第118話 新たな精霊竜との契約
〝……してライトよ、何用でここへ参った?〟
フェンリルが俺に問いかけた。
「お願いがあるんだ。機神を倒すために、あなたたちの力を貸してほしい……、俺と契約してくれないか?」
〝なるほど……〟
フェンリルは少しの間、俺を観察しているようだった。
〝サラマンダー、レヴィアタン、ティアマト、ヨルムンガンド……それにベヒモスか。ふむ、中々精進しているではないか。……我は良いと思うが、皆はどうか?〟
フェンリルは他の精霊竜に尋ねた。
〝構わぬ〟
〝良い〟
〝異論はない〟
フレースヴェルグ、テュポーン、ケツァールコアトルがそれぞれ答えた。
〝皆の意見が一致した。我々はそなたに力を貸そう、ライトよ〟
フェンリルがそう言うと、球形の光を発生させた。
他の三体も同じように球形の光を発生させている。
やがて四つの光が俺の目の前までふわふわと下りてくると、一つに合わさって俺の身体に吸い込まれていった。
「……ありがとう」
また試されるんじゃないかと思ってたから、ちょっと拍子抜けしたけど、温かいものに満たされて、思いのほか心地よかった。
〝そなたが一番身軽に動けるゆえ、機神の件は宜しく頼む。何かあれば我等を頼るがよい〟
「うん、分かった」
〝……時間が許せば、バハムートにも挨拶していくとよい〟
フレースヴェルグが口を開いた。
「えっ!? ……会えるのか……?」
〝この祭祀場の奥にある建物から、バハムートが坐す地へ飛べる。姿を現してくれるかは分からんがな〟
「そっか……うん、行ってみるよ」
俺たちは改めて礼を言い、建物を後にした。
機神が使う精神感応兵器は野や山林を焼き払い、川や湖なんかを干上がらせたりと、精霊竜が司る自然を破壊することで、深刻なダメージを与えた。その結果、精霊竜の力は弱まり、土地が痩せて木や草が生えなくなったり、農作物が採れなくなったりと、人の生活にも多大な影響が出ることになった。
その頃からダンジョンなるものが現れ始め、辛うじて人が生活できる物資を調達できている。
けど、それもいつまで保つか分からない。
早く機神との戦いを終わらせて、精霊竜の力を回復しなければ、多分、取り返しのつかないことになる。
バハムートは精霊竜王と称される通り、精霊竜の中でも抜きん出て力があるとされている。司るものも広範囲で、それゆえ一番ダメージを受けているとも言われている。
もはや姿を見た者はおらず、伝説とまで言われ始めているんだけど……。
俺たちは真っ直ぐな道を通り、フレースヴェルグに言われた建物に入っていった。
リントヴルムに乗っている時に見えた、離れた所にある中くらいの建物だ。
だだっ広い部屋の中には大きな竜の像と、その像の前に転移用の魔法陣があった。
「……これ、バハムートなのかな?」
俺は目の前の大きな竜の像を見上げた。
彩色こそされていないが、天に向かって咆哮し翼を広げている竜は、今にも動き出しそうでカッコいい。
「さすがに私も見たことないけど、その可能性は高いんじゃないかしら」
リナベルも竜の像を見上げていたが、少しして俺に向き直った。
「それじゃ、行きましょうか」
俺とコーディはうなずいて、三人で魔法陣の上に乗った。
淡い光が俺たちを包みこみ、ややあって浮遊感が訪れた。




