルがニヤッと笑った。
「うふふ、丁度いいわ。……ライト君、トランキルに行くまで、リントヴルムの後ろを飛翔で付いて来てちょうだい。今のライト君なら魔力切れを起こすことなく、余裕で辿り着けると思うわ」
……なんて提案をしやがるんだ、リナベルめ。
「リナベル、ライトは感覚が掴みきれていないそうだから、一度一緒に飛んでみたらどうかな?」
それに比べてコーディは優しいよな。
「もちろんいいけど、後でちゃんと対価をもらうからね」
そう言うと、リナベルは問答無用で俺の手を掴んで飛翔を使用した。
「ちょ、いきなりなんて聞いてなあぁぁぁ……!!」
前言撤回!コーディ、お前もかぁぁぁ……!
そして空を飛ぶ感覚をみっちりと教えられたのだった。




