第117話 高原の神殿にて
リントヴルムに乗ってしばらく飛ぶと、その高原が見えてきた。
距離的にはインディアからそんなに遠くはないけど、周りを標高の高い険しい山々にぐるっと囲まれていて……これ、ほんとに昔の人は歩いて行ってたのか!?
巡礼というより、修練の旅って言った方がしっくりくる気がする。
上から見ると、高原の中ほどに大きな建物が二つ並んでいて、離れた所に中くらいの建物が一つ、大きな建物の周りに小さな建物がたくさんある。
この場所も精霊竜の力の影響があるのか、荒野ではなく、まばらに木や草が生えていた。
「着いたよ〜」
広場のような場所にリントヴルムは着陸した。
「気持ちのいい所ね」
リントヴルムから下りて、リナベルは深呼吸している。
「空気が美味しいわ」
「そうだね。……大気中の塵なんかがここは極端に少ないみたいだ」
へえ……、コーディのセンサーってやつはそんなのも分かるんだな。
俺は改めてコーディを見た。
どうやら大剣を新調したみたいだ。
前のより一回り大きくて頑丈そうに見える。
それから、銃が二挺になっていた。
あれ、同時に使ったりするのかな?一挺でも凄い威力だったけど。
「……で、どっちから行こうかしら?」
リナベルが振り返って俺を見た。
広場のような場所から、中くらいの建物に向かって一直線に道が伸びている。
その途中、道を挟んで左右に大きな建物と、それを囲む小さな建物があった。小さな建物は家屋のようだ。
建物群は全て石で出来ており、もう人は住んでいないけれど、割と綺麗に形が残っている。
大きな建物は、やはりというか神殿だった。
「うん、じゃあ……こっちから」
俺は右側の神殿に歩いていった。
神殿内に足を踏み入れた時。
俺は竜の神殿で感じたような、背中から力が噴き出す感覚を覚えた。
「あっ……!」
リナベルの驚いた声が聞こえた。
今度は俺も見ることが出来た。
ほんとに……黄金色の翼だ。
いったいどうして……。
〝これは珍しい〟
いきなり声が聞こえてきた。
〝久方振りの新しき同胞か。いいだろう、友人共々招いてやろう〟
〝ケツァールコアトルとテュポーンにも教えてやらねば〟
そして突然、視界が暗転した。
気が付くと、原素神殿の時と同じく、夜空に浮いてるような不思議な空間にいた。
いつの間にか、俺の背中の翼は消えていた。
〝ようこそ、新しき同胞よ。我が名はフェンリル〟
夜空のような空間に、ベヒモスと同じような獣のように見える竜が浮かんでいた。
ただ、青銀の毛色をしていて、頭部は狼のように細長い。
〝我はフレースヴェルグだ〟
フェンリルの隣に黄色系統のフェニックスに似た鳥のような竜が現れた。
〝我はテュポーン〟
背景の夜空に溶け込みそうな、真っ黒な竜がフレースヴェルグの隣に現れた。
金色の双眸が星のように見える。
〝我はケツァールコアトル。我とテュポーンは、普段は隣の祭祀場で呼ばれることが多い。今回はフェンリルの希望でこちらにやってきたのだが……なんとまぁ、かわいい同胞だな〟
テュポーンの隣に現れた、翼を持つ白い羽毛に覆われた蛇のような竜は、俺に顔を近付け目を細めた。
かわいいって……。まあ、そりゃあんたらから比べたら、ちっぽけなのはその通りだけども。
相手が名乗ってくれたから、俺たちも自己紹介しないとな。
「俺はライト」
「リナベルよ」
「コーディです」
四体の精霊竜は、順番に俺たちを眺めていた。




